表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/86

ノーラとアシュトンの結婚生活

本日コミカライズ7巻が発売となりました!

こちらはその発売記念短編となっています。

 私、ノーラはエナンセア公爵家の令嬢である。

 そして、今からおよそ一年ほど前に──第七王子のアシュトンと結婚式を挙げ、晴れて王太子妃となった。


 とはいえ、私の日常は変わっていない。


 大好きなロマンス小説を読んだり、たまには冒険者として魔物を狩ったり……悠々自適な生活を送っていた。


 そんな私ではあるが、最近気になっていることがある。


「ねえライマー、屋敷の庭についてなんだけど……」

「……っ!」


 屋敷の廊下を歩くライマーに話しかけると、彼は露骨に驚いて、走り去ってしまった。


「ちょっと、なによー」


 庭で育てている花について、ライマーに意見を聞きたかったのに……。


「まあいっか。あっ、カスペルさん。カスペルさんは……」

「ノーラ様、おはようございます。すみませんが、私は忙しいので話は別日に……」


 今度はカスペルさんを見つけて同じように声をかけるが、やっぱり彼も私からそそくさと離れていく。


 まただ──。

 最近、妙にみんなの反応がよそよそしい。


 アシュトンにも問いただしたいけど、彼は最近忙しいらしく、なかなか家に帰ってこないし……。


「私、嫌われているのかしら」


 しょんぼりと肩を落とす。


 だけどみんなも、たまたま忙しいだけなのかもしれない。

 もしくは、アシュトンの妻である私にどう接していいか、分からなくなっているのか。


「でも、もうアシュトンと結婚してから一年が経とうとしているのよ? 今更、そんなことを思うのかしら」


 ぶつぶつと自問自答するが、考えても答えは出そうにない。こういうのは時間を置けば、自然と解決するはず。


 前向きに考えて、私はその場を後にした。




 ──疑問が解決したのは、三日後のことである。




 自室でロマンス小説を読んでいるとリリヤに呼ばれて、私は食堂に向かった。


「一体なんなのかしら。()()()はもう待っていると言ってたけど……」


 首を傾げながら食堂の扉を変えると、軽快な音が鼓膜を震わせた。



 パーン!



「「結婚記念日、おめでとうございます!」」


 ライマーとカスペルさんがクラッカーを手に持ち、笑顔でそう言ってくれた。


 え……なに?


 よくよく見ると、テーブルにはいつもより豪勢な料理が並べられている。

 こんなこと、今までなかったのに。


 混乱の最中、食堂の奥からアシュトンが歩み寄ってきた。

 彼の両手には花束が抱えられていた。


「……俺はこんなこと、しなくてもいいと伝えていたんだがな。とはいえ、この一年──何事もなく……いや、ちょっとはあったかもしれないが、無事に結婚記念日を迎えられた今日が、特別な日であることには変わりない」


 そう言って、アシュトンは私の前に花束を差し出す。


「ノーラ、君と結婚してから、この一年を過ごせた。これは俺からの感謝の印だ。受け取ってくれ」

「──っ!」


 突然の出来事に、私は嬉しさで言葉を失ってしまう。


 そっか……今日は結婚記念日だったのね。

 どうでもよかったわけではないけど、毎日が楽しすぎて、つい頭から抜け落ちてしまっていた。


「もしかして、最近みんながよそよそしかったのも、これが原因かしら?」


 花束を受け取って、私はみんなを眺めた。


「ええ、心苦しかったですがね。ですが、ノーラ様にサプライズを送りたくて……悩んだ結果、このような形になりました。すみません」


 とカスペルさんは頭を下げ。


「オ、オレは反対したんだ。こんなまどろっこしい真似をしなくても、素直に祝えばいいんじゃないか……って。まあ、お前の驚く顔も見れたし、よかたって思ってるがな」


 ライマーはちょっと照れくさそうに、鼻下を擦った。


 ふふっ、みんなはこのために準備を頑張ってくれたのね。

 驚いたのもあるが、何日も前から密かに準備を進めてくれたみんなに、心から感謝した。


「みんな──ありがとう! さあ、今日は食べるわよー。お腹ペコペコなのよ」


 と意気込んで、料理に手をつけると。



「み、みなさま!」



 慌てた様子で、メイドのリリヤが食堂に駆け込んできた。


「あら、リリヤ。あなた、どこ行ってたの?」

「私は料理の準備を手伝っていまして……って、そんなことより大変です。聞いてください!」


 リリヤの切羽詰まった様子に、みんなの視線が自然と鋭くなる。


「街の外に魔物の大群が確認されました。魔物たちはこの街を目指しており……あと数分で辿り着くとのことです」


 魔物の大群……最近は私も定期的に魔物を狩っているから、そういうことは起こらないと思っていたけどね。

 しかし魔物の行動を、人間は完全に読めない。今みたいに魔物たちが突如、活発になり街に押し寄せてくることもあった。


「アシュトン……」

「ああ」


 アシュトンに目配せすると、彼はにやりと笑って。


「せっかくの結婚記念パーティーだが……ひとまず中止だ。まずは魔物を片付けなければならない」

「魔物も空気読めないよなー。今日くらいは休んでくれていいのに」

「そう言っても仕方ありません。私も戦います。早く片付けて、パーティーの続きをやりましょう」


 ライマーとカスペルさんもそう言って、やる気満々のようだった。


「ええ、行きましょう! 料理が冷めないうちに、魔物を全滅させるのよ!」


 もちろん、屋敷に閉じこもっているだけの柔な令嬢ではないので、私もそう声を大にする。


 私の言ったことに誰も反対せず、少し楽しそうに頷いた。



 ……慌ただしい結婚記念日になっちゃったわ。

 だけど、こういうのも私たちらしいんじゃないかしら。


 私は花束の代わりに剣を取って、魔物のもとへ急ぐのであった。

おかげさまで、鏡ユーマ先生によるコミカライズ7巻が本日発売となりました(電子版のみとなります)!

堂々の最終巻です。

「話が違う!」から始まったノーラとアシュトンのストーリー。ぜひ最後までご覧になってくださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1653
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000366895

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新2巻が発売中
jb6a64403lndg8zj4n5jjf1r6poi_maa_13z_1kw_a74q.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ