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辺境伯な女領主は恋を知らない  作者: ゆりあ
冒険者たちとの出会い
15/27

ゆっくりと過ごしたいんだ

「ゴーリュン

おはようございます」


「ああ、リュディ、おはよう」


今朝の鍛錬は、ゴーリュンひとりだ。


いつもなら、マーリックも一緒に鍛錬しているのだが、今日は、冒険者たちの、カイラン殿とオルトライティ殿の元へ行っているのだろう。


少し暖かくなって来たからか、ゴーリュンは、半袖の、涼しい格好になっている。


「マーリックは、

カイラン殿達の所かしら?」


「うん、そうだよ。

朝早く出発したみたいだ。

今日から、5日間、カイラン師匠達が泊まっている旅館に一緒に泊まるんだって。」


「ふふ、そうなのね。楽しそうだわ。彼にとって世界が広がる良い学びとなるでしょう。」


「うん、そうだね、きっと楽しいよ。」


マーリックは、冒険者の登録は出来ませんが、騎士見習い認定はされています。


なので、貴族の護衛依頼や見習いの教師依頼を受けた冒険者と一緒なら、森林で、野生の獣を討伐することができるらしいのです。


まだ10歳なので、イノシシや鳥系などの倒しやすい獣限定ですが。


若手の騎士見習い、マーリックは、鍛えがいがあることでしょう。





「リュディ」


「何かしら、ゴーリュン?」


「今日は、久しぶりに、リュディと2人だから、ゆっくりと過ごしたいんだ、良いかな?」


「ゴーリュン………」


そういえば、養子のマーリックが来てからは、なかなか、夫婦ふたりの時間は少なかった。


私達は、1年間、関わりが薄かったとはいえ、今も、新婚夫婦のはずなのだけれど。


「ええ、本当に、ふたりなのは、久しぶりね!

もちろん、大歓迎よ?」


「ふふ、ありがとう、リュディ」


「ゴーリュン、お茶にいたしましょう?」


「うん、さっそく、今から温室に行こうか。」


今日は、ちょうど、事務作業もお休みだから、ゴーリュンと、のんびりと過ごしましょう。


辺境伯家のお屋敷には、こじんまりとお洒落な温室があるのです。花壇に、季節ごとに様々な植物が植えてあります。


今の時期は、可愛いらしい薄紫色のお花が多いようで、神秘的な空間が広がっています。





「………………」


「………………………」


「…………………………………」


「…………………………………………」


ふたりは、今や、とても仲良しな夫婦なので、この二人の周りには、執事も侍女もいない。


ミニ厨房に、様々な種類の甘いケーキ、紅茶や珈琲、普段飲むお茶などの飲み物が用意されているため、本当に、ふたりきり。


勿論、念のため、温室の近場に、執事と侍女が控えてはいるから、呼んだら来るのだけど。


昔と同じように、ただただ無言で、ふたりで、ゆっくり、のんびりと過ごしている。


「………………」


「………………………」


「……………………………………」


「………………………………………………」


新婚夫婦のはずなのだが、まるで、熟年夫婦のように、のんびりするのが好きなのだ。


リュディヴィーヌは、無言のまま、紅茶を飲みながら、読書をしている。


ゴーリュンは、そのリュディヴィーヌの横顔を優しい表情で見つめている。


彼女は、読書に集中している間は、無防備だ。


夫であるゴーリュンとしては、妻が、無防備な姿を見せて、のんびりとしてくれているということが、本当に、嬉しくて、愛しい。


ゴーリュンは、たった、ここ数ヶ月で、妻への愛が、リュディヴィーヌへの愛が溢れて止まらないことが、本当に、嬉しくてたまらない。


リュディヴィーヌは、ゴーリュンと一緒なら、身体も、心も、本当に、リラックスするから、読書の時間として、最適なのだ。


政略結婚で、ここまで、お互いに、愛し合っている新婚夫婦は、なかなか、いないだろう。





「ふふふ」


「どうしたのかな、リュディ?」


無言の中で、突然の、小さな笑い声。


リュディヴィーヌが読んでいるのは歴史書だ。


冒険者であるゴーリュンのお師匠様と兄弟子に出会って、この王国の冒険者に関する歴史書を読み始めているらしい。


その書籍は、真面目な内容になっているはずだから、笑う要素は、あまり無いが…


もしかして、思い出し笑いなのだろうか?


「ふふふ、こうやって、ふたりで、ゆっくりと、のんびりと過ごすのが嬉しくて。」


「うん、そうだね、俺も、こうやって、ゆっくり過ごせて嬉しい。リュディ、ありがとう。」


「ふふふ、どういたしまして、ゴーリュン」

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