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正しい土魔法の使い方 ~理系おじさんの異世界生活~  作者: 麻鬼


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65話 あとは任せた。

道路を繋いで開拓村へ引き返すと、門の前にシンディが立っていた。


「……お帰り、旦那」


「ああ、ただいま。道路は街道まで繋がったぞ」


「……みたいだねえ。さっき、クラウディアを連絡に飛ばしたよ。すぐに物資と人足を呼んでくる手はずだ」


クラウディアさんは、あれだ。カラスっぽい獣人の人。カラスのクロウさん。

空飛んで連絡に行ったなら、本当にすぐなんだろうな。ご苦労さん。


「それなら、基本的なところは大丈夫かな。大工さんとかも来るんだろ?」


「そうだねえ。まあ、それまではあたしらが交代で門番くらいするさ」


なるほど。一人で何をしているのかと思ったら、門番だったらしい。

まあ、獣とか入ってくるかもしれないからか。

ここは、もう一肌脱ぐところだな。

出入り口の横に、壁からせり出す形で屋根をつくり、下に小さなテーブルと椅子。

材質は石ではあるが、東屋と思えばそんなものだろう。

昼食用に多めにもらってきたコーヒーとカップも出しておく。


「至れり尽くせりで涙が出るよ、まったく」


直射日光の下で立ちっぱなしはきつかろう。喉も乾くし。

身分的には、日傘でも差していればそれっぽいのかもしれないが、……本人には似合わないな、筋肉だし。

と思ったら、なんか睨まれた。


「じゃ、じゃあこっちは任せて、俺は自分の家のほうの作業するな。みんなにも声かけておくから」


「あ、旦那、ちょっとまった。洞窟の出入り口のところで相談があるってさ」


「へーい」


後ろ手に手を振って答え、マイ・カーを走らせた。




真っ直ぐ村の敷地を縦断して北の突き当たりへ。

そこにいたのはアイリスと、髪を結い上げた秘書っぽい人。名前なんだっけ?

ああ、そうそう、エヴァンゼリンさん。略してエヴァさん。名前はメイドっぽい。


「ヨシツグさーん、こっちですー」


大きく手を降ってアイリスが呼んでいる。

周りじゅう、何もない平地なんだから、そんなに手を振らなくても見えてるよ。

何となれば他の連中も作業しているのが見えている。

ドラスレ君はユキとマーミャさんを連れて何やらお話し中。

綺麗所に囲まれて結構なことで。

エレメアと目隠しエルフのアナスタシアさんは……地質調査かな? エレメアは見ているだけっぽいが、オーバーオールに麦わら帽子というエルフらしからぬ格好のアナスタシアさんがなんか穴を掘っている。アナさんだからだろうか。


「ヨシツグさん、ここなんですけど」


壁にある洞窟の出入り口だな。今は簡単にアースクリエイトした階段で上れるようになっている。


「使い道は後で決めるので、とりあえず出入り口の建物を作って欲しいそうです。玄関口みたいなものですし」


「まあ、それはいいけど、要望とかは?」


「特に無いそうです」


……みんなそう言うんだよな。で、出来上がった後にダメ出ししてくるんだろ。

こういう場合は、当たり障りの無い形で手を抜くか、逆に否定上等で趣味に走るかだな。

自分の家はそんなに凝るつもりもないし、……ここはこっちで遊ぶか。

オフィスビルみたいな箱形の建物作ってもつまらないしな。


とりあえず、今決まっている条件は、二階の奥に秘密の扉があること。

隠し扉にして、決まった手順で操作すると開く扉、とかにするとさすがに怒られるだろうか。

知らない罠とかありそうな建物で生活したくないよな、さすがに。

壁に死体が埋まってるとか、想像してしまう。

まあ、扉は普通に、建物側から閂でもかけて閉じられるようにしておけば良いか。

ドアに鈴を付けて、洞窟側から紐を引くと鳴るようにする。呼び鈴だな。


扉が二階なら、建物は三階建てがよいか。突き当たりにある扉なんて逆に目立つしな。

あ、あれやりたいな。玄関から入ってすぐに吹き抜けのホールになっていて、正面に大きな階段があるやつ。

大岩トラップを階段の上から転がすと気持ちいいんだ。


あとは、人が住めるくらいの部屋をたくさん作れば良いか。今いるだけで9人分の当面寝泊まりできる部屋になるだろう。

電気配線とか無いから、ただの空間というだけで部屋になる。倉庫だろうと部屋だろうと作りは同じだ。

それ以外だと、台所、トイレ、風呂場、洗濯場あたりか。水場だな、要するに。

水道があるわけでもないし、これも好きに使ってもらおう。

三階は大ホールにしてしまおう。そこに小部屋をいくつか作る感じで。ステージも作っておくか。

となればバルコニーも必須ではなかろうか。


「あの、ヨシツグさん、ヨシツグさん」


服を引っ張られると思ったら、アイリスだった。


「なんだ? 今いいとこなんだが。ああ、何ならアイリスの部屋とか作っちゃうか? たいていのものなら……」


「いえ、なんかどんどん建物が大きくなってゆくので、その辺で……」


振り返ると、そこにはアイリスだけでなく数人の見知らぬ男性陣。

手に材木だの工具箱だのを担いだ筋肉質の男達が、小柄なアイリスの後ろに整列している様はちょっとシュールだ。

これは、あれかな。大工さん達がご到着?

そんなに時間たってたのかな?


「じゃ、じゃあ、あとは任せるな」


そう言い残して、作ったばかりのドアを抜け、洞窟の先、自分の所有地へと行くことにした。


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