また、連絡無しのお客様!?
「リュディヴィーヌ様!!」
「えっ?何かしら、ロレイン!?」
「何があったんだ! ロレイン!?」
「何があったんですか、ロレイン!?」
「緊急です! お客様が来られました!」
「えっ!?また、連絡無しのお客様!?」
「えっ?今度は、どなたなのかしら……?」
先日とは違う、本気で緊急の知らせだと分かるくらいに青褪めた表情の執事、ロレイン。
えっ!?今度は、いったい、誰なのですか?
いきなり来るお客様が多すぎませんこと?
「わたしだよ
リュディヴィーヌ」
「まあ!! お兄様!?」
青褪めて、何やら緊張しているロレインの後ろから、優雅に歩いてやって来たのは兄でした。
光り輝くような金の短髪に煌めく碧眼の美しい神秘的な青年、王太子殿下。
なるほど………お兄様ならば、先に、お知らせが無くても、許されてしまうような人だ。
ロレインが、青褪めているのは、なぜなのか、分かりませんけれど。
「王太子殿下…!」
「えっ? このお方が…!?」
「義弟のゴーリュンと義甥のマーリックか?
初めましてだな、フォセット王家で、王太子を務めている、アルフレッドだ。」
「はい!宜しくお願い致します、王太子殿下!」
「宜しくお願い致します!王太子殿下!」
「うーん………君達は、義弟と義甥なのだから、アルフレッド義兄上、アルフレッド義伯父様とでも呼ぶと良い。妹を、宜しく頼むぞ。」
「は、はい! アルフレッド義兄上!」
「はい、アルフレッド義伯父様!」
突然やって来た王太子殿下を、義兄、義伯父と呼ぶように言うお兄様………
このお方は、相変わらず、自由奔放なのだが、実は、真面目で、努力家なお方だ。
ひっそりと自分を、鍛え、鍛え、鍛えてきた。
王太子殿下として相応しくあるために。
本当は、家族想いの、優しい人だ。
「アルフレッドお兄様」
「ああ、久しいな
可愛い妹、リュディヴィーヌよ」
「お兄様は、どうして、こちらに!?」
「ジュリオーンの代わりに来たんだよ。」
「あら、お兄様、もしかして、今回のアメリーズ子爵令嬢の件と何か関係がありますか!?」
「やはり、こちらに来ていたか………」
「ええ、来ていましたよ!」
このお方、王太子殿下であるお兄様がわざわざ来る程なんて………
いったい、何をやりましたの…!?
「何がありましたの!?」
「簡単に説明すると、ご両親と大喧嘩したらしいアメリーズ子爵令嬢が、先日、家出したんだ。
行方不明者か、もしくは、誘拐かもしれないとして捜索依頼が出る程に、いつの間にか、部屋からいなくなっていたらしい。」
「まあ! 家出でしたか…!?」
「子爵令嬢の部屋には、書き置きがあった。
私は、愛しのゴーリュン様に嫁入りしますわ!
探さないで下さい!と。」
「………えっ!?」
「………はい??」
王太子殿下であるお兄様が、わざと女声を真似して言うものだから………
その場にいた全員が、ぽかんとしてしまった。
執事や様子を見に来たであろう侍女も驚愕した表情をしている。
しかし、お兄様は、周りの空気に気付かずに、そのまま、話の続きを話し始めた。
「しかし、書き置きには驚いたよ。
ゴーリュンは妹に婿入りしたはずだからな。」
「ええ、わたくしの大切なお婿様ですよ。」
「リュディ以外、妻として迎えませんよ。」
「ええ、そうですよ!僕の養母上は
リュディ姫様だけですよ!」
「ほう?いつの間にか、親子揃って仲良くやれているようで、なによりだ。」
「ふふふ、ありがとうございます。」
「今回は、ジュリオーンの代わりなのね?」
「さすがに、ジュリオーンは、辺境伯領を長期間離れるのは難しい。だから、代わりに来た。」
「アメリーズ子爵令嬢は、ゴーリュンが、辺境伯閣下になられたと勘違いしておりました。」
「そのような勘違いを………?」
「ええ、彼女は、金髪碧眼が王族だと分からないようでしたから………」
「ふむ?それは、なかなか………
思った以上に世間知らずなのだな?」
「そうみたいですね?」
「何も調べずに家出して来たのか…?」
「ええ、そのようですよ。
しかもですね、ゴーリュンは、幼馴染ですが、15歳から10年以上会っていないようで。」
「うーん………そうか………
何を考えているか、よく分からんな…?」
「わたくしも、よく分かりません………。」
「まあ、とりあえず、わたしからジュリオーンに知らせておくよ。安心しなさい。」
「お兄様! ありがとうございます!」
まあ、何はともあれ、お兄様とジュリオーンのおふたりに、お任せいたします。
なんだか、不思議なことに
巻き込まれてしまいましたね。




