この色彩を着ても良いのですか?
「綺麗だ………」
「ふふ、似合うかしら?
ありがとう、ゴーリュン」
「養母上、本当に、美しいですよ!
養父上の青紫は、とても似合います!」
「ふふ、そうかしら?
ありがとう、マーリック」
ようやく、涼しげな秋になりまして、私達は、フォセット王国の王都へと旅に出ました。
王都に着いたら、まずは、ドレスや衣装などの購入の為に、王家御用達のお店へと足を運び、きっちりと揃えました。
リュディヴィーヌは、ゴーリュンの瞳の色彩と同じ神秘的な青紫色のドレス。
ゴーリュンは、リュディヴィーヌの碧眼と同じような色彩のネクタイ。
マーリックは、二人の養子だと分かるように、青紫から碧色のグラデーションのネクタイ。
「本当に、養父上、養母上の色だ……
えっ?この色彩を着ても良いのですか?」
「ええ、勿論、貴方は、私達の息子ですもの。
あなたも似合っていますよ?マーリック」
「もちろん、そうだよ、俺達の息子だから」
「嬉しいです! ありがとうございます!」
夜に、ジェルヴェール辺境伯家御一行として、王家主催の夜会に参加致します。
辺境伯として領主となったリュディヴィーヌのお婿様ゴーリュンと養子入りしたマーリックを初披露することになるのです。
「ジェルヴェール辺境伯家御一行、御入場!
辺境伯領主領主、リュディヴィーヌ第一王女!
婿君ゴーリュン様!御養子マーリック様!」
いよいよ、王家主催の夜会に参加いたします。
夜会の入場のご案内に、ざわざわざわとして、貴婦人達が、ひそひそと噂を始めました。
あの第一王女が辺境伯領主で、見知らぬ婿君と
ゲゼルテ侯爵子息が養子という、それはもう、情報過多すぎるがゆえに。
しかし、幸いにして、第一王女と発表があった為に、わざわざ声を掛けてくる勇気ある人は、王族以外に、ひとりだけでした。
「リュディ姫様!
お久しぶりでございます…!」
「あら、お久しぶりね?マリーローエ!」
「うふふ、リュディ姫様がお元気そうで!
何よりでございます!」
ふんわりとした柔らかな薄茶の長い髪に青緑の瞳の、可憐な御令嬢、マリーローエ。
彼女は、リュディヴィーヌと同い年で、明るく人懐っこいユーラシェル侯爵家のご息女です。
「マーリック様も、お久しぶりですね!」
「マリーローエ嬢も、お久しぶりですね!
お元気そうでなによりです!」
マーリックも、久しぶりに親族と再会出来て、嬉しそうですね。
実は、マーリックの父方の遠い親族なのです。
父同士が再従兄弟にあたりますから、よくよく見たら、ふたりの顔立ちは似ています。
「初めまして、リュディ姫様のお婿様!
私は、ユーラシェル侯爵が次女、マリーローエと申します!リュディヴィーヌ姫様とは幼い頃からの幼馴染でございます!」
「はい、初めまして、ユーラシェル侯爵令嬢。
ジェルヴェール辺境伯閣下となられたリュディヴィーヌの婿で、サムセイト子爵家の三男坊のゴーリュンと申します。」
「まあ! 宜しくお願い致します!」
「リュディ姫様、私は、ジュリオーン様と新しく婚約することになりました。」
「あら?まあ! ジュリオーンと婚約を?
ご婚約おめでとうございます!」
「はい、ありがとうございます!
私達は幼馴染同士ですから良いのではないかと王太子殿下は考えたようですね。」
「お兄様が……… そうなのね。」
シャイリーン辺境伯家の嫡男、ジュリオーン。
彼の、新しい婚約者に選ばれたらしい。
マリーローエのご両親は、珍しく、恋愛結婚。
その為、割と自由気ままに暮らしていたから、20歳の今でも婚約者がいなかった。
マリーローエ自身は、両親のような恋愛結婚に憧れているものの、我儘を言わない、政略結婚なら政略結婚で、結婚して仲良くなれば良いと考える、サッパリとした方だ。
「アメリーズ子爵令嬢は、ご実家に戻ってから、ご家族の方とさらに喧嘩しまして、いろいろとやりすぎましたので、男爵家に引き取られて、ひっそりと暮らすようです。」
「まあ! そうなの? 男爵家に………
孤児院の先生見習いになるかと思ったわ。」
「ああ!孤児院だと先生や子どもに八つ当たりをするかもしれませんから、周りが危険と判断をなされて、それなら、ひっそりと暮らすようにということになりました。」
「ああ……… そうなのね………」
「その男爵夫妻は、元Aランク冒険者ですから、お強いので大丈夫なんだそうです。逃げても、家出しても、すぐ彼らに見つかるだろうと。」
「な、なるほど………
なんだか、いろいろと大変そうね?」
「リュディ姫様!
心配しすぎないで下さいね!
私は、お相手がジュリオーン様で良かったかもしれないと思っていますから!」
「そうなの、確かに、わたくしも、お相手の婿がゴーリュンで良かったと思っているわ。」
「まあ! リュディ姫様の惚気を頂きました!
ありがとうございます!」




