素直で良い子じゃないか!
「やあ、ゴーリュン」
「お久しぶりです、カイラン師匠」
「ふふふ、3年ぶりかな?久しぶりだねぇ」
焦茶色の短髪に黒目、青年のように見えるが、47歳らしい、カイラン・へーべ殿。
一見、ゴーリュンのように細身ではあるけど、Sランク冒険者だから、お強いのでしょう。
でも、正直、あまり目立たないから、ご挨拶をしないと、冒険者さんだと分かりませんね。
「よぉ、ゴーリュン、久しいなぁ!
元気にしていたかー?」
「ええ、オルトさんも、お久しぶりですね。
もちろん、元気にしていましたよ。」
「良かった、良かった!
確か、今は、25歳だよな?」
「ええ、今年で、25歳になりますよ。」
それ以上に目立つのが、オルトライティ殿。
かつての銀燐帝国の王家特有の、目立つ銀色の髪を隠すために被っているであろう、真っ赤な鬘の短髪に、緋色の瞳の冒険者。
初対面だと、真っ赤な印象しかありませんね。その緋色の瞳は、本物のようですが。
銀髪を隠すために、かなり目立つ真っ赤な色の鬘にしたことは、正解だと思えました。
「ところで、ゴーリュンよ。
なぜ、フォセット王家のお姫様が、こちらに、いらっしゃるのかな…?」
「確かに、金髪碧眼はフォセット王家の証。
なぜ、こちらに、おられるのですかな?」
「こちらは、先代辺境伯夫妻の養女となりました新しい女領主のリュディヴィーヌ様です。」
「ふむ? そうなのかい?」
「女領主………!?」
「はい、お初にお目にかかります。
ジェルヴェール辺境伯家の当主を受け継ぐ為に領主になりましたリュディヴィーヌですわ。
宜しくお願い致します。」
「リュディヴィーヌ?もしや、貴女は………
その名前は、第一王女殿下でしょうか?」
「ええ、はい、フォセット王家の第一王女として生まれ、先代辺境伯の養女になりました。」
「………ふむふむ、なるほど。」
王家には、二人の王女殿下がいる。
才女だと知られている第一王女殿下に、可愛いらしくて、無邪気な末っ子の第二王女殿下。
カイランは、その名前を聞いて、第一王女殿下だと気付いたが、なぜ、お姫様が、辺境伯閣下として選ばれたのか、よく分からない。
オルトは、フォセット王家の者だと気付いて、警戒心を高めてしまいました。
「わたくしは、こちらの
ゴーリュンの妻でもあります。」
「はい、実は、辺境伯家に婿入りしまして。」
「おおおお、なるほど、なるほど、ゴーリュンの奥方様でしたか!失礼いたしましたな!
私は、Sランク冒険者の、カイラン・へーべと申しますぞ!宜しく頼みますな!」
「ゴーリュンの奥さん………
Aランク冒険者のオルトライティ・マテラだ。
ゴーリュンは弟みたいなもんだな、宜しく。」
「はい、カイラン殿、オルトライティ殿。
宜しくお願い致します。」
「ふうむ?なるほど。
政略結婚というやつだな。」
「そういう形の政略結婚も有るのだなぁ。
なんとも、不思議なものだ。」
「うん、俺も、子爵家出身の俺が選ばれるなんて不思議だと思うよ。」
「うむ、ワシらから見ても、不思議だぞ?
ワシは、農民生まれだからの、政略結婚は必要無いんじゃ、今も、独身のままだしな。」
「うーん………不思議なもんだなぁ」
「リュディが、お婿様は、王族からではなくて、辺境伯領に住む殿方から選びたい、って言ってくれたおかげで出会えたんだ。」
「ほほー、政略結婚のようだが、仲は良好か!
良い縁に恵まれたな、ゴーリュン?」
「そうだなぁ。良い妻に恵まれたなぁ。」
「ふふ、ありがとう、ふたりとも」
「そっちにいる小さな少年は?
もしかして、彼も、家族なのか?」
「俺達に養子入りしたマーリックだよ。」
二人は、ずっと、側で控えていた小さな少年、マーリックに気が付きました。
そのマーリックは、自分の挨拶はまだだろうと見ていたので、きょとんとしてましたが。
「はい、初めまして!
ゲゼルテ侯爵家の次男坊として生まれ、二人の養子になりました、マーリックです!」
「ほほー?もしや、ゴーリュンの弟子かな?」
「はい、弟子入りしました!」
「つまり、ワシにとっては孫のようなもんか?
宜しく頼むのぅ、マーリックよ。」
「はい! カイランおじいさま!
宜しくお願いいたします!」
「おじいさまか〜!嬉しいのぅ!」
カイラン殿から、ガシガシガシガシと遠慮なく撫でられて、マーリックは、嬉しそうです。
マーリックも、私も、家族から、あんなに撫でられたことは無いので、新鮮なのでしょう。
「それなら、俺にとっては、甥っ子なのか?
オルトおじさんで良いぞー? 宜しくな!」
「オルトおじさま、宜しくお願い致します!」
「ふふふ、いま、年はいくつなんだ?」
「いまは、10歳になりました!」
「マーリックは俺の息子と同い年なんだなぁ。
今度来たら、オルディーも連れて来るよ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!
会えるのが楽しみです!」
「ははは! 素直で良い子じゃないか!」




