ご挨拶しても宜しいかしら?
「ねえ、マリーローエさん?
わたくしも、ご挨拶して宜しいかしら?」
「まあ! メリッサ姫様!
どうぞ、こちらにいらして下さい!」
さらさらとした可愛いらしく美しい金髪碧眼のお人形のような可憐な少女がやって来た。
彼女こそ、カールメリッサ第二王女殿下であるリュディヴィーヌの5歳年下の実妹だ。
「カールメリッサ、お久しぶりね。」
「ええ、お姉様、お久しぶりですこと。
お姉様ったら、なかなか、帰っていらっしゃらないから、避けられているかと思いましたわ。
お姉様は、アルフレッドお兄様から誘われたら来るのですね…?」
「あら、ここは、わたくしの実家がある王都よ。
お誘いが無くても、帰って参りますよ。」
「あらあら、それは本当なのかしら………?」
拗ねたような、遠回しなチクチクしたお言葉。
わたくしの婚約者候補として、妹の初恋の相手ライアンが選ばれてから、ずっと、このような感じなのですよ。
容姿は可愛いらしいですから、騙されがちなのかもしれませんが、末っ子として甘やかされてしまった為に、厄介な子でもあります。
「なら、お姉様は、なぜ、結婚してから、1年半以上も、顔を見せませんでしたの…?」
「今までは、辺境伯の女領主として、忙しい時期でしたから来るのが難しかっただけです。」
最初の1年間は、領民に姿を見せずに女領主となるべく、仕事をして来ました。
ゴーリュンと、このような仲になるまで、全くと言っていいほど、夜会に参加する余裕は無く過ごして参りましたよ?
そもそも、夜会は、夫がいるなら夫婦同伴。
ゴーリュンと仲良くなれたのは、今年からなのですから、ちょうど良い時期なのです。
「でも、お姉様、辺境の地の伯爵領主だなんて、やることが少ないのではなくて?」
「伯爵領ではなく、辺境伯領です。辺境伯位は、侯爵位と同等の立場よ、カールメリッサ。」
「えっ? そうなんですの…?」
むしろ、知らなかったのでしょうか…?
貴女の夫となるライアンは侯爵位を貰う予定のはずですから、知っていた方が良いですよ?
辺境の地の伯爵領だと思っていたから、貴女は断っていたのですか?
辺境伯夫人になるのを断らなければ、すんなりと、ライアンを婚約者に出来たのに…
両親と兄姉が、甘やかしすぎたようですね。
「今回は、家族を、大切なお婿様と可愛い息子をご紹介をしたくて帰って参りましたの。」
「えっ!?」
あ、そういえば…!と思ったのでしょう。
カールメリッサの視線は、後ろで、ひっそりと控えていたゴーリュンとマーリックに。
ゴーリュンも、マーリックも、なぜか無表情になっているのですけれど、どうされましたか?
「こちら、わたくしのお婿様、ゴーリュンよ。
辺境伯領立騎士団の、次期騎士団長です。」
「初めまして、カールメリッサ王女殿下。
ジェルヴェール辺境伯閣下となられたリュディヴィーヌの婿で、サムセイト子爵家の三男坊のゴーリュンと申します。」
「え、ええ、初めまして、お姉様の婿殿」
ゴーリュンは、淡々と、ご挨拶いたしました。
カールメリッサの周りにいる異性は、お兄様やライアン以外は、媚を売ってくる異性ばかり。
例え、既婚者であっても。
それは、リュディヴィーヌ第一王女と違って、媚を売っていることに気付かれないから。
それくらい天然な箱入り娘のお姫様なのだ。
しかし、ゴーリュンは、淡々と、妻の妹に挨拶しているだけなのである。
カールメリッサは、お姉様のお婿様は、こんな冷たい殿方なのかしら?大丈夫なのかしら?
と、勘違いをなされておりました。
「そして、こちらは、
ご存知の通り、養子となったマーリック。
ゴーリュンの次の騎士団長として、ゴーリュンと共に、日々、鍛錬していますよ。」
「お久しぶりでございます、メリッサ姫様」
「貴方とも、お久しぶりね、マーリック」
昔は、カールメリッサに対しても、人懐っこい印象が強かったマーリックも、冷たい…。
な、なぜかしら?お姉様は、この方々が婿殿と養子で良いのかしら?
と、再び勘違いして不思議に思っていました。
その勘違いしているカールメリッサに、何やら勘違いされていると気付いているものの………
何はともあれ………
お婿様と息子を、妹に紹介出来て良かったと、ホッとしているリュディヴィーヌ。
その様子を、ハラハラと見守っているのだが、さすがに、姉妹のお姫様の会話に割り込めずにどうしましょう!?喧嘩してしまうのでは!?
となっていたマリーローエ。
ああ、大丈夫よ、マリーローエ!
さすがに、夜会という、このような目立つ場所などで、喧嘩はしないから!
そもそも妹と喧嘩したことがあまり無いわ!




