これからの成長が楽しみですね
「ふたりとも
おはようございます」
「ああ、リュディ、おはよう!」
「あ、おはようございます、養母上!」
彼らにとって、騎士団に所属する者達として、朝の鍛錬は、欠かせないものらしい。
ゴーリュンもマーリックも、庭で鍛錬してから騎士団に行くことが多い。
リュディヴィーヌは、鍛錬中のふたりに、朝のご挨拶がてら、声を掛けるのが日課となった。
そのおかげで、早寝早起きがしやすくなって、実務に集中しやすい。
「マーリック」
「はい、何ですか?」
「王都から手紙が届いているわ」
「王都から? 手紙は、誰からですか?」
「イレボーニ伯爵令嬢、テレッアサ嬢ね。」
「えっ!? テレッアサ嬢から…?」
突然、聞いたことがない家名のご令嬢から来たお手紙でしたから、驚きましたけれど…
その手紙は、王都から来たマーリックに宛てたものでしたから、納得しました。
王都は、たくさんの貴族がいます。王家の私が覚えきれないくらい、たくさんの方々が。
マーリックのように夜会デビュー前の方だと、余計に、誰なのか、分かりませんね。
「このお方は、親しい子なのかしら?」
「文官家系のイレボーニ伯爵家の長女ですよ。
ミラケーナ姉上の幼馴染になります。」
「あら、ミラケーナのお友達なのね。」
ミラケーナは、ゲゼルテ侯爵家の第三子次女にあたる12歳の金髪碧眼の少女。
ゲゼルテ侯爵家の中でも王族の血が色濃くて、弟の第三王子殿下の婚約者に選ばれた子です。
つまり、マーリックの2歳上の実のお姉様でもあるご令嬢ですね。
「うん、でも、ミラケーナ姉上の幼馴染達とは、あまり関わり薄いから、なんで、テレッアサ嬢から手紙が来たのかは分からないよ。」
「そうなのね、ゆっくり読んでみてはいかが?
若い頃からの人脈作りは大事なのよ。」
「人脈作りに……… はい、読んでみます!
ありがとうございます!」
マーリックは、自身の鞄に仕舞い込みました。
騎士見習いとしての仕事が終わったら、部屋でそのお手紙を読んでみるそうですね。
………テレッアサ嬢は、マーリックの婚約者候補なのかしら?どうなんでしょう?
ミラケーナにお手紙を送って、どんな子なのか聞いてみましょうか。
後日、ミラケーナに手紙で聞いてみましたら、そのテレッアサ嬢、長年、マーリックに片想いしているそうなのですが…
別の侯爵家の嫡男の婚約者候補として、名前が上がっているため、難しいそうですね。
その侯爵は、冒険者ギルドの本部長ですから、彼らを敵に回すと、色々と厄介なのですよ。
ゴーリュンが、Sランク冒険者の弟子なので、敵に回ることは無いでしょうけれど。
「ゴーリュンにもお手紙が」
「えっ? 俺にも、来ているの?」
「ええ、住所は、ゲイルディス王国のケレディー辺境伯領からになっているわ。」
「ゲイルディス?かなり遠い所からだね。」
ゴーリュンは、旅に出ていた経験があるため、広い広い人脈があるらしい。
そのため、たまに、異国から、お手紙が届く。
ゲイルディス王国は、このフォセット王国から南の方角の遠い遠い場所にある。馬車や船旅で行くのでしたら、1ヶ月以上、かかる場所だ。
その中でも、ケレディー辺境伯領は、かなりの要所、貿易の港街となっている。噂によると、巨大な要塞があるような地域らしい。
「こちら、お名前は、オルトライティ・マテラと書いてあるのだけれど、ご存知かしら?」
「オルトさんから!?
ああ、もちろん、知っているよ!
俺の兄弟子で、Aランク冒険者だよ。」
「つまり、カイラン殿のお弟子さんなのね?」
Sランク冒険者カイラン殿のお弟子さんなら、遠い異国からのお手紙、有り得ますね。
ゲイルディス王国の周辺国は、危険地域が多いため、冒険者がたくさんいる様ですから。
フォセット王国は、この辺りの中で、一番治安良い地域の一角にありますから、危険な地域があまり無いので、冒険者ギルドはありますが、冒険者との関わりは薄いのです。
「………えっ!?」
「ゴーリュン、どうされましたか?」
「あのふたりが、カイラン師匠とオルトさんが、来月辺りに、こっちに来るって!」
「まあ! そうなの!?」
ゴーリュンのお師匠様と兄弟子さんが!
家族と疎遠なゴーリュンにとって、お師匠様と兄弟子さんは、義理の父兄のような人達。
ゴーリュンの家族に、お会いできるのです。
「えっ!? 養父上!
そのおふたりに会えるの?」
「うん、会えるみたいだよ。」
「本当に!? やったー!」
「ふふ、いつの間にか、妻子が増えているから、ふたりは、驚くだろうね。」
「会えるのが、楽しみです!」
きっと、マーリックは、憧れの強い冒険者達、カイラン殿とオルトライティ殿にも鍛えて貰うためにお願いしたいのでしょう。
ゴーリュン曰く、マーリックは、まだ10歳にしては強い方、とのこと。
なので、これからの成長が楽しみですね。




