第2-14話 告白と魔術師
「ゴーレムはまだまだあるんだよ」
マリオネッタが笑うと地面からゴーレムがわいてくる。
「『装焔』」
イグニの周囲に生み出されたのは、小さく点のように見える『ファイアボール』。それらすべてが白熱化すると、
「『発射』ッ!」
ズドドドドド!!!
イグニの周囲から空気の弾ける音が響いて、イグニが生み出した小さな『ファイアボール』たちがゴーレムに直撃すると、ボディを貫通!! ボコボコと穴をあけていくッ!!
「えぇ……。君、何なの……? 適性【S】までの術式は完全に防ぎきるんだけど……」
マリオネッタは引いた顔で、新しい煙草を口に咥えた。
「……いいや。数だけはあるから」
マリオネッタが手を広げる。
地面からボコボコとゴーレムが沸いてくる。
「アリシア! あいつの魔術は……?」
ゴーレムは【地】属性の魔術。
【固有】の術者なら、その魔術を使ってきてもおかしくないのに……!
「限定的な支配領域よ! 展開した領域の範囲内にいる人間の一部の感覚を奪うのッ!」
「なるほどッ!」
だから、魔力の熾りが分からなかったのだ……ッ!
イグニは再び『装焔』を発動。周囲に生み出した全ての火球をゴーレムにぶつけて、マリオネッタを狙う。
その隙にローズの拘束をほどく。
「立てるか? ローズ」
「た、立てないわ」
「じゃあ、しっかり捕まってろよ」
「は、はぃ……」
イグニはローズを抱きかかえる。アリシアから刺すような視線が飛んできたような気がしたが、気のせいだろう。
「悪いけど、『聖女』さまは渡さない」
静かに煙草から煙を吐き出すとマリオネッタはイグニに掌を向けた。
イグニは自分の直感を信じて跳躍。
次の瞬間、イグニの足元が溶けた。
「えぇ? 避けるの??」
「今のがお前の魔術か……っ!」
再び、魔力の熾りがない魔術!
「教えると思う?」
「喋らせるッ! 『装焔:徹甲弾』ッ!」
イグニの目の前に生み出された巨大な『ファイアボール』が回転開始ッ!!
空気と摩擦して音が鳴るッ!!
「視界を奪おう」
ぶん、とイグニの視界が暗黒に染まる。
「アリシアッ!」
「任せてッ!!」
「『発射』ッ!!」
「『風よ導いて』ッ!」
ドンッッツツツ!!!!
爆発音とともに撃ちだされた『ファイアボール』がアリシアの導きによってマリオネッタに飛ぶ……しかし、ゴーレムが守ったッ!
「貫くぞッ!」
ドウッ!!
イグニの叫びと同時に、ゴーレムの身体が大きく凹むとマリオネッタを巻き込んで吹き飛んだッ!!
「痛ぁ……」
マリオネッタが吹き飛んだことで、イグニの視界が戻る。
「アリシアから聞いたぞ。マリオネッタ」
イグニがローズを抱きかかえたまま、マリオネッタを睨みつける。
「お前、弱いんだろう?」
「ひどい事を言うなぁ。年上は敬えって習わなかったの?」
ゴーレムを押しのけて、マリオネッタが立ち上がる。
しかし、その身体はボロボロだ。
「いや……まあ、そうなんだよ。君の言う通りさ、僕は強くない。正面戦闘なんてしたら学生相手でも負けちゃうね」
「引け」
「見逃してくれるの? 優しいね」
マリオネッタは口角を引きつらして、笑う。
「でもさ、そういうのって『甘さ』って言うんじゃないの」
マリオネッタの足踏みとともにゴーレムたちが壊れると、再構築されていく。
「イグニ君。君はさっきから『ファイアボール』しか使わない」
「ああ。それしか使えないんだ」
「なんかそんな気がしてたんだ」
ニィ、とマリオネッタの顔が変貌する。
「だからさ、熱で壊れないゴーレム。作っちゃった」
『耐熱性』を付与されたゴーレムたちがイグニの周囲を囲む。
「『装焔』」
「無駄だよ! おじさん頑張ったからさ! 『ファイアボール』じゃ壊れないよッ!!」
「『重装化』」
「……は?」
ズン、と形容したくなるような勢いでイグニの『ファイアボール』が肥大化する。火力を上げるのではなく、『ファイアボール』の魔力密度を上げるッ!
「『砲撃』」
ドドドンッ!!!
鼓膜が破れるのではないかと思うほどの重低音ッ!
空気が破裂して悲鳴を上げるッ!!
イグニの生み出した『ファイアボール』に押されて、ゴーレムたちが吹き飛ぶ!
「『ファイアボール』ってのは……熱だけじゃねえぞ」
「嘘だろう?」
これは流石に予測していなかったのか、マリオネッタはぽっかり口を開ける。その目の前にイグニは立って、マリオネッタに向かって『ファイアボール』を突き付けた。
「どうする? 降りるか。それとも戦うか?」
すると、マリオネッタは両手を上げて降参のポーズを取った。
「降参するに決まってるよ。こんなんで命を懸けたんじゃ、割に合わない。依頼主には悪いが……僕はここで降りるよ」
「依頼主って……アンタは南方連合の傭兵でしょ」
アリシアが捕縛術の授業で習った技術を活かして、マリオネッタを捕縛する。
「南方連合? 僕はあそことの契約は去年で終わりだよ」
「は? じゃあどこだっていうのよ」
「依頼主を言うとでも?」
「……」
それは、彼の傭兵としての矜持だろう。
しかし、その情報を聞き出すのはイグニたちの仕事ではない。
「さっさと工房を出るわよ。ほら、案内しなさい」
アリシアがマリオネッタをどつく。
「ちょっと! おじさんなんだから、もうちょっと労わってくれよ……」
「『聖女』誘拐の犯罪者でしょ!」
自分が未遂なのを良い事にマリオネッタを急かすアリシア。
「あ、ありがとう。イグニ」
イグニに抱かれたままのローズがとろんとした瞳でイグニに感謝を告げる。
「良いさ。ローズは捕まえたくなるからね」
そう言ってローズにほほ笑むイグニ。
「もう立てる?」
「う、うん」
地下に作られた『魔術工房』を出る。
外にはユーリが待機していた。
「お、お帰り!」
「……仲間が、もう1人いたのか」
マリオネッタががっくりと肩を落とす。
「あのね、イグニ」
「うん?」
イグニの後ろを歩いていたローズがイグニの手を取った。
あ、柔らかい……。
「お願いがあるの」
「お願い?」
ローズの頼みにイグニは首を傾げた。
「あのね。私、イグニのことが好きなの!」
「あ、ありがとう……?」
突然の告白に、イグニの思考が止まる。
「それでね、私と一緒に付いて来て欲しいの」
「ついて来るって……?」
「これから40年。色んな国を回るんだけど、イグニに一緒に来て欲しいの」
「一緒に」
「うん。でもね、すぐに答えは出さなくていいの! だって私とイグニは運命で結ばれてるから!! それに、今日助けに来てくれたことでイグニの気持ちはよく分かったから!!」
「……気持ち」
イグニは、ローズの言葉を繰り返す。
「私は3日間この国にいるの。だからね、それまでに返答を聞かせてほしい」
ローズはそう言って、笑った。
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