109:潜入調査だレイテちゃん!
途中でもご感想ぜひください~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!
「――レイテ嬢には、教えておくべきことがある」
それは『相談役になるには学園に通う必要がある』と告げられた後のこと。
ヴァイスくんは――国王陛下は、続けてこう言った。
「最悪の傭兵結社『地獄狼』。やつらは全滅したわけではない」
……なんですって?
「『虚無なるファビオライト』もそうだが、他にも生きているメンバーがいた」
国王は語る。国政を立て直す傍ら、軍務大臣ゲッペルスとソニアくんら王国騎士を使って内密に、〝『地獄狼』残党追跡〟を行っていたと。
「元々ヤツらは一万を超える軍勢。ほとんどは師匠とザクスの決戦に巻き込まれて城ごと消し飛んだそうだが、中には遠方にいる者も存在した。そこでそいつらを調べ上げて追い詰め……」
「残党狩りをしてた、ってことでしょ? なんでわたしに秘密にしていたわけ?」
「……関わるメンバーは最小限にして、ヤツらに感知されないためにだ。しかしそれ以上に」
彼は、真剣な眼差しでわたしを見てきた。
「レイテ。こんな汚くて危険な仕事に、キミを近づけたくなかった」
……へえ。
「今度はこちらが追い詰める側だ。騎士曰く、泣きながら斬られていく敵もいたという」
「そう」
「そして、窮鼠猫を噛むともいう。追い詰められた狂犬は何をするかわからない」
「そう」
「もしも、キミが狙われたら」
「馬鹿ねぇ」
わたしは王の額に手を伸ばし、デコピンしてやった。おらくらえっ。
「っ……痛い。レイテ嬢?」
「やれやれね、ヴァイスくんは。ことわざも使えるくらい賢くなったようだけど、まだまだレイテお姉ちゃんには敵わないわね~」
「おねっ、レイテお姉ちゃん……!?」
ふぁ。ヴァイスくんがなんか胸を抑えて「なんだその響きは……ぁ、新しい扉が開くような……」とか呟き出した。
なんだかよくわからないけど大丈夫かしら?
「ともかくっ、ヴァイスくん!」
「!」
まったくアナタってば。
なにが〝汚くて危険な仕事に関わらせたくない〟よ。〝もしもキミが狙われたら〟? アホね~。
「わたし、アナタを救って『地獄狼』を壊滅させた張本人なのよ? 残党連中からはとっくに恨まれまくってるでしょうが」
「それは……」
「そして。この世に危険な仕事はあっても、汚い仕事なんてないでしょ」
「――ッ!」
ヴァイスくんは目を見開いた。それから、「そうだな……そうだった……これでは騎士たちに不義理だ」と、額を抑えながら呻くように言う。
「かつて、俺自身が言った言葉だな……。〝魔物を狩る連中は魂に汚れが移っている〟――などと語る中央貴族の風潮に対し、そんなことはないと。ヒトを守る戦士たちや、レイテ嬢のような存在こそ国の宝だと」
「は。そんなこともあったわね」
ヴァイスくんを拾った当初の出来事。もう半年近く前のことになるかしら? なつかし。
「すまん。俺としたことが、言葉を間違った」
「その通りね」
ま、ヴァイスくんの気持ちはわかってるわよ。
敵が命乞いしてきたりヤケクソになって突撃してくるような仕事には関わらせたくなかったんでしょ。
その心遣いは嬉しいわ。でも、
「わたしは極悪令嬢レイテ様よ。そのへんのヤワな女と一緒にしないことねっ!」
「ふっ……そうだったな。俺としたことが、悪の女王を舐めすぎた」
「!!! そ、そうわよ~! わたしってば悪の女王様なのよ! わかってるじゃないヴァイスくんっ」
これは立派な国王様になるわね。『王』の先輩として保証するわ!
「ではレイテ嬢。発言を忠告から、依頼に変えさせてもらう」
? どういうことよ。
「実はレイテ嬢が向かう予定の『聖アリスフィア学園』、そこにも『地獄狼』の残党が紛れ込んでいるという噂がある」
「ファッ!?」
え~~~? 『地獄狼』って傭兵団でしょ? なんでキッズたちの通う学校にいるのよ。
「用務員さんに紛れてるとか……? 普段はさえないおじさんだけど、実は超悪人とかカッコいいわね……ッ!」
「憧れないでくれ。……追い詰めた残党が死に際に放った言葉だ。曰く、〝世界の未来を作る学び舎に、全部を壊す種子が蒔かれている。せいぜい恐怖しろ〟――だそうだ」
「ふぅん」
世界を作る学び舎。それは、色んな国家の貴族の子女が集まる場所『聖アリスフィア学園』に違いないだろう。
で、そこに全部を壊す種子……つまり『地獄狼』絡みの者がいる、と。
「それ、信ぴょう性はどうなのよ?」
「わからん。もしかしたら出まかせの可能性もある」
「その種子とやらは子供でいいの? それともやっぱり用務員さんとか先生?」
「それもわからん」
「わからん尽くしね~」
やれやれだわ。ヴァイスくんも無表情ながら困り顔してるし。
「すまんな。学園にもこの話をして調査員を派遣させてもらえないか頼んだのだが、断られた」
「どうしてよ」
「曰く、〝学園はあらゆる国家の貴族子女を平等に育てる場所であるがゆえ、あらゆる部外者の介入を許さない〟。……もちろん犯罪者が潜んでいるというならその限りではないが、証拠がなければ、と……」
「あ~~、なるほどねぇ」
頑なにも思えるアリスフィア学園。でも考えてみれば話はわかるわ。
もしも噂だけで人員を入れれるなら、色んな国が『噂だけど怪しいヤツがいて~』とか言って人を紛れ込ませて、自国の子供を陰ながら支援したり、敵国の子供を拉致したり暗殺したりもできるし。
学園内がめちゃくちゃになっちゃう。
「名簿くらいは手に入るでしょ。誰か怪しいやつはいなかったわけ?」
「ああ……しいて言うなら『商国ラルゴ』の者たちだな。遠方のあの国は、金こそが正義だ。金さえあれば貴族籍も買える。悪人が紛れていても不思議ではない。それと……」
ヴァイスくんは少しだけ表情を曇らせた。
「『地獄狼』が大幹部の一人――『切り裂きブルーノ』の息子が、あの学園にいるようだ」
「なんですって?」
「それも我が国の者としてな。……近頃まで隠されていたことだが、ブルーノはかつて、とある貴族の令嬢と駆け落ちした」
ヴァイスくんは語る。
その後、いったい何があったのか、ブルーノは令嬢を殺害してしまったらしい。
それから彼は連続殺人鬼となり、やがて『地獄狼』に合流したそうだが――、
「ブルーノは一人息子を残していた。名はジャック。キミより一つ年下の十五歳で、ちょうど少し前に学園に通い始めたという」
「ふぅん。でも例の学園は貴族しか通えないのよね?」
「ああ。どうやらジャック少年は令嬢の生家たるシャルワール男爵家に保護され、存在を隠されながら育てられてきたらしい」
「なるほど……」
殺人鬼の子だものねぇ。可哀想だけど軟禁状態が幸せか。
「だが『地獄狼』が我が国を支配したことで、幹部たるブルーノは一気に悪名を上げた。民衆たちに〝あいつには息子がいたはずだ〟〝どこに行った〟と噂され……」
「シャルワール家のジャック少年に辿り着かれた、か」
「ああ」
ヴァイスくんは頷く。「民衆の力は恐ろしいな」と、肝に銘じるように呟いた。
「それからは家への抗議や嫌がらせでも始まったのだろう。シャルワール家は例の少年を学園へと出したわけだ」
「要は追放されたわけね。ちっ、極悪令嬢として憧れるエンドの一つを先越されたわ……!」
「なぜ張り合うんだ。……ともかくそういうわけだ。父親や『地獄狼』とは隔離されていたはずだが、密かにやり取りしていた可能性もある。それに凶悪性を引き継いでないとも限らん」
ふぅん。覚えておくわ、ジャックくんって子。
まぁわたしよりも凶悪な十代はこの世にいないでしょうけどね~~~おほほほほほ!
「さてレイテ嬢。俺は国王として、これよりキミに依頼を出す」
「!」
依頼……さっきヴァイスくんが言ってたわね。忠告から依頼に変えるって。
「最初はただ〝『地獄狼』残党に気を付けろ〟とだけ言う気だった。だが、キミを強い女性と見込んで頼もう。むしろ件の残党を、学園内にて探し出してほしいと――!」
「! ……へえええ……!」
なるほどなるほどっ。つまり、スパイ作戦ってわけねぇ~~!?
「うふふ、いいじゃないそれ。学園には調査員の派遣を断られたから、じゃあ生徒として紛れ込ませようって? あはっ、なかなかあくどいわねヴァイスくん~!」
「ふっ……これでも俺は、悪の女王の奴隷だからな」
よぉし気に入った!
「その依頼、喜んで受けるわっ! このレイテ様に任せなさァ~~い!」
――こうしてわたしは、密命を受けて入学することとなった。
うっふっふ。極悪令嬢入学扁だなんて、面白いことになってきたじゃないの!
「ちなみに例の学園だが、二名まで使用人を付けることができる。どうするレイテ嬢? 護衛として騎士でもつけるか?」
「いらないわよ。それよりも『地獄狼』残党を探すなら、ピッタリな二人がいるでしょ?」
「なに……まさか」
そう。
「残党を探すには、こっちも残党を使えばいいのよ」




