消失
・・おかしい。30分以上もコウが帰ってこねえ。
飲みすぎたみたいだし、お腹でも下してるのかもしれないなーと思ったが、それにしても長いな。
あいつは結構気遣い屋なので連絡の一つも来そうなもんだけど。
手元のスマホをいじってメッセージを確認する、が、
これといった通知はない。
送ってみるか。
『うん◯か?』
女の子に送るようなメッセージじゃないが、あいつならまぁ、許してくれるだろう。
10分ほど待っても返事が帰ってこない。。既読にもならない。
ユウとハルカも不安そうな顔をしている。
ハルカに視線を送ると、意図を汲み取ったのか頷いて返してきた。
「あたし、ちょっと見てくるよ。」
「ああ、頼むわ。」
ハルカが席を立つ。
んー、あんまり長居しても迷惑だしな。会計して外にいるか。
ハルカとコウの荷物を持って会計する。
あ、ユウは自分で払えよ。
「・・わかってますよ・・」
外で待つと、ハルカがすぐに戻ってきた。
だけど様子がおかしい。
・・なんだか嫌な予感がする。
「あ、兄貴!こ、これ、トイレの洗面所に落ちてて、、」
ハルカが手に持ってたのは、俺が今日プレゼントした花の髪留めだった。
髪留め、だけ、、。コウ、コウはどこに?
「・・いなかった。トイレ全部みたけど、いなかった。念のため男子トイレも。」
お前、、いや、突っ込んでる場合じゃない。
コウがいなくなった?あいつだって子供じゃないんだから、なんの連絡も出さず、しかも髪留めを落として何処かへ行ってしまうだろうか?
ありえない。
「・・姉貴、、まさか誘拐?」
ユウがそう呟く。
誘拐?誰が何のために・・。
確かにコウはとびっきり可愛いとは思うが、こんな人混みの中でわざわざ誘拐するだろうか?
監視カメラだってあるはずだ。だが、、
「まだ、誘拐と決まったわけじゃねーけど、、可能性がないわけじゃねえな。。」
ハルカが青ざめている。
膝が崩れそうなところをユウが支えてくれていた。
俺自身もどうにかなりそうだ。
ひとまず場内アナウンスをして、あとあいつらにも連絡をしておこう。
きっと力になってくれるはずだ。
俺は素早くここにいない残りの4人にメッセージを送る。
すぐに返事が帰ってきた。
『状況はわかった。すぐにそちらに向かおう。警察へは詳細が分かり次第すぐに連絡しよう。』
『僕もすぐにそっちにいくよ。きっと役に立ってみせよう。』
『私は念のためコウちゃんのお家に連絡を入れてみるわ。それとなく聞いてみる。混乱させても悪いからね。』
『私もすぐそっちいくわ。男なら取り乱さずにどっしり構えてなさいよ!』
本当に頼りになる。
俺にはもったいないくらいの友人たちだ。
そうだな、何があっても動けるように、落ち着いて構えておこう。
アナウンスをしたが、やはりコウが来る様子はない。
「あ!こ、これ・・!」
ハルカが何かに気づいた。
どうしたんだ?
髪留めに小さな紙片が挟まっていた。
・・メモ?
そこには一言
『警察に連絡するな。見ているぞ。』
とだけ書かれていた。
ぞわっと身体中の毛が逆立つ。
・・コウ・・!!
これは、間違いない、コウは何者かに誘拐されてしまった。。
勇み足で警察に連絡をしなかったアキラの判断は正しかったようだ。
犯人がどこまで俺たちの動きがわかるのか知らないが下手なことはできない。。
ギリリ・・
気がつけば掌から血が出ていた。
苛立ちのあまり強く握りしめてしまったらしい。
「・・・兄貴・・・」
ハルカ、、心配すんな、コウは絶対見つける。
俺なら、俺たちならきっと見つけられるはずだ!
やがて4人がショッピングモールまで集まった。
俺たちは4人に事情を説明した。
「なんということだ、、コウ、、」
「・・コウちゃん・・」
なんとかしてコウを見つけないと、何をされるかわからない。
事態は一刻を争う。
「マコト、占いで何か見えねーか?」
マコトは目をつぶって首を振る。
「だめなんだ。女の子になってからのコウくんの星は見ることができなくなっているんだ。」
そう、そうだった。そのことは知っていたが、やっぱだめか。。
「あ、監視カメラの映像を見せてもらえないかしら?」
「うーむ、一般人が行っても難しいだろうな。。」
そうだろうな。警察ならともかく、ただの高校生の俺たちに監視カメラの映像を見せてくれるとは思えない。
「・・多分、見せてもらえると思う。」
!?なんだと!青山本当か?
「うん、言うつもりもなかったけど実はここのショッピングモールうちの会社の系列なんだよね。」
・・まじか、、お前んちとんでもねえな!
だけどこれを使わない手はない。
手段を選んでいる暇なんてないのだ。
俺たちは青山の権力を行使して無理やり監視カメラの映像を見せてもらうことに成功した。
・・が、
「あれ、おかしいですな、、今日の監視カメラの映像が撮れてませんなぁ。」
警備員のおっさんが言うには前日までの映像は無事だが、今日の監視カメラの映像が保存されていないらしい。
「んんー、カメラ自体は正常に動いているようですが、、録画データが見つかりませんな。」
録画データがない?どういうことだ?
「ということは、映ってはいたが、録画が出来てないか、、、後から消されたということかい?」
マコトが推測を述べる。
後から消す?一体誰が?何のために?
「そんなん一つに決まってるでしょ。犯人が、自分の足取りを追わせないためによ・・」
ギリっと青山が顔を歪める。
てことは犯人はこのショッピングモールの関係者?
「どうかしら、、もしかしたら外からクラッキングしたのかもしれないわ。ここのネットワークセキュリティがどうなっているか知らないけれど。」
ちらりと警備員のおっさんの方を見るが、さぁ?よくわからないですなぁ。という顔をしている。
情報セキュリティの仕組みとかちゃんとわかってないんだろう。雇われ警備員なんて実際そんなものかもしれない。。
「えっと、確か前にパパに聞いた話だと、、ここの監視カメラの映像はセキュリティ会社のサーバーに保存されていて、リアルタイムで送信してるからローカル環境にはデータが残っていないはずよ。」
「そうなると、データがないというのは、サーバーのデータが消されたということか?ここからデータの消去は可能なんですか?」
おっさんにアキラが尋ねるが、首を横に振る。
彼らには参照する権限はあっても、削除や変更は不可能らしい。
そうすると警備員関係の誰かの犯行という線は消える。
「じゃあ、ここを管理している上位の人がデータを消したってこと?」
ハルカが首をかしげる。
「そうね、、考えたくないけどウチの会社の内部の誰か、か、または外部の誰かがサーバーをハッキングして消去したか、ね。・・けど、セキュリティ会社のサーバーが外から簡単に侵入できるとはちょっと思えない。。」
青山が苦虫を噛み潰したような顔をする。
つまり、青山の会社の誰かが行ったという可能性が高いということか。。。
「今すぐには無理だけど、パパに連絡を取って監視カメラの映像の編集権限を持つ人物とアリバイを調査してもらうわ。きっとそこまで多くはないはずだけど、、全員にすぐ連絡がつくかわからない。そうね、明日の昼までにはなんとかする。」
「貴方ばかりに頼ってごめんなさい青山さん。・・でもお願い。。」
香織姉が青山のことを抱きしめる。
明日の昼までに、か。。
くそっ、俺たちにも何かできることはねーのか・・!




