41話 収納スキルもヤバかった。
さて、そろそろ懐が寂しくなってきたので収納から、狩り溜めしていた獲物を取り出す。
前に北の森でキャンプした時のやつだな。
石化状態で収納されているので、鮮度も保たれている。
ただ、あのときは手を抜いて、アースホールとストーンニードルのコンボで狩ったので穴だらけだ。
売るなら、ちゃんと毛皮に穴が空かないように狩れば良かったよ。
手元には、へこみだらけの石の塊。
アースディテクトすれば、石化したホーンラビットの死体、となる。
穴の空いた体組織は詳細に鑑定するとグロい、というか痛々しい。
「おや?」
そういえば、コカトリスに石化させられていた冒険者たちを鑑定した時は、SFの冷凍睡眠のように、細胞を壊すことなく石に置き換えられていたことまで判った。
で、このホーンラビットも同様、細胞の隅々までそのまま石に変化している。
なので。
「大地変容」
狩りをしたときにストーンニードルで突き刺したことで穿たれた孔。
その破壊された体組織を無事な場所を参照して修復してみる。
今は石だからな、自由に造形を変化させることができる。
孔はきれいに埋まった。
「石化解除」
石の状態から復元されたホーンラビットの死体。
一見無傷に見える。
「よし、とりあえず売ってみよう」
皮も満額で売れた。
一応、ちゃんと使い物になる皮か確認した。
もしかしたら細かい傷とかついてるかも、と言って剥いだ後の毛皮を確認してもらったが、強度も問題ないとのことだった。
なので、グリーンディアを追加で10匹納品して、皮は売らないからと返してもらう。
「石化」
ただの皮なので、レジストされることなく石に変わる。
それを並べて大地変容。
10枚の石化した皮は、互いに接触部分を融合させて、一枚の大きな皮になる。
ついでに、皮の部位で厚みが薄くなっている箇所も均す。
大きな一枚物の魔物の皮が手に入った。
どこで手にいれたか、と問われたときは、森の主を見つけた、ということにしよう。
さて、新たな能力を開花させたわけだが、そうするともう一つ試さなければならないことがある。
「収納コピー」
大地収容したものを参照して、全く同じものを作り出す能力だ。
これを石化したホーンラビットの死体に対して発動する。
予想通り、死体が二つになった。
「両方を石化解除」
きちんと石化は解除されて、獲物は2匹に増えた。
「いや、これもヤバくないか? もう狩りしなくてもいくらでも肉が手にはいるぞ?」
両手に一匹づつ持ったホーンラビットに違いは見当たらない。
「でも、あれだな。合成肉みたいで、食べるのはちょっと抵抗があるな。気分的に」
飢えるくらいならそんなことも言っていられないだろうが。普通に飯が食えるなら、わざわざ食べたいとも思わない。
「あれ、どっちが合成した方だっけ?」
二つのホーンラビットは、すでに見分けがつかない。
「まあ、売ろう。今日明日は宿の肉料理はやめておこう」
もし、コカトリスに石化させられていた連中を収納コピーしていたら、どうなっていたことやら。
でもまあ、魂がちゃんとある世界なんだし、もしかしたらその辺で違いが出るのかもね。
試すことは無いだろうが。




