119:勃発、全面戦争!
途中でもご感想ぜひください~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
『二十四ターン目、終了。ではみなさま、二十五ターン目に入ってください』
響き渡る進行役・ハロルドの声。それと同時に、仮想世界の大平原に咆哮が響いた。
「進撃するでござるッ! 『聖女抹殺連合』ッ、このカザネに続けぇーーーーッッッ!」
『うおおおおおおおおォオオーーーーーーッ!』
軍勢の叫びに大地が揺れる。地ならしのごとき跫響かせ、鋼の群れが突き進む。
彼らこそは『聖女抹殺連合』。レイテ打倒に執念燃やす副会長・カザネを筆頭に、生徒会長・セラフィム、生徒会メンバー候補・ハイネの国から全兵力を投入されて完成した、数十万の大軍勢である。
さらに広報担当・コルベールが装備面をプロデュース。全ての兵が耐衝撃性鎧と大業物の刀剣類を装備した、最凶の侵略軍となっていた。
「レイテ・ハンガリアめぇぇぇえ……ッ!」
完全武装の下、最前列を駆けながらカザネは唸る。大平原の先――眩しいほどに白く高い『ハンガリア王国』の外壁を睨みつける。聖女の国を視線で貫く。
「女は後ろに控えていればいいのだ。それを大国まで造り上げて、このカザネを急かすとは……ッ!」
未だゲーム終了までは五ターンある。だがセラフィムたちは、〝これ以上に時間をかけても『ハンガリア王国』が膨れ上がるだけだ〟と判断。よって四国結託からは、迅速に結集と混成訓練にターンを割り当て、このタイミングに強襲をかけたのだった。
カザネ・ライキリからしたら甚だ許せぬ事態である。これでは女のレイテにより、選択を迫れたようなものなのだから。
人生の権利は、全て男が握るべきなのだ。
「これ以上、貴様の跋扈は承服せんぞッ! 全軍進めっ、そして殺せェッ!」
平原に轟く虐殺命令。
槍が掲げられ、刀が抜かれ、軍馬が嘶く。地を蹴る蹄と具足の音が、怒号のように響きわたった。
◆ ◇ ◆
「きたわね」
外壁の上にて。わたしは『ハンガリア王国』に攻め込んでくる大軍勢を見ていた。
「はは。なんだか懐かしい光景ねぇ……」
視界の既視感に苦笑してしまう。ついこの前もこんなことあった気がするわ。わたし、大群に迫れる運命でもあるのかしら?
「で、筆頭はやっぱりカザネか。綺麗な顔してすごい形相で向かってきてるし。予想と観察の通り、ね」
わたしは極悪政治をする傍ら、生徒会メンバーの動きを『密偵』もしていた。
誰が『地獄狼』残党か見極めるために。政治活動から悪性が垣間見えたら御の字だと思って。
結果――参加者全員が、可能性ありに感じられた。
「カザネはまるで容赦がない。性根もかなり歪んでいるし、凶暴な『地獄狼』でも上手くやっていけそうな感じね」
徹底的な軍拡主義者。上がる不満も、惨殺処刑によって抑え込んでいるようだ。彼はわかりやすく疑わしいわ。
で、次に。
「笑顔ショタのコルベール。アレも腹ン中がどどめ色ねぇ」
魔眼を強めて遠方を見る。視力が上がったわたしの視界に、平原の向こうで『かんばれーカザネっちー』と口パクしているコルベールが映った。
「明るく見えて、徹底的な能力主義者ね。楽しそうに『開発』に注力する傍ら、NPCの仕事の出来を冷徹にランク付けして、容赦なく足切りしていた」
まさに悪の科学者か。口の上手さと性根の冷たさは、十分にヤバい組織内でも渡り切れそうな感じだわ。
「そして生徒会長、セラフィム・フォン・ルクレール。彼は……色々と完璧すぎる」
前者二人とは違う。セラフィムの政治は、まさに最良だった。
貴族NPCとの関係強化とバランス調整を見事にこなし、自分の発言が通りやすくなったタイミングで如何にも民衆が喜びそうな政策を打ち出していく。ゆえに国家の士気は中心から末端に至るまで高い。
その上で、彼はたまにヤンチャもしていた。
行動権を消費してまで、兵を連れてピクニックに行ったり市井から猫ちゃんを集めて一緒にお食事会を開いたり、一ターン通して遊ぶこともちょいちょいあった。わたしも食事会に呼べ。
「基本は最良。でも隙もある。ゆえに完璧ってやつよねぇ……」
完全な人間を人は畏怖する。だからこそ『可愛げ』も必要になる。
ウチのヴァイスくんもクソつよだけど、天然でぬぼっとした感じが人を惹き付ける結果になっていたしね。〝支えたくなる〟という印象は為政者にとって武器となるらしい。
その点、セラフィムはそこも完備だ。……そう、わかりやすいほど完備されていた。
「NPCたちはもちろん、クセの強い生徒会メンバーも生徒会長には親しげだった。だけどそんな反応になることも含めて、彼が計算しているとしたら……」
それはもう『悪辣』としか表現できないだろう。
全部が手の内だとすれば、セラフィム・フォン・ルクレールは政界の化け物だ。
視界の先にて、コルベールの横で腕を組んでいる美丈夫を、わたしは睨んだ。
「『地獄狼』の者が言っていた、〝世界を壊す種〟。その名の格にふさわしい存在かもね」
以上が、参加者三名に対するわたしの見解だった。
本当は法務科のセルケトってお料理リーゼントもいるんだけど、あいつはハイネって子に王権任せちゃったみたいだしね。
……よく考えたら、それもそれで怪しいかも。自分の性質をわたしから隠すためにそうしたかもだし。
「――うおおおおッ! レイテ・ハンガリアァーッ! 殺すでござる~~~!」
と、そこで。視線を戻せば、カザネ・ライキリが外壁近くまで迫っていた。もう罵声も届く距離だ。カザネは上に立つわたしに気付いたらしく、「おのれ聖女めっ、わからせてやるッ!」と喚いてきた。うざ~。
「だから聖女じゃないっつの姫男子が。――手下どもぉ、準備はいいわね?」
『うおおおおおおおおおおおッ! レイテ様ぁーーーーーーッッッ!』
外壁の内側に呼びかける。すると、アシュレイもどきのきしょい臣民数十万が声を張り上げた。
なお、わたしの顔が描かれた旗を掲げている模様……。こいつらやっぱりわたしに嫌がらせしたいんでしょ!?
「ちっ、まぁいいわ。アンタたちぃ、この国を滅ぼそうと迫る足音は聞こえるでしょう!? 感じるでしょうッ!? もしやこのまま、アンタら全員死ぬ気かしらぁ~!?」
『否ッ! 否ッッ! 否ァッッッ!』
「そうよねぇ!? タダでやられる気はないわよねェッ!?」
だったら!
「総軍ッ、出撃よ! わたしたちに逆らうやつらをブッ殺してやりなさぁ~~~~~いッッッ!」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーッッッ!』
開かれる巨大な外壁門。そこからまさに蜘蛛の子を散らすがごとく、白い鎧をまとった下僕たちが飛び出していった。
「さぁて、いよいよ全面戦争ね。これで勝った側が勝者になるわけだけど――あら?」
と、そこで。わたしの視界に入るモノがあった。
場所は平原のはるか向こう。こちらを睨むカザネたちでは決して見えない、反対側に……あはっ。
「『彼』、すっかりダメかと思っていたけど」
――これは面白くなりそうじゃない?




