20話 望むものは。
翌日に4人娘はダンジョンへ行ったそうだ。
俺がアイリスに渡した手回し式電灯が理由らしい。
なんでも、ダンジョンにもぐるには、光魔法の使い手が必須とのことだ。明かりの為だな。
以前行ったときのように、松明を明かりにすることもできなくはないが、深くもぐるには危険度が増すというのが常識らしい。
ダンジョンによっては、松明を使っても大丈夫と確立されているものもあるらしいが、それでも未知の階層に挑むには光魔法が使えるメンバーを入れる、とのことだ。
まあ、洞窟内で酸欠を起こしたり、粉塵爆発が起きたりしたんだろう。ナムナム。
なので、火を使わない明かり、というのに大きな意味があったわけだ。
向かったダンジョンは石のダンジョン。その下層を目指したらしい。
……そして、パーティは壊滅した。
全滅、ではない。ただ一人アイリスだけが戻ってきた。
助けを呼ぶために。
泣きわめき、マスターにすがり付き、ボロボロの格好のまま意識を失った。今は二階の部屋で休ませている。
「それで、どんな依頼だったんだ?」
マスターに訊ねる。
「人探しだな。あのダンジョンは下層で行方不明者が多いんだ」
え、そんなヤバイところだったの?
「上の方は問題ねえ。地下10階に地面が熱くなってる階層があってな、そこから奧に行ったパーティが一人も戻ってこない」
「危険だって教えなかったのか?」
「連中も知ってることさ。10階層までいく予定はなかった」
そこまで無謀ではないか。
「ただ、9階層でトラップに引っ掛かったらしい」
あー、それはまた。
「トラップ自体は命に関わるものじゃなかったが、10階層を飛び越えて、11階層まで滑り落ちたって話だ」
落とし穴、みたいなものか。
「それで?」
「下にはでかいモンスターがいたらしい。この辺は、目が覚めたらもう少し詳しく聞き出さんとな。なにせ、初めての帰還者だ」
襲われて壊滅、ということか。
いや、一人戻ってきたってことは、すぐに撤退をしたって感じか。だけど逃げ切れなかった。
「要らんこと考えるんじゃねえぞ。お前一人じゃ、上層のゴーレムにすら勝てん」
ゴーレムだけなら、何とかなると思うけどね。岩だし。ただ、中層以降に出てくるモンスターも、11階層のデカブツも、ゴーレムではないらしい。
それが判っているのだろう。気を失う前のアイリスと俺は目が合った。なのに、何も言わずに目を反らしたのはアイリスの方だった。
俺に頼っても無理だ、と思ったんだろうな。
「冒険者やってりゃ、良くあるこった。仲良くしてたのは知ってるが、割りきれ。悔しいなら、次に備えて強くなれ」
マスターからすれば、そんな台詞は何度も言ってきたんだろう。
まあ、俺は別に強くなりたい訳じゃないし。
護身用に作った石の剣も、結局一度も使ってないしな。収納の肥やしだ。
俺は、のんびり気持ちよく人生を送りたいだけなんだから。




