79話 使わない刀はただの刀だ。
「だんな、こっちだこっち」
シンディに誘われて街の外へ。
外壁付近の木が伐採されて、広場になっている。
簡単な木柵で囲ってあるようだ。
そこに、30人くらいの人が集まっている。
正面に立つのはドラスレ君。
「皆、集まってくれて感謝する。バードマウント領主であり、自警団の責任者でもあるノスト=グランバードだ」
ドラスレ君の挨拶に、男達からの歓声が挙がる。
「自警団発足に合わせて、定期的に訓練の場を設けることとなった。自警団員の結束と技術向上、及び、希望する町民に対しては体力の向上、未来の自警団員になるための基礎訓練も兼ねている」
これに答える幼めの声。
自警団青年部と幼年部ってところか。
まあ、それは解る。こんな世界では良いことなんだろう。
なにしろ、ドラゴンスレイヤーの指導が直接受けられるとあって、参加者の士気は高い。
「で、何で俺は此処にいるの?」
「だんな、武器の扱いとか全然なってないだろ。丁度いいかと思ってね」
いや、これでも中学生時代には剣道とかやってたんだが。
やめた後の人生の方が長いけど。
作った武器が竹刀っぽくない所でお察し、だな。
「ほら、まずは腕試しだ。行っといで」
後ろからシンディに強く押されて前に出される。
「よろしくお願いします」
目の前には、対戦相手であろう相手。
11歳の女の子。
なぜ、年齢が正確に判るかというと、ドラスレ君の娘さんだったからだ。
「一本、それまでっ」
そんな宣言が後ろから聞こえる。
地面に突っ伏した状態の俺からすると、世界の全ては後ろにある。
動きが見えねぇ。
気がついたときには、地面を舐めていた。
アリス=グランバード。
ドラゴンの子はドラゴンらしい。
「じゃ、最後に走り込みをするよ。全員柵の周りを走るんだ」
幼年部を指導していたのがシンディだった。
やれやれ、やっと終わりか。
青年部はまだ続くようだが。
おっさんが一人、子供に混じって訓練というのもどうなんだろう?
「走るってのは誰だろうと基本なんだよ。自分の使う武器を持って、さっさと走りな」
作ったばかりの攻撃盾を両手で持って走る。
持ちやすく作っておいて良かった。持ったときのバランスも良いな。ただ、ちょっと重い。
走る距離は……走れるだけ? ……正気か?
「ほれ、まだ行けんだろ、手を抜くな」
鬼軍曹が目を光らせている。
とことん、力尽きるまで扱くらしい。
「走、るん、なら、せめ、て、普通に、走った、ら?」
鎧着たまま走ってる子までいるぞ。
「そんな訓練が役に立つもんかい。実戦じゃ必ず武器を持って走るんだよ。力尽きる限界でも武器を振るえてこそ、生き残れるってもんさ。おら」
いきなりシンディが自分の獲物である大剣を俺に向けて振るってきた。
「ぐおぉ」
かろうじて、盾で受ける。
「よし、よく防いだ。また今みたいに斬りつけるからね。緊張感持って走りな」
……鬼じゃあ、鬼がおるぅぅ。




