表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/98

021 回復アイテム <04/03(水)AM 11:03>

 はじまりの街[スパデズ]周辺で唯一のダンジョン、[山の洞窟]の1層を探索中の俺達は、通路の先の広間にて山ゾック(斧)LV6 2体、ヒキ蝙蝠コウモリLV4 3体を発見した、そして非アクティブモンスターのヒキ蝙蝠3体は無視し、アクティブモンスターの山ゾック(斧)2体をどうにか討伐したのだった。



「ユウちゃん大丈夫だった~?」

 ツカサさんが、すでに俺の治癒魔法によって回復済みではあるが、右の山ゾック(斧)の強烈なショルダータックルを、モロに食らってしまったユウコさんを心配している。


「ありがとマドちゃん、もう大丈夫だよ。すぐ回復してもらったし、でもちょっと迂闊うかつだったかな」

 「………」なんとも言えないところだろう、シノブさんのクリティカルヒットによって、左の山ゾックが大きくのけぞっていた絶好のチャンスだったし、実際それでトドメをさせたのだし、2体健在のままであれば当然ながら、モンスターからの攻撃頻度も倍になる。


「でもやっぱり回復してもらえると助かりますね、ポーションは高いし、あまり効かないし、続けて使用出来ませんから」

「いえ、まぁ回復しか出来ないですから」


 「………」TJOには回復アイテムは、薬草かポーションぐらいしか無い、一般に言うところのハイポーション、エリクサー等というモノが、ポーション-9~+9の品質になっているためだ。


 ざっと簡単にあげると(色は鑑定後のアイテムネームカラーに由来、単なる通称)

-9~-1 灰ポーション、ゴミ、毒、HPが減る、-7以下はMPまで減る。ポーション(不確定名)を飲むとひどい目にあう事も

0    白ポーション、基本、普通 200G

+1~+3 青ポーション、少し良質なポーション すべてがそこそこ

+4~+6 緑ポーション、ハイポーションと呼ばれるレベル、かなりの回復量だが高価

+7~+8 紫ポーション、HP大幅回復に加え、MPもそこそこ回復させる、非常に高価

+9   虹ポーション、HP/MP全快、完全なる品、よほどのボスでしか使用されないほど超高価


※薬草は品質0で固定なので、大量に所持しておいて、戦闘後に回復の調整に使用される程度、今のユウコさん換算で5%回復するかどうか、戦闘中に使用するには無理がある。


 それで高くてあまり効かない、というのは基本の”白ポーション”200Gの事で、今のユウコさんのMAXHP量であれば、白ポーション1つで20%程度であろう。

 つまり先ほどの戦闘ダメージを全回復させると約3本、600Gも消費する事になる。得られたGが、196G、207G、203Gだったので、ドロップの青銅の斧2本しか儲けが無くなってしまう。

 ちなみにTJOで”ハイポーション”と言うと、”灰ポーション”(ゴミ)と混同するので、ハイポーションといった名称などはあまり使われず、もっぱら”色”か品質で呼ばれる。


 一応”通常状態”中は、HP/MPはゆっくりと微回復するのであるが(戦闘状態中は神経が高ぶっているから回復しなくなる、とかいう設定だ)、アクティブモンスターが徘徊する様な場所では、そんなのんきな事も言っていられないので、戦闘後はすみやかに回復する事になる。

(一方で、はじまりの街[スパデズ]南口では、バルーンラビットLV1を倒しては、回復アイテム節約のために、その場で座りこんで回復を待つ、プレイヤーの姿がよく見かけられる)

※宿屋では3時間以上の睡眠(休憩)をとれば全快する。


 そんな”回復”が使い放題なのだ、”みならい僧侶”系だって凄い性能なのだ・・・が、今までの空気感を見れば、おわかりのように、ゲーム時代は、そのなんというか、お荷物的な?、おそらくミケネコが、俺に対して思ってるような・・・そんな微妙な感じになって、それに耐えられなくなった者が、キャラクターを削除してやり直す→さらに僧侶系が減るという悪循環に。(TJOは1アカウント、1キャラのみだ。この辺については、また今後語るかもしれない)


「ご主人さま~?」

 いかん、久々に長考してしまった。ミケネコさんが居て助かる。せまいひたいを少しコリコリする。ミケネコはくすぐったそうだ。


「・・・ユウちゃん、あそこ」

 シノブさんが指差した方を見ると、壁際に宝箱だ・・・しかしあそこは・・・


「シノちゃん、もしかして?」

「・・・うん・・・ピット(落とし穴)LV18の、向こうにある」


「うわ~、いやらしい~」

「ひどいですねぇ」

 うひょ~宝箱だ~、ヒュー、ストーン である。ダンジョンマスター意地が悪い。いや・・・たまたまピットの向こうに、宝箱がPOPしたから残ったままなのか?


「無理なら諦めてもいいけど」

「・・・大丈夫」

「シノちゃ~ん、無理しないでね~」

 シノブさんは1人で、ピットのあると思われるきわを、壁にそって慎重に移動している、一応俺は万が一に備えて、すぐに回復出来るように、シノブさんを治癒範囲に捉えて準備しておく。


 戦闘前にシノブさんが 探知:罠[トラップディテクション]で、半径15m範囲の罠の存在、名称を探知したのだが、その際に発見されたトラップは、名称とともに”発見した本人には”うっすらと半透明で表示されて常に見えている。そのため大体の構造などもわかり、解除や回避もしやすいというわけだ。斥候すごい。

 俺達が固唾かたずをのんで見守る中、シノブさんは危なげなく宝箱の前に辿り着いた。


「・・・分析:罠[トラップアナライズ]」

 シノブさんが術を使用すると、前回同様に宝箱の上面部から下底部に向けて”光る板状のモノ”がス~っと降りていく。


「・・・罠は”仕掛け弓矢”、罠LVは12」

 罠LV12か、シノブさんなら半減して罠LV6になるから楽勝かな。シノブさんもそう判断したのかそのまま解除に移った。


「・・・解除」

キンッ!

 また謎の金属音(罠解除成功音)がして、宝箱の前面の錠前がポトリと地面に落ち、そのまま錠前は霞んで消滅した。


 シノブさんは宝箱をそっと開けて、中から何かを取り出して腰にさし、またゆっくりとピットのあると思われるきわを、壁にそって慎重に移動して帰ってきた。


「お疲れ様、シノちゃん」

「シノちゃん、おつかれ~」

「お見事です(先生)」

「しのぶさん、すご~い」

「・・・らくしょう」

 シノブさんはみんなの方を向いて、やはり少し照れながらVサインで答えた。そして腰に挿して取ってきたモノを、みんなの前に差し出す。


「・・・これ」

「これは、鉄のメイス?」

「ですねぇ」

「う~ん、まぁまぁ~?」

 危険な所にあるから、苦労して入手したから、良い、高い物ばかりとは限らない。なんと言っても”あの嫌がらせの様な場所”にあったのは多分たまたまだろう。罠LV的には12だから、鉄のメイス(14,000G)は妥当なところだ。


 ユウコさんが1度チラッと、こちらを確認するように見てきたので、「問題無いですよ、そちらでどうぞ」という風に掌を上にして、ユウコさんの方に水平にして動かし首を縦に振った。

「とにかく宝箱2個目だね、マドちゃんお願い」

「それじゃ持っとくね~」

 そう言ってシノブさんから”鉄のメイス”を受け取ったツカサさんは、そのままインベントリに収納した。


 2個目の宝箱も無事回収し、広間を見渡してもヒキ蝙蝠が3体天井にぶら下がっているだけだ。宝箱はとっくに消滅した。入ってきた通路から見て左手にまた通路が続いている。


「この通路しか無いみたいですし、進んでみましょう」

 ユウコさんもそう判断したのだろう。俺達にも異存はない。また同じフォーメーションで緩やかに右に曲がる通路を慎重に進む。


 しばらく前進すると大きく急に右に曲がっている。先の様子がわからないので、代表してユウコさんが右壁の陰から、そっと向こうの様子を覗いて戻ってくる。


「山ゾック(斧)LV6 が1体居ますね、先の方はまた左に曲がっていて見えません」

 山ゾック(斧)1体ならいい獲物、かな?


「シノちゃん、また罠があるか調べてくれる?」

「・・・うん、探知:罠[トラップディテクション]」

 この付近で戦闘しても問題が無いか、シノブさんに罠を調べてもらう。


「・・・半径15m範囲で、罠はさっきの(広間の)ピットのみ」

 位置的にこの右の壁の向こうは、さっきの広間になる。あのピット(落とし穴)が、また 探知:罠[トラップディテクション]に引っかかったのだろう。


「ありがと、えっと私がFA〔※1〕を取って・・・後はさっきと同じ感じでいい?」

「いいんじゃな~い?」

「・・・うん」

「いいと思います」


「よし、それじゃ行くよっ」

 ユウコさんが”戦闘状態”に切り替え、戦闘中BGMが聞こえはじめる。”青銅の盾”と”鉄の長剣”を構えて通路を曲がり、足早に山ゾック(斧)に突撃する。


 今回も確実にFAを取るためだろう、ユウコさんは”青銅の盾”を左手で構えた状態で、右手の”鉄の長剣”を引き、山ゾックが避けにくい腹部を目掛けて、隙の少ないモーションで突き刺す。


「GUAAAAAA」

 突然腹部を刺された山ゾックが、怒声をあげてユウコさんをにらみつける。FAを取ったユウコさんは”青銅の盾”を構えて反撃に備えている。


「・・・えぃ」

 ユウコさんにヘイト(憎しみ)が集中したと思った瞬間、山ゾックの背後にまわりこんでいたシノブさんが”鉄の刀”を逆手に構えて、無防備な山ゾックの背中を横一文字に切り裂いた。


「UGAAA!」

 背中を斬られ怯んだ山ゾックだったが、やはり最初に攻撃(FA)をしてきた、憎い(ヘイトが高い)ユウコさんに対して、右手に持った斧を振りかぶる。そこへ、


「シノちゃん、はなれて~・・・火球[ファイヤーボール]」

 ツカサさんの声を聞いて、シノブさんがサッと離脱したのを確認すると、そのまま無防備な山ゾックの背中を目掛けて、火球[ファイヤーボール]が唱えられた。ツカサさんの”樫の杖”の先から、ソフトボール大の火の玉が直進し、山ゾックの背中に直撃して燃え上がる。


「ACYAAA!」

 よし、いい調子だ。そう思った瞬間・・・シノブさんが”ハッ!”とした様な表情で叫んだ。


「・・・ユウちゃんっ!通路の向こうから2体来る!」


 シノブさんの”みならい斥候”の常時発動パッシブスキル、警報:急襲[レイドアラート]が、通路の向こうでこちらの物音(戦闘音など)に気付き、”戦闘状態”に切り替えたらしい2体の存在を、いち早く察知した。

LV:6(非公開)

職業:みならい僧侶(偽装公開)(みならい僧侶)

サポートペット:ミケネコ/三毛猫型(雌)

所持金:525G

武器:なし

防具:布の服

所持品:8/50 初心者用道具セット(小)、干し肉×9、バリ好きー(お得用)75%、青銅の長剣、樽(中)95%、コップ(木)、サクランボ×1、鋼のナイフ



〔※1〕TJOにおいて、最初の攻撃を、ファーストアタック(略されてFAと呼ばれている)という。この最初の攻撃(FA)をしたプレイヤーは、そのモンスター(達)からのヘイト(憎しみ)が一際高く、基本的に生半可な事では、他のプレイヤーにターゲット(攻撃目標)が移動する事はない。(一部に移り気なモンスター等も存在するので絶対ではない)


分析:罠[トラップアナライズ] 宝箱等に仕掛けられた罠の種類と罠LVを識別し、罠LVを半減させる(小数点以下切捨て)

  補足:ミミックだった場合は、そのミミックのLVも識別する、ただしミミックのLVは半減出来ない。


火球[ファイヤーボール] ソフトボール大の火球を作り出し、対象1体にぶつけて炎と衝撃によるダメージを与える。


警報:急襲[レイドアラート][P] 半径15m範囲の”戦闘状態”の存在を察知する。



「やっぱり しのぶさんすご~い」

「もう全部シノブさんで、いいんじゃないかな」

「ご主人さま~、そのいきやよし~!」

「違う、そうじゃない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ