34話 王女様爆誕。
さて、俺はまだ王都に滞在している。
街として管理されていない土地の所有権、というものの扱いについて難航しているから、とのことだ。
正直、お金だけ貰ってさっさと帰れば良かった、と後悔している。
ダンジョンからの帰還冒険者を祝うパレード、というのも王都到着の翌日に行われたらしい。
着いたのが夜だったからか、翌日に改めて凱旋パレードをしたそうだ。
アイドルみたいなもんなのかね?
なぜ、すべて伝聞かといえば、俺は裁判騒ぎのせいで拘束中で、見られなかったからだ。
そんなわけで特にイベントもなく、今はぶっちゃけ暇している。
市場にも顔を出してみたが、思ったよりファーレンと変わらない。
よくよく考えると、ファーレンって王都の近隣都市で、王都と港町を繋ぐ交通の要所だったわけだ。
そりゃ確かに物の種類は豊富になるだろう。
そのうち、港町の方にも行ってみようか。
産地でしか食べられない、海の幸とかあるかもしれない。
では、王都ならではの物というと何があるか、という話だが、まずは技術的なもの。
王立の研究機関が出してくる最先端技術は王都から周辺へと広まってゆく。
光の魔道具に関してはアレだったが、火の魔道具や水の魔道具、氷の魔道具なんかは実用化が進んでいるらしい。
まあ、魔力の全くない俺には使えないことが判明したので意味がないわけだが。
魔道具を作る際には魔物の角や牙、爪といった部位が活用されるらしい。
ホーンラビットも魔物だったわけだ。どうりで角がそこそこ高く売れると思った。
他に王都が最先端と言えば、芸術方面だろうか。
王立劇団、王立楽団はもとより、服飾デザインなども王都から発信されることになる。
王都から、というよりかは貴族から、というべきか。
どちらも俺には興味ない。
カラオケでアニソン歌いたいよ。
そんなある日、ようやく王城へと呼び出された。
いや、俺としては呼んでほしくないんだけど。
この間みたいにアイリスに伝言で済ませてくれないもんだろうか?
俺以外に4人娘も一緒に呼び出されている。保護者扱いかな?
正門とは別の-勝手口でもなく関係者入場口とでもいうのか-中くらいの門を通り、案内役のメイドさんに連れられて豪華な庭や東屋の見える石畳の道を進む。
以前に訪れた工房エリアはもっと武骨な感じだったが、こっちは華やかだな。
そのまま進むと正面にはやたら大きな建造物。
これ、城の本丸じゃね?
建物の側面に当たるのだろうか、ドアの前にはドレスを着て仁王立ちの少女がいた。
しっかとこちらを睨み付けている。
といっても、アイリスより小さいのでは迫力もないが。
「誰? あれ」
4人娘にこそっと聞いた。
「レティシア第二王女ですよ」
アイリスも耳打ちで教えてくれた。
王女か。
そういえば、裁判の時にもそんな単語が出てたな。何だったっけ?
ちみっ子王女は俺から目を放すと、とたんに表情が満面の笑みに変わる。
裏表激しいな。イメージ通りの姫様だよ。
ちんちくりん王女は駆け寄ってくると、手前でスカートを摘まんで優雅に礼。
「おかえりなさいませ、お姉さま」
と、そう言った。




