2話 選んだ先は。
「不老不死でお願いします」
それが俺の選択だ。輪廻転生で生まれ変わりなんていらない。俺は生きたいんだから。前世の記憶とかより、自分がそのままで居続けられるほうが良いに決まっている。
「無理です」
なのに、あっさり否定するとか?
「ちょっと? さっきと言ってること違わない?」
「不老か不死かどちらかになりますね」
む、ここでも選べと?
「先程も言いましたが、あなたの国の神様の加護を与えると言っているわけですから、あなたはその神の使徒として異世界に赴くことになります。なので神様の名前をおっしゃっていただければ、その神様の加護が得られ、結果としてそれがあなたを守る力になるわけです。力の弱い神であればともかく、不死が可能になる神というと……」
日本神話で不死の神っていたっけ? いや、神様はみんな不死なのかもしれないけど。
「伊邪那美でしょうかね?」
わー、そりゃ大御所だぁ。
「しかし、黄泉の主の使徒となるわけですから、・・・」
「はいはい、それくらいは知ってます。見た目が腐っちゃうんですよね、わかります」
アンデッドじゃん、モンスターじゃん。
「なので、不老の方を選ばれることになるのかと思いますが」
「はい、もうそれでいいです。でも不老ってだけでは身の危険がありそうなんですけど、なんとかなりませんか?」
「神の加護ですから、不老はあくまで加護の一面でしかありません。身を守る程度であれば問題ないかと」
まあ、別に世界最強とかになりたいわけではないし、のんびりできれば、それでいいかなあ。
「で、なんて神様なんです? それ」
「石長比売になります。永遠の命と、岩に関する加護が得られることでしょう」
岩。つまり、土魔法っぽい何かってことか。
あんまり聞いたことのない神様だけど。
「そうですね。あとは向こうに行ってみなければ判りません。石長比売であれば性格は良い方ですから、それなりの加護をくれることでしょう。それによって与えられた力が神通力となります」
なんか引っ掛かる言い方だな。性格はって、性格以外は何か悪いのか?
「選択は以上でよろしかったでしょうか?」
む、ここが最後の回答か?
いやまあ、選び直すとしたらどうするか? 不老よりも良い選択肢っていっても思い浮かばないかなぁ。
このまま三日くらい悩ませてもらえば、なんか思い付くかも?
「……」
「はい、大丈夫です! 以上でお願いします!」
危ない、今一瞬命の危険を感じた。
背骨がまるごと凍りつくかのような予感。
これが、絶対強者から向けられる殺意なのか。それとも、避けられない死を恐怖したというのか。
やはり、死なないのが絶対だ。この選択に間違いはない。
「はい、ではこれで確定いたします。後のことはこちらで行いますので」
そう言うと、それまで薄かった光が徐々に強くなって行く。
そして、光に包まれて何も見えなくなった。




