表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
話が違うと言われても、今更もう知りませんよ 〜婚約破棄された公爵令嬢は第七王子に溺愛される〜【書籍化】  作者: 鬱沢色素
本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/86

26・モテる男は辛い

「おい、お前! どこに行ってたんだ!」


 中庭に戻ると、両手に料理のお皿を持ったライマーが怒り顔で近付いてきた。

 あっ、いけない……ライマーのことを忘れていたわ。それに律儀に私の渡したお皿をまだ持っているし。


「ごめんね、ライマー。いけないことをしてしまったわ。お皿を持ってくれて、ありがとね」


 素直に謝ると、


「お、おう……あ、謝ったらいいんだ! 今度から気を付けろよな!」


 ライマーは拍子抜けたのか、慌て気味にそう口にした。


「ノーラ。旨い料理を楽しんでいたのは分かるが、両手が塞がった状態でどうやって食べるつもりだったのだ。まさかかぶりつくつもりでもいたのか?」


 あら、アシュトンも挨拶回りが終わったようね。

 彼は私とライマーのやり取りを、楽しそうに見ていた。


「あら、失礼ね。それは()()()しかしないわ」

「……そ、そうか」


 あれ?

 アシュトンが私の言ったことに、ちょっと引き気味になっている。


 私だってそんな犬みたいな真似はほとんどしない。

 全く……アシュトンは私のことをなんて思っているのかしら。


「あっ、そういえばお友達が出来たの」

「ほう?」

「アシュトンたちにも紹介するわ。セリア……どうして、私の後ろに隠れているのよ。アシュトンとライマーに紹介させて」


 ライマーたちと合流してから、何故だかずっと私の背中に身を隠しているセリア。

 そんな彼女の腕を取り、アシュトンたちの前に引っ張り出す。


「あっ、ノーラ……セリアは……」


 セリアはすぐに逃げ出そうとしたが、私に腕を掴まれているせいでそうすることが出来ない。


「……!」


 アシュトンがセリアの顔を見た瞬間、表情を硬直させる。

 

 え?

 なんでこんな表情に?


「お前みたいな野生児にも人間の友達が出来たんだな……よかったよかった」

「ライマー。私のことをなんだと思っているのよ」

「おれはライマーだ。アシュトンさんの一番弟子だ! よろしくな」


 ライマーが私の言ったことを無視して、セリアに手を差し出す。すると彼女もおずおずした様子ながらも、ライマーと握手をした。


「…………」


 アシュトンは腕を組んで、憮然とした表情。


「……? どうしたのかしら。あっ、もしかしてアシュトンとセリアって元から知り合いだった?」


 そういえば、セリアのことをイジめていた三人は気になることを言っていたしね。

 あのバカな三人のことだからあまり気にしていなかったけど、アシュトンもこんな調子だったら気になるわ。


「セリアは……」


 アシュトンがようやく口を開こうとした時であった。


「……セリア。アシュトン様の婚約者候補……だったの」


 それよりも早く、セリアが答えた。


「あっ、そうだったの」


 アシュトンは私と婚約する前、数々の婚約者候補と顔を合わせたと言っていた。

 セリアもその中の一人だったということね。


「うん……すぐに門前払いされちゃったから、ノーラに対してやましいことはないんだけど……」


 やましいこと? 私がそんなことを気にしていると思ったのかしら?


 まあセリアの立場だったら分からないでもないけどね。

 でもアシュトンに婚約者候補が複数存在していたことは私も知っていたし、今更なにも思わないわ。


「ふうん。でもアシュトンとセリアが元々そんな関係だったと聞いて、なんだか私も嬉しいわ」

「嬉しい……だと?」


 きょとん顔のアシュトン。


「うん。だって、友達の知り合いがアシュトンだっただなんて、運命的なものを感じるじゃない!」

「……お前のポジティブさ加減は、呆れを通り越して尊敬するな」


 アシュトンはそう口では言っているものの、呆れたように息を吐いた。


「そういえば、あの三人はあなたがアシュトンに色目を……って言ってたけど、それはどういう意味なのかしら?」

「ア、アシュトン様の婚約者候補になれるだけでも、誇れることだからっ。きっとあの人たちは、それが気に入らなかったんだ……と思う」


 アシュトンにも視線をやると、彼は「だろな」と頷いた。


 婚約者候補になっただけでも、やっかみを受けるだなんて……大変ね。セリアもアシュトンも。

 モテる男は辛いというヤツだ。


「あっ、そうだ」


 パンと手を叩き。


「積もる話もあるでしょう? せっかくだから、二人だけでちょっとお喋りしなさいよ」

「え、ええー? でもセリア、門前払いされただけだったし……なにも話すことなんか……」

「いいからいいから」


 嫌がるセリアの背中を、私はぐいぐいと押す。

 彼女はそう言っているけど、二人ともなにか話したそうだったのよね。

 だからここは空気を読んで、そうするべきだと思った。


「ライマーも行くわよ!」

「はあ? どうしておれも……」


 お次にライマーの背中を押して、私たちは二人の前から立ち去った。


 そして二人と離れてから、


「ふふん、私ったら気の利く女よね。あなた、さっき。私のことを『野生児』って言ったけど、そうでもないのよ」


 気分良く口にした。


 だが、ライマーは呆れ顔で。


「……さっきので、気が利くなんて言ってたら、とんでもないぞ。アシュトンさんも苦労するだろうな」

「どういうこと?」

「自分で考えろ」


 さらに問い質そうとしたけど、ライマーはそれ以上喋ってくれそうになかった。


「まあいっか。あっ、お皿持ってもらってありがとね。冷めないうちに早く食べなくちゃ」

「これくらい、容易いことだ。おい、ちょっと待て。ノーラ、お前本当にかぶりつくつもりじゃないだろうな? や、やめろ! みんながこっちを見て……!」


 ライマーが何故だか、私のことを必死に止めてくる。


 少し離れたところでは、アシュトンとセリアがなにやら深妙な顔で話していた。

【作者からのお願い】

「更新がんばれ!」「続きも読む!」と思ってくださったら、

下記にある広告下の【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります!

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆コミカライズが絶賛連載・書籍発売中☆

Palcy(web連載)→https://palcy.jp/comics/1653
講談社販売サイト→https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000366895

☆Kラノベブックス様より小説版の書籍も発売中☆
最新2巻が発売中
jb6a64403lndg8zj4n5jjf1r6poi_maa_13z_1kw_a74q.jpg
― 新着の感想 ―
[気になる点] 主人公の描き方が雑 仮にもお后教育を受けていた公爵令嬢が 豪快であっても良し。。なんだけど 敬うという言葉が随所で散見されている印象 元婚約者候補は、何故礼節わきまえず自分名前発言から…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ