69話 奪われ続ける。
「おい、第一王女。お前、あんまり無責任な事ばかり言うなよ」
自宅へ戻る途中、洞窟内で開拓民チームとはすれ違ったが、4人娘は居間で寛いでいた。
こっちの文化は机と椅子ばかりかと思っていたが、普通に卓袱台使ってるな。
「ああ? ん、ああ、ホロウ鳥の話かい」
一瞬、ドスの効いた返事に一歩引いてしまったが、すぐにいつものシンディに戻った。
「あたしは出来るかなと思ったからそう言っただけさ。責任もなにもありゃしないよ」
とは言うが。
「ドラスレ君のやつ、もう完全に出来る気でいるぞ、あれ」
「まあ、可愛い娘にいいところ見せたいんだろうね。あと、あんたは相手の嫌がる呼び方するのやめな」
アイリスが俺の前にもお茶を入れて置いてくれたので、一口啜る。
……こいつら、人の家の台所まで使いこなしてやがる。
初台所まで奪われたというのか。
この分じゃ、初トイレも既に奪われていそうだな。拘って作ったのだが。
「いくらなんでも、見たこともなければ、見ることもできない鳥なんて、捕まえようがないだろ」
「あ、それは大丈夫だと思いますよ」
アイリスが口を出す。
「ヨシツグさん、遠くを見るための筒持ってましたよね」
……ああ、うん。望遠鏡ね。
「普通は、光魔法の使い手が、運が良ければ姿を見ることが出来るという鳥ですのよ。遠視の魔法を使っている間だけのチャンスですから、時間も限られますわね」
翌日、開拓村改めバードマウント村の塀の上に登り、望遠鏡で森の観察。幻の鳥を探す。
一言で言えばバードウォッチングか。優雅だな。
望遠鏡は土台から延びた台の上で方向と角度を調整出来るように固定。展望台なんかでお金を入れて動かす双眼鏡みたいな感じ。
「あ、いました。あれがホロウ鳥です。辞典の絵にそっくりです」
交代でそれらしい鳥を探し、見つけたのはアイリスだった。
そのまま望遠鏡を動かさないように、位置を代わってもらって覗く。
「あの、青い鳥でいいのか?」
頭の上からも首周りからも、長い羽がピンピンと伸びた鳥だ。空を飛ぶのに向いてなさそう。
「はい。近くで見ると透き通るような蒼で、光の角度でも色が違って見える、と言われています」
「ふーん」
てっきり、幻の鳥なんていうから、絶滅危惧種だったりするのかと思ったけど。
「なんか、いっぱい居るんじゃないか?」
一匹見つけたら、その周囲にも普通にたくさん居る。




