112:探せッ、『地獄狼』残党!
途中でもご感想ぜひください~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
「くっ……これは陰謀だわ! なんでわたしの聖女扱いが強まってるのよ!?」
「僕だってさらに悪者扱いされたんですけど!? 悪目立ちせず生きたいのにぃー!」
というわけで放課後。わたしとジャックくんは、学園内の裏庭にて作戦会議をしていた。それと、
「む~~~、どうすれば悪女と思われるのかしら。キッズたちの純粋な見方は想像以上にわたしを苦しめてくれるわね。うーん次の極悪作戦は……あ、ここ読んでみてジャックくん。今日政務科の授業で学んだところだけど、民主制、独裁制、君主制はいわばジャンケンのような関係になっているのよ。面白いわよね。それぞれにメリット・デメリットがあって――」
「ってレイテ様、なにしてんです?」
「え、勉強」
「真面目ですかッッッ!?」
教科書読んでたら弟子に喚かれた。なによ~。
「いや、レイテ様は悪者扱いを求めてるんですよね……?」
「そーだけど?」
「え、えと、じゃあ授業を真面目に聞かなかったり騒いだりすればいいのでは?」
はぁ~~~? 何言ってのよコイツ。
「わかってないわねぇ~。それは極悪行為じゃなくてただのマナー違反でしょ。見苦しい真似はしないわよ」
「どういう基準なんだ……」
やれやれ。ジャックくんってばまだまだひよっこねぇ。すごく悪の才能を感じるのに。
「レイテお姉ちゃんが教えてあげるわ」
「いつから姉に!?」
うるさいわね。そうやってすぐ騒ぐところがアカンのよ。
「アンタは悪目立ちしたくないそうだけど、だったら『地味な生き方』とやらを好きにやったらいいじゃない。ただしっ」
「!」
指を突き出して上目に言う。
「どんな生き方を選ぶとしても、胸を張って楽しく、ね?」
「む……胸を張って、楽しく?」
「そ」
生き方なんて勝手にすればいいわ。個人の自由だもの。でもソコだけは絶対よ。
「人生は極論、自分を楽しませるためにあるんだから。だったらどんな方向に舵を切るにしろ、自身に恥や負い目を感じないような、美学を持たないとね~」
「美学……。それが悪女扱いは目指しても、授業中は騒がないってことですか?」
「正解よ」
癖のある髪を撫でてやる。うむ、ヴァイスくんとは毛質が違うわね~。
「うわわっ……!?」
「わたしは『美しい悪』を目指してんのよ。アンタもそれに続きなさ~い!」
「って僕は悪党なんてイヤですよぉ!?」
と、弟子と話していたときだ。不意に「ぐぬぬぬぬぬぬぬっ、ぽっと出のガキがレイテお嬢様に構われて……ッ!」と、極大の怨嗟を感じるキモい声が聞こえてきた。
はぁ~~まったく。
「何の用よ、アシュレイ」
「は!」
声を掛けるや、燕尾服のメガネ野郎がわたしたちの目の前に現れた。ジャックくんが「うわぁッ!?」と悲鳴を上げる。
「き、昨日の不審者ッ!」
「不審者ではない。私の名はアシュレイ。レイテお嬢様の執事であるッ!!!」
眼鏡をきらーんっと光らせて名乗るアシュレイ。声でかいっつの。
「ていうかレイテ様の執事って……。ああ、そういえば昨日いきなり現れて唾かけてきたのも、レイテ様がそんなこと言ってからだったっけ」
「そ。恥ずかしながらウチの筆頭執事よコイツは」
「えぇ……じゃあ通報したのって悪かったです……!?」
あ、そこは気にしなくていいわ。命令したのはわたしだし。ていうか、
「こいつ、一回くらい逮捕されたほうがいいのよ。休日の趣味はわたしの抜け毛拾いだし」
「ガチで犯罪者じゃないですかこの人ッ!? なんで執事やらせてんです!?」
「そう言われると、わたしもわかんない……」
まぁ出会った頃はコイツくらいしか優秀な手駒なかったから仕方ないわ。でも今はそんなことないしねぇ。
いい加減にキモさが有能さを上回ってきた頃合いだし。そろそろ捨てようかな。
「忠告ありがとうジャックくん。アシュレイを捨てる決心がついたわ」
「おのれ小僧ォオオオッ!? 私とお嬢様の仲を引き裂くとはなんという極悪かァッ!?」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!?」
キレたアシュレイがジャックくんの襟首をつかもうと手を伸ばす。だがすいすいすいと、ジャックくんは怯えながらも間一髪で避けていくのだった。やるわね。
「ちっ、流石は先輩の子ですねぇ……」
「え、先輩って……?」
「――アンタたち、いつまでも遊んでんじゃないわよ」
手を叩いて手下二人を振り返らせる。
さて、『聖女扱い払拭作戦』はまた考えるとして、もう一つのほうの仕事もこなさないとね。
「で、アシュレイ。有能なアンタのことだからただ逃げ回っていたわけじゃないでしょ? ある程度の情報収集はできてるんでしょうね?」
「は。しかし、この少年の前で話してもよろしいので……?」
ジャックくんは「情報収集……?」と首を捻っている。
「構わないわ。ジャックくん、実はわたしたち王国からのスパイみたいなものなの」
「ス、スパイッ!?」
「そう。実はこの学園に『地獄狼』の残党がいるって噂があるんだけど、学園が調査を許してくれなくてね~。それでわたしが来たってワケ」
「えええ……!?」
恐怖と驚きに顔を引きつらせるジャックくん。それから少し翳った表情で、「僕に話してもいいんです……?」と問いかけてきた。
「ああ、アンタが『切り裂きブルーノ』の息子だから?」
「は、はい。自分で言うのもなんですが、一番怪しいのは僕なんじゃないかと……」
「まぁそうね。国王陛下も疑ってたし、わたしも昨日は話さなかったわ」
けど。
「一日付き合ってわかったわよ。アンタは悪党の才能はあるけど、まだパンピーのお坊ちゃんだってね」
だから信用することにした。そう言うと、ジャックくんは目を見開いたのち、何とも言えない苦笑を浮かべた。
「っ、はは……。まさか、あの聖女様に信頼していただけるなんて……。でも、悪党の才があるっていうのはなぁ~……!」
「聖女様言うなっつの。ともかく、事情を話したからにはアンタも調査に協力してもらうわよ?」
「は、はい……!」
怯えながらも、ジャックくんはしっかりと頷いてくれた。
よぉし。内部協力者を一人ゲットね。助かるわ。手下のアシュレイはいきなり追われることになっちゃし、メイドのエリィのほうは調査とか地味な仕事は苦手って自己申告してきたし。だから皿とか割りまくるのよ。
「じゃあアシュレイ」
「はっ」
「教員、用務員、生徒含め、悪そうなヤツを教えて頂戴」
そう命じると、執事は燕尾服の懐からどっさりと用紙を取り出した。そこにはアリスフィア学園に通う者たちのデータがビッシリと。
覗き込んだジャックくんが、「い、一日でこんなに!?」と驚きの声をあげる。
「無駄に大きな貴族の学園ということで、天井や床下に多くのスペースがありましたからね。一日中這いまわって調査しました。お嬢様ほめてくださいッ!」
「よくやったわ。でも害虫みたいでキモいわね」
「はぅうッ! 罵りいただきありがたき幸せっ!♡」
悶絶するアシュレイにジャックくんが「うわっきもっ……あ、すみませんつい」と反応する。
いいのよ。わたしもコイツは心底やばいと思ってるから。
「ひとまず、多くの者たちのプライベートな過ごし方を調べました。すると学園では禁制品の酒を楽しんでいる者が十七名、タバコを吸っている者が二十名、賭け事をしている者が三十二名わかりました。あとは実家が大貴族家であることを笠に着て、同国や属国の格下の家の者に暴力を働いている者も。こちら、資料をお渡しします」
「ふぅん。悪ではあるけど、どいつもこいつも醜くてショボいわね」
用紙をぺらぺらと捲って判断する。うん、断言するわ。こいつらは白ね。
「『地獄狼』の残党が、校則違反なんてリスクがあるだけの行為をするわけがない。もしも生徒なら……貴族の血筋を持つ者なら、狡猾に牙を研いでいるはずよ」
ザクス・ロアは悪事に全てを利用する男だった。それこそ死体の山すらもね。
だからこそ、もしも貴族に属する子供の手下がいたら、〝今は力を蓄えておけ〟と言うはずよ。
将来、貴族の立場と権力を使って様々な悪事を働かせるためにね。
「ちなみにお嬢様。一年生クラスの担任となったラインハートという者ですが……」
「ああ、一発でわかったわよ。てか向こうから『息子は元気にしてますかねぇ?』って話しかけられたし。義理の関係なんだろうけど、愛されてんじゃないのドクター」
身内話をするわたしたちに、ジャックくんは「?」という表情を浮かべた。あぁごめんごめん。
「話を戻しましょうか。じゃあアシュレイ、特に怪しいヤツはいなかったわけね?」
「は。軽く調べ上げた限りでは。以後、さらなる調査を進めようと思います。シャワールーム覗いたり」
「……わたしを覗いたら、殺すからね?」
はぁまったく。優秀だけど本当にキショい執事だこと。
「というわけでジャックくんも周囲を警戒して頂戴。どこに『地獄狼』の残党が隠れてるかわからないからねぇ~~」
「は、はいっ!」
あはは。まぁそこまで緊張しなくていいわよ。向こうも迂闊には動かないでしょうし。
――『地獄狼』を滅ぼしたわたしに対しては、どうかわからないけどね?




