93.準備期間
一か月が経った。
この一か月の間、各自目標に向かっての準備をしている。
俺はもちろん、タケダを釣りまくった。そして新たな魚のアジも釣りまくった。驚いたことに、アジには名前があったのだ、その名も『イッテ』……変な名前である。どうやらセイゴが痛いからつけられた名前の様だ。カイリさんとシャッドさんにはセイゴを必ず処理することを説明し、フライ・なめろう・つみれなどの料理を伝授した。それと、アジは栄養豊富で美容にも良いということも説明したら、アジが女性に大人気になってしまった。
スピナさんは、ブレードさん達と流木集めや木材、ダンジョンでレイスの魔石などを集めている。ダンジョンで肉なども集めて欲しいのでスピナさん達にも追加でマジックバックをクラフトして渡しておいた。
そうそう、スピナさんのソフトボール……ミノタウロスの魔石だが、スピナさんの手甲の材料として使った。効果は今のところ不明、クラフトできちゃったので何かの効果はあると思う。週に一回くらいだが、トラもダンジョンに着いていき白い魔石を持ってくるので、仲良くミノタウロスを倒してきているのだろう。
ポッパーさんもスピナさん同様にダンジョンに通っている。
最近はランドくんも一緒だ、今のところはカバン持ちを主に行っていて、危険がない時にとどめを刺したりして訓練をしている。もちろんランドくんにも剣をプレゼントした。まだ発達途中のランドくんには一回り小さな剣をプレゼントした。もちろん、刃物は危ないので気を付けるように注意は忘れていない。
カイリさんは厨房に籠ることが多くなった。とにかくやりたいことが多いらしい。
出汁の組み合わせや、配分量。俺が言った栄養を持った食材を使って、どんな料理ができるか研究中だ。たまに身体を動かしたいときがあるらしく、その時はダンジョンに行きポッパーさんのお手伝いをしている。
シャッドさんだが、とにかくコンブを獲っては干していた。あと、暇を見つけては畑作業をしていた。
ある日、クランクさんとシャッドさんがお客さんを連れてきた。お客さんはジャックくんだ。クランで農作物に詳しい人材がいない。そこでジャックくんはどうだろうと話をしに行き、面接を受けた。
面接の結果、ジャックくんを採用することにした。でも、ジャックくんには実家の畑もあるので、たまにうちの畑を見てアドバイスもらえるようにお願いした。臨時職員みたいなものだな。
ここまでは問題なかった。問題なのはここからだ!
試しにクランの畑に芋を植えてみたのだ、そしたら異常なスピードで育った。1週間くらいでかなり大きくなり、ジャックくんもこんなの見たことないと大興奮だった。畑に何かしているのかとジャックくんに聞かれたが何もしていない。やったことと言ったら、シャッドさんが手を突っ込んでウンウン唸っていたくらいだ……が、多分それが原因だろう。シャッドくんもそう思っていたらしく、ジャックくんの家の畑の一角を使って実験を行った。
結果は……成長が促進された。茶色のオーラは土の栄養になるのかもしれない。
すごいスピードで大きくなるので生産量が爆上がりになった。それと、味も良く、高品質だとジャックくんは喜んでいた。もちろんうちのクランで大量に購入した。素材がおいしければ料理はもっとおいしくなる、みんなニッコニコだ。
そして本日、王都からペレさんがポカリエスを受け取りにベイツの街に立ち寄った。
みんなと話し合い、まずは人口が多い王都から計画を実行していこうということになった。人口が多いってことは困っている人も多いはずだ。ギルドで芋汁を食べる人も小さな町よりも多いと思うし、一回王様にも伝えておいた方がいいだろう。
ベイツには定期的に王様が信用している騎士、ペレさんが立ち寄る。シャッドくんはペレさんと一緒に王都へ向かい、コンブ汁を冒険者ギルドへ卸し、良い人材がいないか探してくるのだ。王都の冒険者ギルドのマスターにはベティさんを通じて連絡済みだ、問題はないだろう。
王様へは、手紙を書いた。ペレさんが渡してくれると思う。まぁ、読まれなかったとしても別に問題はない。料理がおいしくなった程度で、王様の仕事が忙しくなったりはしないだろう。ただ、スピナさんの聖女関係があるので、ベイツが目立ってきた時に対処できるようにあらかじめ報告しておくのだ。
明日からはクラン活動が本格的に始まる。
今までもいろいろとやってきたが、ここからが本番だろう。そう考えると、明日がグランディールのスタート記念日だ。今晩はおいしいご飯でも食べて、明日から頑張るエネルギーに変えてもらおう!




