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美少女男子高校生の日常  作者: くろめる
第一章 春
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帰宅

一通り買い物が済み、今日は解散することになった。


すでに大分日が傾き、あたりは夕闇に包まれている。


これから家に帰るわけだが、、俺の気分は沈んでいた。

電車の手摺(てすり)に捕まり、表情を暗くしていると、アキツグが様子を伺ってきた。


「どうした?」


こいつとは地元が一緒なので帰りの電車も一緒だ。

・・どうしたってそりゃ・・


この時間、家に帰れば間違いなく母がいることだろう。

すっかりお嬢さんになってしまったこの現状を説明しなくてはならない。


16年間大切に育ててきた息子が突然娘になったと知ったら、母はショックを受けてしまうだろう。

・・・ああ、一体なんて説明したものか。


「そんなに気にすることないんじゃねぇか?・・確かに性別は変わったかもしれないけど、コウはコウだろ。それにおばさんはそういうの素直に受け入れてくれそうだけどな。」


分かったようなことを言ってくれる。

確かに母は楽観的で、どこか飄々としているが。。


親に内緒で性転換手術して、初めて実家に帰るどこかの芸能人の心境だ。


俺の場合手術したわけではないし、元に戻れる可能性もあるのだけれど。

・・・あれ?手術されてないよな?俺の意識がないうちに勝手に・・なんて。。

いやいや、あるわけない。こんなに短時間で綺麗さっぱり手術跡が無くなるなんてありえない。


そう考えると益々俺が女になった方法がわからないな。某頭脳は大人な名探偵みたいな薬でも飲まされたのだろうか。


はぁー。鬱だー。


どんよりした気分のまま駅についてしまった。

アキツグが送ってくれると言っていたが、あいつの家は反対方向だし、遠慮しておいた。


家に着くまでに少しでも気持ちを落ち着けたいしな。


家の側までくると、塀の外から中の様子を伺ってみる。

明かりが付いている。


ううーやだなー。先延ばしにできるもんでもないから、行くしかないんだけどさーー。


・・・ふぅ。よし。


ガチャっと玄関を開けて中を伺う。


あ、父さんの靴だ。今日帰ってきてるんだ。

いつもは喜ばしいことなのに、なんだか今日は「ちっ、よりによって・・」という気分になる。


物音を聞きつけたのか、弟のユウが顔を出してくる。


「お、アニキおかえり、、、って、、その格好・・・」


「あ、ああ、ただいま、、えっと、その友達が勧めてくれて・・・」


弟があんぐりとして、固まっている。

・・・うう、いきなりアニキが女装して帰って来たらそりゃ、そうなるよな。。


「めっちゃかわいい・・・!すげぇ似合ってる。」


顔を赤くしてそんなことを言ってきた。

マコトといいお前といい、どうしてそんなに素直に可愛いなんて言えるんだ!

てか、俺、可愛いのか・・?


可愛いと言われるのは微妙な気持ちになるはずだったのに、なんだか今は満更でもない気分だ。

照れてしまう。


そんなやりとりをしてたら、なかなか戻ってこないユウを訝しんだのか、母が出てきてしまった。


「あら?ユウのお友達・・・・・」


「・・・た、ただいま、、母さん・・・」


「・・・コウ?」


はい。コウです。あなたの自慢の16歳の息子です。

一発でわかるのか。流石母である。


緊張半分関心半分で次の母の言葉を待っていたら

なぜかサムズアップされた。


「コウ。可愛くなったわね・・!」


・・はい?




促されるまま食卓に着いた。


事のあらましを伺うと、どうやらユウが事前に説明していてくれたらしい。

最初は何言ってんだこいつ?って思っていたそうだが、なんだか「女になったコウ」の姿を想像し始めて、一目見たいとなってしまったそうだ。


ちなみに父もそうらしい。

長い人生そんなこともあるんじゃないか?というなんともお気楽なお言葉を頂いた。


うちの家族、順応性が高すぎである。


「俺とユウが一緒に騙してるとか思わなかったのか?」


「そんなん、あんたの顔見ればすぐわかるわよ。あんたがコウだって。私譲りの超絶美少女じゃない!」


あんたのその自信はどこからくるのか。


確かに俺は母親似だ。うちの母もパッと見中学生に見えてしまうほどの童顔である。

背も俺と同じくらい。母と歩いていると「姉妹で買い物ですか?いいですね!」何て言われる。

姉妹でもないし、息子と母親なんだが。。


この胸も本物のようね。といって俺の乳を揉むんじゃない。あのやめてください。


ちらりと父の顔を見るとどうやら若い頃の母を思い出しているようだ。だらしない顔をしている。


「母さんも若い頃は、お前に似た美少女でな、もー、父さん周りから羨ましがられたもんだぞ〜。あ、今でももちろん可愛いけどな!」


お暑いですな。まだ3月だってのに暑さでやられそうだよ。


「それにしてもコウ、あんた本当に女の子になっちゃったのねぇ・・。まぁ正直なところ、めちゃくちゃ美少女顏だったから女の子に産んであげられば・・!とは思ってたけど」


からからと笑う母。

何だろうこの結果オーライ感。悩んでいた自分がバカみたいだ。


「さて食事も終わったし、どうだ、コウ。久しぶりに父さんと一緒に風呂にでも入らないか?」


父よ、爽やかな家族の付き合いと見せかけてるのかもしれないが、目線が正直すぎるぞ。

あと鼻の下伸びすぎ。


「はい。お父さんは娘の胸ばかり見てないで、さっさと入る!」


母にぺちんっと後頭部を叩かれている。

まったく・・、息子に欲情すんな!


こんなんじゃ裸でウロウロできないじゃないか。


「・・・アニキ、それは流石に自重しとけよ・・・」


えー。だって風呂上がり暑いじゃんよ。


「なんだよユウ。お前も俺の体が気になるのかー?」


なんつって。意地悪く胸を寄せてニヤニヤしてみる。

うわ。俺悪女っぽい。ほれほれ、おっぱいがええのんか?


なんてやってたら真っ赤になって2階に行ってしまった。

・・・ありゃりゃ、からかいすぎて怒っちゃったかな?


「コウー。あんたもバカなことやってんじゃないの。」


はーい。ごめんなさい。


「それにしても、すぐに男に戻れるかどうかもわからないんでしょ?必要なものは買ってあげるし、一応これでも女人生の先輩なんだから、なんかあったら相談しなさい。・・・さしあたっては一ヶ月以内に泣きつくことになるかも・・ね?」


一ヶ月以内・・?なんのことだろう。

ぼーっと考えながらご飯を食べていたら不吉なニュースが耳に入る。


「・・次のニュースをお伝えします。このところF市で中学生女子を狙った悪質な犯行が・・」


F市ってここじゃないか。中学生狙うとかとんだロリコン野郎だな。

・・・マコトじゃないだろうな。

まだ犯人捕まってないのかー。さっさと捕まえて欲しいものだ。自分より弱い相手しか襲わないなんて卑怯な犯人だな。もぐもぐ。あ、母さんおかわり。


今日のご飯はハンバーグだった。ご飯が進みますなぁ。


お茶碗2杯を平らげたところで、そっと箸を置いた。

テーブルの上に残っていた食器を片付け、流しに持って行って洗う。

買ったばかりの服を汚したくないので、一応エプロンも付ける。


「あんた、いいお嫁さんになりそうねぇ。。」


なんて母がしみじみつぶやいている。

・・ご飯作ってもらったんだから、後片付けくらいやるさ。


ニヤニヤした顔でこっちを見るんじゃない。。


さー、父さんが上がったら俺もお風呂もらおうかな。

慣れない女物を着ているとそれだけで疲れてしまう。さっさと脱ぎ捨ててゆっくりしたい。


だって、スカートだぞ、スカート。これうっかりするとすぐ風で捲れあがってしまう。

今日一回だけアキツグの前で盛大に風に吹かれてしまった。


あいつは見てないって言ってたけど、絶対見たと思う。

証拠にずっと鼻抑えてたし。。


くそう、なんだか不公平な気がする!

女子は偉いよ・・オシャレのために頑張ってあんな格好をして。。


俺もいずれは慣れる日が来るのだろうか。






ご都合主義万歳です。

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