39話 異端審問は怖いよ。
「そんで、その丸いのはなんなんだい?」
一通り作業が終わるのを待っていてくれたのか、シンディがそう訊ねてくる。
「いや、だから世界地図? の一部?」
地球儀と言っても異世界儀と言ってもどっちも通じないよなあ。どう言えば良いんだろう。
世界儀とでも呼ぶか。
「なんで丸いんだよ。紙に書けばいいだろうに」
「いや、だって……」
あ、もしかしてこの世界は天動説なのか?
たしか、大地も海も平面で、端では海の水が下に落ちてゆく滝になっているとか信じられていたんだっけ?
マルコ・ポーロさんが生まれてくれれば頑張って証明してくれるかもしれないけど。
え? 俺は頑張らないのかって?
面倒臭いじゃないか。
「下書きにはこっちの方が都合がいいんだよ。最終的には紙に描くさ」
脳筋にはそんな説明で十分だろ。
異端審問とかされたら怖いし。
この国にも宗教とかあるんだろうけど、関わりたくない。
なにせ、俺は異世界の異物だし、石長比売様の使徒らしいからな。下手すれば悪魔認定されるよ。
「それで? 次は何をするんだい?」
いや、なんかもう俺的には一旦満足したんでもういいかなー、と思ってるんだけどな。
お仕事しないとダメですか?
「そうだなぁ、他の大陸に一回行ければいいんだけどな」
そうすれば、アースサーチでその大陸の形も判るし、大きさもある程度判る。
どでかい大陸が一つあれば、それだけで世界儀も広く埋まるかもしれない。
「他の大陸? そんなのがあるのかい?」
え、無いの?




