85話 収穫の時。
そんなある日、再びいつものメンバーに集まってもらった。
「今日は、また、皆に見てもらいたいものがある」
人数分コピーした冊子を配る。
お茶も用意済みだ。
「まずは、読んでみて欲しい」
それぞれがお茶を飲みつつ読み進める。
「「「「ぶっはぁ」」」」
開拓民チーム4人が口に含んだお茶を吹き出した。
「汚いですわね、何ですの?」
エレメアの毛虫目が俺以外に向くのを初めて見たな。まあ、それは置いておいて。
「新作ですねぇ。今回は清書前ですか」
「いや、それなりに綺麗な字だし、そのままでいいかな、と思っている」
「あなたの書いた本ではないってことね。でも、この字って」
「おっと、そこまで。作者については詮索無用だ。本人の許可をとっていない」
なんだよな。
「その上で、感想を聞きたい。主に、売れそうかどうか」
大事なんだよ、他人の感想って。
「あたしは好きだね、特にいろんな街を渡り歩いて冒険するってのが良い」
シンディはそっちに行ったか。
「冒険するのも良いですけど、そこに住む人たちとのふれあいをメインにしたほうも面白いですよ。いろんな国に旅行している気分に浸れます」
アイリスは、そんな願望があるのかね。
「庭師の娘が大事件に巻き込まれて行くストーリーも、身近で非日常的な感じが良いと思うわ」
「でも、私はやっぱり、メイドの娘と貴族との道ならぬ恋の話が気に入りましたわ」
「それな」
「たしかに、ひとつ抜けている感じがします」
領主婦人もうんうんと同意している。
さて、ここまで来ればお解りだろう。
開拓民チームの4人、夜な夜な自分達の自作小説を持ち寄ってお互いに読ませ合っていたのだ。
それを、こっそり拝借して製本させてもらった次第。
どの作品を誰が書いたかは、想像にお任せするが、意外だよねぇ。
本人に無許可で皆に見せたのは、正直悪かったと思っているが、俺としては後押しをしたかったのだよ。
「もちろん、書いた本人が絶対に嫌なら売るつもりはないし、作者名を秘密にするというやり方もある。ただ、せっかくだから売れないかな、と思ってるんだ」
数を増やしたいんだよ、数を。
こうやって、いろんな人が書いている、と示すことで、自分も書いてみたい、という気持ちも育てることができるだろう。
なお、一緒に置いてあった年齢制限付きの方はそっとしてあるからね。
さすがに、まだ早い。




