養母上と呼んで下さいな
「お久しぶりね?マーリック」
「はい、お久しぶりです、リュディ姫様」
マーリック少年と、久しぶりの再会です。
ついに、マーリックが、今日から辺境伯領に。
来週辺りに、資料を提出して、正式に養子入りする形となります。
金髪碧眼が多い王族の中でも珍しく、薄い金の短い髪に赤茶色の瞳の少年、マーリック。
彼は容姿自体がコンプレックスのようですが、王族の中でも美形な方なので、大変モテます。
いずれは養父母として、マーリックの婚約者を選ぶことになりますけれど、どうしましょう?
モテる少年の婚約者選びは大変そうです。
この領地には年の近いご令嬢がいませんから、今から、悩みの種でございますね。
「マーリック、わたくしは貴方の養母となる予定ですから、養母上と呼んで下さいな。」
「はい、承知しました、養母上!」
マーリック少年とリュディヴィーヌ、10歳の年の差の義理の親子ということになります。
色違いではありますが、ふたりの雰囲気は似ていますので、本当に、義理の姉弟のようだなとゴーリュンは思いました。
ただ、マーリックは、容姿にコンプレックスを持っていそうだと感じたゴーリュンは、容姿のことは言わない方が良いだろうと心に決めた。
「マーリック、このお方が、私のお婿様です。」
「はい、初めまして。ゲゼルテ侯爵家の次男坊にあたります、マーリックと申します。」
「初めまして。ジェルヴェール辺境伯閣下であるリュディヴィーヌ様に婿入りさせて頂きましたサムセイト子爵家の三男ゴーリュンです。」
「ゴーリュンは、このジェルヴェール辺境伯領立騎士団次期騎士団長として活躍しています。」
「次期騎士団長として………」
お養父様となる予定のゴーリュンに対しては、少し警戒心を抱いていそうな様子。
けれど、次期騎士団長と聞いて、興味が湧いて来たようで、目がきらりと光りました。
「さらに言うなら、彼は、あのSランク冒険者カイラン・へーべ殿の弟子でもあります。」
「えっ!? あのカイラン殿の?」
「はい、10代の頃に、カイラン師匠に着いて、異国へと旅をしておりました。」
「旅を………!」
実は、このマーリックは、冒険者カイラン殿に憧れている騎士見習いの一人です。
一時期は、冒険者を目指そうか悩んでいたのを知っていますから、興味を持つことでしょう。
「マーリック」
「はい、なんでしょう?養母上?」
「後日になりますが、ゴーリュンが、辺境伯領立騎士団に、ご案内して下さるそうですよ。」
「はい、来週辺りに案内しますね。今現在、騎士見習いが3人いますからご紹介しますよ。」
「本当ですか!?こちらの騎士団を知りたくて、ずっと楽しみで!宜しくお願いします!」
「ふふふ、はい、宜しくお願い致します。」
先程まで、不安そうに、警戒していた表情が、ぱあああっと明るい表情になりました。
その様子に、ゴーリュンとリュディヴィーヌは顔を見合わせて、微笑みました。
まだまだ10歳ですから、このように、素直に可愛いらしい表情を見ると、安心しますね。
「あ、あの………!」
「はい、なんでしょうか?」
「養父上とお呼びしても…?」
「もちろん、養父上でも、次期騎士団長とでも、ゴーリュンでも、構いませんよ?」
「はい! ありがとうございます、養父上!」
「ええ、こちらこそありがとう、マーリック」
「ふふ、仲良くなれそうで、なによりです」
こちらの、ゴーリュンとマーリックの二人は、騎士として、なんだかんだ似た者同士の父子となりそうですね。
ゴーリュンは、わたくしに対しても、義息子に対しても、まだ、敬語が抜けませんし…
部下達になる予定の騎士や騎士見習いの子たち相手なら敬語が抜けてましたから、慣れたら、いずれは、敬語が抜けるのでしょうか。
「マーリックに
こちらを、プレゼントします。」
「えっ!? プレゼント?
これって、いったいなんですか?」
「マーリック用の、騎士見習い服です。」
「わあ! ありがとうございます、養母上!」
辺境伯領立騎士団員の騎士見習い服は、王都立騎士団の騎士見習い服と、かなり違います。
王都立騎士団の騎士見習い服は、緋色なので、かなり目立つような服装なのですが…
こちらの辺境伯領立騎士団の騎士見習い服は、あまり目立たないシンプルな紺色です。
「ゴーリュンが用意して下さいました。
あなたのお父様にお手紙を出しまして、サイズなどを聞いておりましたよ?」
「実父上に? そうなのですか!?
わざわざ、ありがとうございます、養父上!」
「ふふ、どういたしまして、マーリック」
先代辺境伯閣下夫妻の養女で
女領主となったリュディヴィーヌ様は、
王家の第一王女殿下だと。
そのお婿様は、
次期騎士団長のゴーリュンで。
この度、養子入りして来た子、マーリックは、騎士団長候補として育てられると。
瞬く間に、辺境伯領内に
公表されていきました。




