表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◤書籍化&コミカライズ配信中!(検索!) ◢極悪令嬢の勘違い救国記 ~奴隷買ったら『氷の王子様』だった……~  作者: 馬路まんじ@サイン受付中~~~~
第四部:学園の聖女扁

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/133

第四章プロローグ:学び舎に降りし、『救国の聖女』

コミック配信中!(えがすごい)&新章突入!





「――ジャックくん。いい加減に学園を辞めたまえ」



 とある学び舎の裏庭にて。昼下がりの陽射しさえ届かぬ隅で、少年・ジャックは地面に膝をつかされていた。



「うぅ……」


「やれやれ。あぁやれやれだよジャックくん。なよついた顔のくせに、キミもわからん男だよ」



 ジャックの制服は土にまみれ、顔には殴られた跡が。そんな彼を、身なりのいい少年たちが嘲笑していた。



「おかげで毎日、キミに『教育』してあげなくちゃぁいけないじゃないか。ボクらの気苦労も考えたまえよ?」


「ハイネくん……僕は、学園を去る気は」


「黙れ。キミ風情が口答えするな」



 ハイネと呼ばれた金髪の少年は、侮蔑を込めてジャックの頬を打った。



「ッ……!?」


「やれやれ……いいかいジャックくん? わからず屋のジャックくんよ。ここ『(セント)アリスフィア学園』は希望の学び舎だ」



 彼は手を広げ、古く威厳ある校舎を示していく。



「複数の国家の境界入り乱れし場所に立ち、あらゆる国の者の入学を受け入れている。そしてその入学条件は、〝貴族の血を引く者であること〟。たとえばこのボク、伯爵家のハイネ・フィガロのようにねぇ?」



 金髪の少年ハイネは高らかに胸に手を当てる。心臓に流れる血の一滴にまで、誇りを抱いている証左だった。



「各国の中枢に携わるには、この学園で上位の成績を叩き出す必要がある。いわばこの地は貴族たちの登竜門なわけだが――」



 ハイネは忌々しげにジャックを見下ろした。



「キミも、まぁ一応は貴族の血を引いてるんだろうね。貴族の者のみが使える『異能(ギフト)』。ソレを有しているのだから。だが、だがだッ!」



 言葉を切り、ハイネは起き上がろうとするジャックの肩を蹴りつけた。



「ぐっ……!?」


「キミの血は穢れてるんだよ! なにせ異能持ち(ギフトユーザー)と言っても、かの恐ろしい殺人鬼『切り裂きブルーノ』の血を引いてるのだからねェッ!」



 その一言に、ジャックは強く拳を握った。強い嫌悪感の光が、前髪のかかった瞳に滲む。


 

「ハイネ……くん。僕の前で、あの男の名前を出さないでくれ……!」


「おやおや。自分の父を『あの男』呼ばわりとは口が悪いねぇ。しかしどんなにキミが嫌がろうとも、『切り裂きブルーノ』の血を引いていることは事実だろう?」



 ま――つい最近かの『救国の聖女様』の軍に討伐されたそうだがねぇと、彼は吐き捨てるように言う。



「さてジャックくん。恐るべき血を引くジャックくんよ」



 にちゃりと、ハイネは粘つくような笑みで少年をなじる。

 学園中から避けられている『殺人鬼の子』に、心からの侮蔑を込めて。



「わかりやすく言ってあげるよ。キミが父親を嫌うように、未来あるボクらもキミのことが嫌いなんだよ」


「ッ」


「なにせボクらは貴族の子。国の未来を背負う者たちだ。血の一滴さえ下民共の数万倍価値ある命だ。ゆえに、ある日キミが父親のような『切り裂き魔』になったらと思うと、怖くて怖くて堪らなくてねぇ~~」



 朗々と歌うように述べた後、一転、ハイネは視線を神経質気味に尖らせると、ジャックの胸倉をつかみ上げた。



「ぐ!?」


()()()()()()()()()()()。おまえごときが国の中枢に関わろうと思うな……!」

 


 強くぶつけられる侮蔑の情。ハイネ以外の少年たちも、「ハイネさんの言うとおりだ」「出てけよ殺人鬼野郎」「死ね」と、冷たい言葉を投げかける。

 ジャックの入学よりおよそ三か月――もはや毎日となったほどの、常人なら耐えかねる扱いであった。

 だが。



「ぼ、僕には……」



 だが、しかし。



「僕には、夢があるんだ……!」


「あぁ?」


「この学園で、叶えたい夢が……!」



 だからこそ。だからこそジャックは、この責め苦の日々を耐え抜いていた。

 どんな嫌がらせを受けようと。陰口を叩かれ、時に無視され、私物を壊され暴力を振るわれ、最近ではいよいよ異能(ギフト)による暴行さえ受けることがあろうとも。

 少年ジャックは、夢のために耐え続けてきた。



「僕は殺人鬼の子だ……! だからこそ、法務職に携わってみせるッ! 罪人を適切に裁いた上で、()()()()()が苦しまないためのプログラムを作ってみせるんだ!」



 それこそが、ジャックの無常の夢だった。



「親が犯罪を犯し、自分のように苦しむ者を救うために! 国による犯罪者家族の情報保護を行い、親が出所後に再犯しないために、元犯罪者の職業斡旋も!」


「黙れゴミッ!」



 ジャックの理想を、しかしハイネは一喝する。



「はぁ~~~。世迷いごとも極まれりだよ……!」



 苛立たしげに侮蔑を強めるハイネ。他の貴族の子息らも同様の反応である。

 ジャックの掲げた法策は、あまりにも未来に行きすぎており――有り体に言えば『無駄の極み』だと彼らは思っていた。


 なにせ、犯罪者やその家族の生活など、貴族にとってはどうでもいいのだから。



「いいかッ、国庫も人手も有限なのだよ!? 罪人やその家族なんかを支えるために、どうしてリソースを割かなきゃいけない! 犯罪者は全員死刑ッ! その家族も迫害されまくって死ぬくらいでいいだろうが!」


「そっ、そんなのはあまりに無情でッ!」


「うるさい!」



 言葉と共に、ハイネは殺人鬼の子(ジャック)の顔面を殴り飛ばした。「ぐぅッ!?」と呻きながら少年は倒れる。



「ぐ、うぅ……僕には、夢が……!」


「黙りたまえ。キミの夢は国を壊すモノだ。同じストレイン王国の者として見過ごせない」



 犯罪者やその縁者を擁護して何になるのか。それが国の未来に繋がるとは到底思えない。

 ハイネがジャックを邪険に思う理由の半分は、彼が理解不能の夢を抱いていることにあった。



「特にこのハイネは法務大臣の子……だからこそキミをより許せないんだよねぇ……ッ!」



 拳を鳴らすハイネ。さらなる暴行を加えるべく、倒れたジャックに近づいていく。


 他の少年たちもソレに続いた。


 なにせ殺人鬼の子(ジャック)はこの学園の『悪者』。どんなに気持ちよく殴ろうが、正義は自分たちにあるのだから。



「今日は徹底的に躾けてあげよう。キミが馬鹿げた夢を捨て、『この学園を去る』と宣言するまでねぇ……!」


「くっ……」



 迫る暴力の予感。恐怖。

 されど、ジャックは決して撤回しない。歯を食いしばり、正義の鉄槌を耐え抜く気でいた。



「ぼ……僕の夢が、国を壊すというなら、上等だ……!」



 土と生傷に塗れながらも、それでも彼はハイネらを睨み、宣言する。



「嫌われ者の悪党になろうが、僕は夢を叶えてやる――!」



 その一言に、ハイネらはキレた。「この殺人鬼の子め!」と喚き、ジャックを集団暴行せんと迫った――その時。

 

 

「いい宣言を聞いたわねぇ。エリィ、助けてあげなさい」


「あいよ、お嬢」

 

 

 瞬間、少年たちは宙を舞った――!



「――え?」



 そう呟いたのはハイネらか、あるいはジャックか。

 気付けば騒乱の中心には、クラシカルな給仕服を纏った『不自然なほど美しいメイド』がいた。

 紫の髪を揺らした彼女により、少年たちは横腹を回し蹴られ、一瞬遅れて『ぐべらッ!?』と喚きながら地に転がったのだった。



「えっ、え……!?」



 その状況に戸惑っているのは、助けられたと思しきジャックである。

 


「一体、なにが……?」



 ――この学園に、ジャックを助けてくれる者などいない。


 なにせ彼は『悪者』なのだから。たとえ本人が悪行を行ったことなどなかろうが、そのように扱われているのだから。



 だというのに。



「あらなによ。せっかく下僕を使って助けてあげたのに、お礼の一言もなし?」



 そんなジャックに、手を差し伸べる者がいた。



「でもいいわぁ。それもなかなか悪党ポイント高いじゃない」



 ジャックの長すぎる前髪の先。謎のメイドや、倒れた少年たちの向こう側に、『彼女』は立っていた。


 美しい銀髪の――新品の制服を纏った小柄な少女が。



「キミ、は」


「わたしは」



 この日のことを――少年ジャックは一生忘れないだろう。



「わたしこそは、『悪の支配者』レイテ・ハンガリア! この学園を恐怖のどん底に沈めに来たわよォ~~~~~~ッ!」



 ――それが殺人鬼の子ジャックと、『救国の聖女』との出会いだった。


【ヴァイスくんへのお手紙】


レイテ『ヴァイスくんへ。入学初日に悪党に味方してガキどもボコりました! わたし極悪ぅ~~~! 聖女の噂も撤回不可避ッ!』


※なお、いじめられている者を救っている模様。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
学園キター(・∀・)そして第4巻フラグキター(・∀・)
学園編の開幕だああああああ!!!! レイテ嬢のますますのご活躍をお祈り申し上げます(*´꒳`*) 政務に忙殺ヴァイスくんになっていそうだし彼の出番はまだまだ先になりそうww
新章、これまた楽しみでしかない展開で笑えました!www 最後のコメントで、クスッとしたのでなくて声出して笑ってしまった。 まるで天気予報か現場中継のレポーターが居るような感覚で、なんとなくその光景が…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ