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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第二章 夏
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vs黒居ねむ2

「…なにやってんだお前…」


アキツグに呆れ顔でみられた。

言わないでくれ。男には負けられない勝負ってやつがあるんだよ。


俺が何をしているのかというと、高校の中庭で握手会を開催していた。

現在はお昼休み。朝の一幕があってから隙をみてはアキラたちと緊急会議をしていた。


『これまでは放っておいてもコウたんファンクラブは数を増していた。すでに人数は200人近くいる。だがこれから新規開拓、また現在の会員を手放さないようにするためにはコウ自ら積極的にアピールしていく必要がある。』


今まではファンを増やそうとは思っていなかったが、黒居に奪われるくらいなら全部俺が囲んでやる!


「それで握手会か」


「はぁはぁ、コウたん!こうしてコウたんに触れられる機会が得られるなんて!感激です!応援してます!頑張ってください!」


俺と握手をしている男子生徒が嬉しそうに去っていった。時間目一杯俺のお手てをすべすべされた。

気持ち悪いなんて思わない。ファンは大切なのである。サブイボが立ったとしても勝つために我慢である。


因みに一人当たりの持ち時間は20秒だ。ありがたいことにそれなりに人数がいるので時間は短めである。お昼休みだって有限だしな。

チケットを配布しているわけじゃないので、何枚も出せば延長できるというシステムはないんだぜ?


「はい、そこ順番に並んでくださいまし。いくら仲良しの毒島くんでも割り込みは許されませんよ」


姫路さんにアキツグが注意されて、列の最後尾に並ばされている。

…素直に並ぶんだな…握手して欲しいの?


因みに握手会に参加するには、まずファンクラブの会員証を発行する必要がある。

会員証を獲得した上でないと握手の列には並ぶことはできない。

なのでまだ会員証を持っていないアキツグは手続きのための列に並んだ。


ファン獲得と言えば握手会だろうという安直な考えだったんだけど、案外これが好評で数十人がすでに握手会の列へと並んでいる。男子が多いが女子も結構いる。女の子にもファンがいると思うと嬉しい。また、その中にはどっかでみたことのある顔もいた。


「…あの人今朝黒い布を巻いてませんでした?」


小声で姫路さんに尋ねると小脇に抱えていたバインダーをパラパラとめくり始めた。


「ありましたわ。確かにコウさんのおっしゃる通り、黒居ねむのファンクラブ会員の一人です。」


もしや敵情視察か?と思ったが、順番が回ってきたら嬉しそうに俺の手を握っていた。


「あ、あの!わたし、黒居さんにちょっと惹かれてたところもあったんですけど、やっぱりああいう人気の取り方は良くないかなっていうか、、コウたんが一番かわいいです!頑張ってください!応援してます!」

「あ、ありがとうございます」


同じ女子としては黒居のようにパンツ見せたりキスしたりという直接的な媚を売るような戦法は好ましくないようだ。…握手会もどうなんだっていう話ではあるのだけれど。


「ふふ。コウさんの美しさに何人もひれ伏すのです。黒居ねむなど敵ではありませんわね」


姫路さんが口元を抑えて上品に笑っている。寝返らせたことが嬉しいようだ。

うむ。今朝富岡を奪われたばかりだからな…意趣返しになっただろうか。


昼休みが終わりの時間になったので、握手会の列は解散させた。

続きは放課後ということで。


教室に戻ると後ろの席の黒居と目が合う。何か不満そうな顔をしている。

ふふん。お前のファン貰っちゃったぜ?


「…フン…一人や二人どうってことないデス」


ぷいっと顔を背けてしまった。…勝った。


「そ、そうだよね〜!一人や二人どうってことないよね!ねむたんならすぐファン増えちゃうよ〜」

「そうそう!」


隣の富岡と、黒居の隣の男子が一緒に持ち上げる。

お前ら俺を前にしていい度胸だな。


「…」


しかし黒居の表情は硬いままだった。



放課後になると再び握手会を再開する。

だが、会場には予想外の人物がいた。


「黒居さん、、何してるんですか…?」

「握手会デス☆」


こいつ…まんま真似してきやがった。

しかも同じ会場で俺たちの陣営と対立するように。


赤い布の集団と黒い布の集団が互いに火花を散らす。

通りかかる人全てにファンクラブ会員たちが声をかけて集客争いをしていた。


今のところ列に並んでいる人数比は6:4で俺の方が優勢だ。しかし黒居は突然戦法を変えてきた。


「はぁ〜い!みなさんご注目デス〜!今から30分間だけ、握手だけじゃなくてぇ、、ハグもしちゃいマス☆」


おおおお・・・!!?会場がどよめいた。

なんだと…!?手を握るだけじゃなくて、抱きついてくれるというのか!お、お前そこまで…!?

驚いて黒居の方を見る。


「ワタシには、手段を選んでる余裕なんてないんデスヨ…」


黒居が何か呟いたみたいだが、周囲の雑音に紛れてよく聞き取れなかった。

その顔はこれまでニヤニヤとした薄笑いではなくて、張り詰めた表情をしていた。



ハグの効果は絶大だった。

遠巻きにお祭り騒ぎを眺めていたギャラリーが、こぞって列を並びだし、俺の方に一度並んだ人たちも、一瞬の戸惑いの後、列を外れて黒居の方に吸い込まれていく。

…くっ!まずい!このままだと負ける!?


近くで会場整理をしていた姫路さんが提案してくる。


「コウさん!このままでは根こそぎ会員を奪われてしまいますわ!こちらも負けずにハグを実施しましょう!!ハァハァ!さあ早く!」


姫路さんの鼻息が荒い。あんたがハグされたいだけじゃないのか!?

あ、でも女の子とハグか…それはなんていうか、こちらとしてもメリットがあるというか…。

イカンイカン、そんな邪なことを考えては。姫路さんはかなりの美人さんだし、吝かではないのだけれど、ああでも…!


そんな葛藤を心の中で繰り返していたら、騒ぎを聞きつけたのか先生方がやってきた。


「こらー!中庭で何をやっている!部活があるものは部活へ!そうじゃない者は早く下校しなさい!」


先生方に一喝され、生徒たちは散り散りに解散していった。

…ふう。助かった。これ以上長引いていたらこちらの被害は甚大だっただろう。

先生方の後ろにはメガネを光らせたアキラの姿があった。どうやら形勢が不利だということを悟ったアキラがあえて先生方に情報をリークしたみたいだ。ファインプレーだアキラ!


ただ主催者である俺は先生方にお説教をされることになったが。

黒居の方はいつの間にかいなくなっていた。ズルい!






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