23話 逃げるが勝ち。
時間切れで穴が塞がる。
「これは、あれか? メドゥーサとか、バジリスクとか、コカトリスとか、あんな感じ?」
サイズがでかいなら、後者二つか。
金の針とか刺したら治ったりすんのかね?
何処に刺すんだろうか? やはり、お尻?
まあ、その辺は戻ってマスターにでも聞けば良いか。
とはいえ、このままほおって帰るのもな。
「アースサーチ」
今度は室内の像について集中する。
壁向こうにあるのは間違いなくユキの形をした石像だ。
他の石像も調べて行く。
「いた。シンディに、エレメアだ」
二人の石像も離れた位置に並んでいた。
「石像全てが、行方不明の冒険者ってことか」
こんなに多いとは、いったい何年分だ?
とにかく。
「アースホール」
同じ位置に再び穴を開ける。
手を伸ばして、ユキの石像に触れる。
お尻に手が届いた。
固いな。
「アースディテクト」
触れた石像の情報を確認。
そう、そのためには触らなければならなかったんだよ。
「やっぱりかぁ」
石像は、石化した猫獣人、であることが判った。
石化。
一部モンスターによって引き起こされる状態異常。
ゲームでは毒や麻痺と並んで定番の状態異常であり、パーティメンバー全員が石化すると全滅扱いになることが多い。
ソロなら即死扱い。
普通は序盤に出てくるような敵じゃない。出てきたらクソゲー。
「ま、ともあれ。収納、と」
穴から覗いて、石像を片端から収納する。
地面に沈んでゆくように次々に消える。
見える範囲のものは全て確保。
「よし、帰ろう」
俺はボス部屋を後にした。
帰る方法は単純だ。壁にアースホールで穴を開ける。そこから斜め上に向けて順次アースホール。
穴が塞がる前に、次の穴へ。
そうして、ダンジョンから脱出。地上に戻って来ることができたのだった。
ダンジョン入り口前広場に出る。周囲はまだ暗いが、東の空は明らんできている。直に夜明けか。
さて、目の前にはボス部屋から回収してきた石像がたくさん。収納から取り出して並べてみた。
「アースディテクト」
やはり、石化した◯◯、と出てくるな。
より深く知覚すると、石化前と変わることなく体組織がそのまま石に変化しているようだ。
細胞を壊さずに冷凍睡眠してる感じだろうか?
俺は、シンディ、ユキ、エレメアの像に手をのばし……。
「いや、先にこっちにするか」
小柄で髭もじゃなむさ苦しいおっさん。ドワーフだろうか? その石像に手を当てる。
「大地変容」
石の状態を元に戻す。石から肉へ。変化ではなく復元。
石化ドワーフの肌が無機質な灰色から、血色を取り戻す。
目が動き、焦点が合い、こちらを見る。口を開く。
「なんじゃい、おんし」
石化解除に成功した。




