92.マジックバックを作ろう
予約投稿の日時間違えていました。
10月22日分投稿です
クランハウスから近い磯場の海で、俺は新たな発見をした。
磯場でジグを投げたら、でかいアジのような魚が釣れたのだ。セイゴも付いているしアジで間違いないだろう。しかし、俺が知っているアジより数倍でかい。アジっぽいイナダと言ったほうがいいのではないか?
イナダはブリの幼魚の総称だ。出世魚と言われるブリは、イナダ・ワラサ・ブリと名前が変わっていくが同じ魚だ。俺が出世しても、アタルがアラサーになったりはしない。イナダよりも下っ端の名前もあったはずだが、覚えきれないし、釣れてくるのがイナダサイズからなので小さいやつはイナダって言ってた気がする。
クランハウスに帰宅し、夕飯を食べた。釣りに熱中しすぎて遅い時間になったのでアジの調理は明日にした。どうやらマジックバックは収納している間の時間は進まないようだ。熱々の味噌汁を収納したら、いつ取り出しても熱々なのだ。
俺は今からマジックバックを作ろうと思う。
クラフトして材料を確認したら、必要材料がカバンと魔石(高濃度)だったのだ。
トラに高濃度の魔石について聞いたらレイスの魔石で大丈夫だって言われたので、材料はそろっている。カバンはもちろんブルーブルの革だ。機能性を考えて背負うタイプにする予定なので、ランドセルにならない様に細心の注意が必要だ。
まずはカバンだ。お手本はじいちゃんのマジックバックだ、じいちゃんはランドセルができてしまわなかったのだろうか? 用務員というだけあって、小学生を毎日見てきていたはずだが……定年になってずいぶんと時間が経ったから大丈夫だったのかな?
じいちゃんのマジックバックをじっと見つめながら、ブルーブルの革をクラフトした。当り前だが俺が使っているマジックバックと同じ形のカバンができた。それを4個作った、1個できてしまえば簡単だ。というか、間違えても作り直しができるんだった。心配して損したな……
そうだ! 革製品と言えば焼印だろう。ただの青いカバンじゃ味気ない。焼き印でワンポイントを刻もう!
いろいろ考えた結果、トラの肉球を刻むことにした。クランのマスコットと言えばトラだからな。猫はこの世界で一匹だ、肉球をわかる人は少ないかもしれないがそんなことは問題ではない。肉球は丸だけで描ける! 大きい丸が1つに小さい丸が3つだ! それだけでなんとも可愛らしいマークになるのだ。絵が苦手な俺でも楽勝なのだ!
問題は焼印の素材か……革製品を作ったことがないからいまいちわからないな。熱伝導を考えると銀か銅だが……
そういえば妻がハマっていたシーリングスタンプの印は金色だったな。あっちは印を熱してないが……まぁおなじようなもんだろう。
となると、真鍮が濃厚か? 真鍮は銅と亜鉛の合金だったか? 真鍮は仕事柄ふれることがあったので何となくわかる。問題は亜鉛だが、たしかタックルボックスに亜鉛のジグがあっただろう。亜鉛のジグは、高比重で重いのに小さいタングステンと逆で、比重が軽く大きいのに軽いと言うジグだったので珍しさで購入したやつだ。これと銅貨で合金にすれば真鍮っぽくなるだろう。
金属だけだと熱が伝わり触れた時やけどしてしまうので、木も用意した。これで万全だろう、肉球をイメージしてクラフト! なかなか上手にできた気がする、ワンポイントなので焼印は小さい。カバンの隅にでも刻もう。
俺はじいちゃんのコンロを取り出して、焼印を熱して4つのカバンの隅に肉球を刻んだ。
「あとは仕上げだな、マジックバック1つにレイスの魔石1個で大丈夫か?」
『問題ないニャ』
トラから問題なしをもらったので、1個づつマジックバックへクラフトしていった。
翌朝、できたマジックバックを配った。
まず、ダンジョンを往復することになるポッパーさんに1個。ブルーブルのドロップ品を持って帰ってくる労力が必要なくなるので、大活躍するだろう。それに大量に持ってくることができる。ポッパーさんは大剣を使うので、背負うのはランドくんとか別の人になりそうな気もするが、管理はポッパーさんに任せた。
もう一つはシャッドさん。シャッドさんも各地を回るときにマジックバックは必須だろう。コンブ汁を背負っていたら走っている間にこぼれてしまって、目的地に着くころにはちょびっとしか残らないはずだ。ぜひ活用してほしい。
残りの2つはカイリさんにだ。シャッドさんが居なくなると、クランハウスの料理人が居なくなってしまう。俺もご飯は作れるけど、めんどくさい。だからカイリさんに2つ渡してマジックバックを日替わりで交換してもらおうと考えている。マジックバックの中身はもちろん料理だ。宿の厨房で作ってもらい、それを届けてもらうのだ。
早いうちに新しい料理人を探してとシャッドさんには後で話しておかなければ……




