56話 外を目指す。
ジェル島一周から無事帰還した俺たち一行。
予定とは少し違ったけれど、飛行の安定性については確認できたと思う。
余計な知り合いとか増えたけど。
ちなみにニーナから受け取った竜鱗だが、大地収納も石化収納もできなかった。生きてる竜の鱗で、千切られた後でも本体と繋がっているとかだろうか?。
仕方がないので、左胸に収納袋を作って入れておくことにする。1セントコインよりは防御力が高そうだ。
で、次は本命の異世界一周旅行だ。
今回は陸地が見つからない限り、夜でもコンパスを頼りに飛び続けることになるかもしれない。
最悪、4日徹夜だ。
ニーナに具体的な場所とか形とか聞いておけば良かっただろうか?
でも、説明してもらえるか微妙だな。擬音で形を説明されてしまうイメージがある。
そもそも、星が丸いというのをドラゴンは認識しているのだろうか?
どちらにせよ、今となってはもう遅いわけで。
なので、さすがに次は一人で行く予定だ。
話すとまたグダグダ言われそうなので、書き置きを残すことにする。
外大陸に行ってきます。探さないで下さい。4日から10日ほどで戻ります。
こんな感じで良いだろう。
一度は書いてみたい書き置きだ。
今回は俺一人なので、マイ・ジェットも元の1人乗り小型の方を使う。
進路を東にするか西にするかで迷った。
東にして、ジェット気流を掴むことが出来れば高速で移動できる。
その代わり日の沈むのが早くなる。夜のやってくる回数も一回増える。
西に向かって飛ぶ場合はその逆で、ジェット気流を避けて行かなければならない代わりに、昼を長く飛ぶことが出来る。
「まあ、西だな」
それほど高度を上げるつもりはない。天候がよほど崩れたら雲の上に出ようと思うが、陸地が見えないのは困るのでできれば避けたい。
それよりは、日の高いうちに陸地を見つけて着水できる可能性を選びたい。
島でも良いのだ。沖ノ鳥島程度でも、陸地があれば着水して収納が使える。何なら、地面を隆起させてストーンシェルを作ることも出来るだろう。
早朝、暗いうちに宿を抜け出してエスタ湖へ。
書き置きも残してきた。
マスターはシンディ達の味方ばかりするので、バレないように今回のコーヒーは外で調達した。
食事も屋台ものを中心に集めて石化収納済みだ。
それとは別に、日持ちのするパンや干し肉も荷物として持っている。
エスタ湖から飛び立った後、進路を南へ。
海に出た後、陸から距離をとって西へ進路修正。これで帝国領でも見つかるリスクが減らせるだろう。
あとはコンパスを頼りにとにかく西へ向かい、陸が見つかったら着水して上陸。アースサーチで世界儀に地形を掘り込んで行くことになる。
一番の敵は、退屈だな。
と、そんな風に思っていた時もありました。
帝国を抜けて、さあ外洋へと意気込んだそのとき、マイ・ジェットの上からガコンという音が。
何だろうと思う間もなく、ドアを開けて入ってくる黒い影。
「おう、外へ行くなら妾も連れて行くが良いぞ」
黒竜ニーナだった。
「外の大陸は良く行くのか?」
せっかくだから、疑問に思ったところを聞いてみる。
今なら聞かれて困る連中も居ないしな。
「まあ、たまにじゃな。行ったところで何が有るわけでもないが、様子の確認は必要じゃ」
瓶ごと酒をラッパ飲みしながらニーナが答える。
陸地が見つかったら、キャンプ酒しようと思って持って来たやつなのに。石化収納するべきだったか。
飲酒運転なんてしませんよ、ええ。
「人は住んでないのか?」
「人の国ということであれば無いのう。じゃが、知能を持つのは人ばかりではないぞえ?」
ああ、まあそうですね。
「小規模であれば、人族が隠れ住んでおる可能性も無くはないの」
「どんな形の大陸かとか、どんな位置にいくつあるのか、とか判るか?」
「形と言われてものう。広いか狭いか、低いか高いか、暑いか寒いか、くらいの違いは判るが、あいにくそれを記録したりはせんのう。それですら時には変わるものじゃ」
そうか。竜なんだから、数千年くらいは変化を見て来ているってことかな。
「じゃあ、このままずっと西、日の沈む方向に飛び続けたら、元の島に戻るって言うのは知っているか?」
「ほう、稀人はそんなことも知っておるのじゃな。もちろん妾も知っておるぞ」
「このまま真っ直ぐ飛び続けたときに、元の島に戻るまでに、大きな大陸はいくつ通過するかは判るか?」
「3つじゃな」
おお、やっと有難い情報だ。しかし、ということは、大陸間の移動は丸一日かかるつもりでいた方が良さそうだ。
今日は何とか島を見つける方向で。




