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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第一章 春
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手がかり

俺たちは次の朝早くに青山の家に集合した。

青山と青山の父が予想以上の頑張りを見せてくれたようだ。

連絡が早朝に来たものの、俺はすぐに電話に飛びついたのだった。


今日は日曜なので学校もない。

・・・あったところで学校なんていってる場合じゃねーけどな。


昨日の夜から、今まで生きた心地がしなかった。

これほどまでに時間の流れが遅く感じたことはない。

・・結局一睡もできなかったしな。


ユウの様子を見ると随分と憔悴していた。

肉親が誘拐されたとなっては心中穏やかじゃいられねーよな。


俺でさえそうなんだから。

集まったみんなの表情は暗い。


全員が揃ったところで青山が早速口を開く。


「2つ報告することがあるわ」


全員の意識が青山に集中する。


「一つ目、、残念だけれど、いえ、私としてはよかったのだけど、ウチの会社の関係者で、容疑が掛けられるような人物は一人もいなかったわ。監視カメラのデータにアクセスできる人間には全てアリバイがあった。アクセスするには社内の端末からログインする必要があるのだけど、それに触った人はいなかった。」


「・・・そう。。」


香織姉が複雑そうな顔をする。

喜んでいいのか、喜ばないほうがいいのか微妙なところだ。

青山グループに犯罪者がいないのは良かったが、大きな足がかりが消えてしまったわけだしな。


「二つ目。ウチの会社関係者に監視カメラのデータにアクセスした人間はいなかったけど、セキュリティ会社のサーバーにアクセスが無かったわけじゃないわ。」


「ど、どういうことッスかそれ?」


俺もわからん。どういうことだ?


「つまり、誰かが映像を消すためにサーバーにログインしたのは間違いないっていうこと。それもかなり上位の権限でログインしてたみたい。」


「その誰かというのは、まだわからないわけだな?」


メガネを指で押し上げ、アキラが問いかける。


「・・ええ、でも前にも言ったように、保存されているサーバーのセキュリティは強固なもの、なのでハッキングは難しい。そして、ウチの会社からのアクセスはない。となれば。。」


「ま、、まさか。。。」


香織姉が何かに気づいたのか驚愕の表情を浮かべる。

どういうことだってばよ。


「セキュリティ会社の人間の犯行。ということになるかな?」


マコトがしたり顔でそう言った。

つまり、監視カメラを提供して、セキュリティシステムを担っている会社自体による犯行。ってことか。。

セキュリティを提供している会社が自分で破るとか、、まじかよ。。


青山が静かに頷いた。


「けど、これもあくまで推測。それにそこのセキュリティ会社はウチのグループではないわ。警察でもない私や、私の父の声ひとつで容疑者探しっていうのは難しいわね。。。」


「け、けど、探さなきゃだめなんじゃないの・・!?」


泣きそうになって叫ぶハルカ。そうだよ、ここまでわかってるんだ。

動かない手はねぇ。


「せめて、、せめてもう少し容疑者が絞れれば。。」


もう少しか。。何か手がかりはないのか。

昨日から俺の頭の中には何かが引っかかっている。


残っていない録画データ。

セキュリティ会社の人間の犯行。

突然消えたコウ。

ヨヨポートでの出来事。。。


・・・



・・・・ヨヨポート・・・?


そういえば、、

・・確証はない。だけど、無関係だとは思えない。

俺にはひとつだけ心当たりがあった。


「・・・もう一度、ヨヨポートに行こう。」


怪訝そうな顔でみんながこっちを見る。


「確かめたいことがあるんだ。」




俺たちはすぐにヨヨポートにやってきた。正確にはヨヨポートの警備員室だが。

まだオープンには早い時間だが、問題ない。


「おや、君たちは昨日の、、」


おっさん、確かめてもらいたいことがある。

監視カメラの映像だ。


「監視カメラの映像は保存されてないのではなかったのか?」


「ああ、昨日の映像だけ(・・・・・・・)な。」

ニヤリと笑ってアキラに返す。


つまり、それ以前の映像は残っているはずだ。

俺が見たい映像は3月の下旬、、コウが女になって初めてヨヨポートに下着なんかを買いに行きた日の映像だ。

その日、下着屋の外で待っていた俺は不審な人物を目撃していた。

どうにも引っかかってたのはそいつの存在だ。そいつは買い物もせず、食い入るようにコウを離れたところから見ていたからな。無関係とは思えない。


「もしかして、そいつが犯人かもしれない・・?」


ハルカが俺の意図に気づいたようだ。そう。もしかしたら、だけどな。

おっさんが当時の映像を一覧から見つけ出した。

対象のカメラはそう、下着屋付近だ。

・・あった、これだ!


それを再生してもらう。


するとそこには40代くらいの男が店の周囲をウロウロし、中を覗き込んでいる様子が映されていた。

もう少し画像を拡大してもらう。


「・・・あっ!!」


青山が何かに気づいたようだ。もしかしてと思ったが、、見覚えがあるか?


「ええ、、まさか、、アキツグ、あんたの予想ピタリと的中したわね・・・」


ニヤリと青山が返す。


「昔パパに連れられて行った、社長やら重役のパーティがあったのだけど、そこでこの人に会ったわ。少し当時より老けてるけど間違いない。」


「コイツは・・誰なんスか・・」


「セキュリティ会社のCEO、最高責任者よ。」


!!


全員が息を飲む。

まさか、上位の人間だとは思ったが、てっぺんのヤツが実行犯なんてな。

お偉いさんが実行犯てことは、もしかして単独犯か?

だったら、コイツの居場所さえ抑えちまえば、コウを取り戻せるかもしれない。


青山、こいつの居場所は分かるか?家とか。


「ええ、正直嫌でしょうがないのだけれども、ウチの近所よ。あの辺りは高級住宅街だし、人通りも多くないからある意味犯罪には適してるかもしれない。。はぁ。。当然辺り一体のセキュリティ体制はあるのだけれども、そのセキュリティもコイツが仕掛けたものだからね、、やりたい放題でしょうよ。。コイツ捕まえたら、さっさと全システムを別の会社に切り替えなきゃ。。いえ、いっそ、うちにセキュリティの部門を立ち上げて・・・」


OK、それはわかった。もういい。

とりあえずこいつの顔をスマホで撮っておく。


犯人とコウはセキュリティ会社CEOの家に可能性が高い。

もしかしたら別荘かなんかもあるかもしれねーが、手がかりが残されている可能性もある。


と、そこで一つ大事なことに気づく、たしか犯人の残したメモには『警察に連絡するな。見ているぞ。』とあった。この見ているってのはもしかして監視カメラ越しに見ているということか?


「!・・その可能性が高いわね・・。」


とすると、この警備員室に仕掛けられたカメラも見られているかもしれない。


「そうね、でもこの手のカメラにはマイクが仕込まれてないから、映像だけ。ただの高校生がちょっとドタバタしてくるらいにしか見えないと思うわ。・・警察でも呼べば警戒されるでしょうけど。それに今はかなり早朝だから、もしかしたら見てない、なんてこともあるかもしれない。。期待薄だけど。」


そうだな、ひとまず情報は集まった。一旦外に出て監視カメラのない場所へ行くぞ。

俺たちはおっさんにお礼を言って怪しまれないように落胆した風を装い外に出た。

俺の大根っぷりがひどい。



外に出て、素早く建物の陰に隠れる。


マコト、この犯人の居場所なんかは見えたりしないか?

俺は先ほど撮った写真をスマホに表示し、マコトに見せる。


「人探しってことなら、任せておくれ。コウくんじゃなければ大体わかるさ。」


マコトが手早くコンクリートの上に、魔法陣の描かれた布を広げる。

俺は写真を表示したままのスマホをマコトに手渡し、マコトがそいつを陣の中央に配置する。

そして懐から複数の宝石を取り出し、スマホを囲むように5箇所に並べる。占いの種類に合わせて宝石の種類や配置が変わるらしい。


「ここからは企業秘密なんでね、ユウくん、ハルカくんは耳を塞いで向こうを向いていてくれるかい。」


なんで俺たちだけ、、という顔をしてるが、まあ事情があるんだよ。悪く思うな。

二人が後ろを向いたところでマコトが占いを実行する。


・・・いや、正確には、「魔法」か。。


「はは。魔法なんて大した物じゃないよ。ちょっと高度なだけの占いさ。」


マコトが目を閉じ両方の掌を一度真ん中で合わせ、それから降ろして上に返し、一言呟く。


「探索の儀、開始。頼むよ精霊たち。」


魔法陣に並べられた5つの宝石が淡く光を放つ。

初めてこいつの「本当の占い」を見たときは我が目を疑ったもんだ。だけど目の前で起きていることは紛れもない事実。この世界には皆が知らないだけで、こういう力が存在するのだ。


陣の中央に置かれたスマホが数ミリ浮き上がり、くるくると回転しだす。

まるでコンパスのように動き、一定の方向を指し示すように止まる。


「この方角にいるんだな?」


「ああ、間違いないよ。」


「ふぅ、うちの方向で間違いないようね。」


決定的だ。犯人は自宅にいる。

ま、これで実はコイツが無関係だったってことも無くはないんだろうけど、そんときゃそん時だ。


行くぞ!



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