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82.出汁はスキルなのか? 魔法なのか?

「それでは、訓練場へいくぞ!」


 ベティさんは立ち上がり、何やら防具の準備を始めた。


「訓練場?」


「アタルさんは知らないか。ギルドマスターの推薦を貰うのは、ギルドマスターとの手合わせが必要なんだ。まぁ、今回は問題ないだろ。いつもの使ってもいいんだろ?」


 いつものってなんだろ?


「いつも通りやってくれていいですよ」


 俺達はギルドの訓練場へ向かった。



 ギルドに訓練場があるなんて初めて知った。いったいこの訓練場は誰のためにある訓練場なのだろう?

 ベイツ筆頭冒険者の俺は知らない……使えると聞いたこともない。もしかしたらずっと生産職と思われたのかもしれないな。実際は管理職だけどね。


「ポッパーはその剣だけでいいのか?」


 ベティさんは両手に短剣を持ち、身軽な装備をしている。斥候とかそんな感じの職種なのだろうか?


「本当は剣もいらないんだが……ギルドマスターさんに舐めた態度はとれないだろ?」


 ポッパーさんや、役職には『さん』付けはしなくていいのだよ……真面目なんだから……


「ほう、言うようになったじゃないか」


 ポッパーさんが赤く光出した。


「なんだと……」


 ベティさんが驚いたと思ったら、ベティさんも光出した。

 ちなみに紫だ、紫は誰か居たっけかな? レアカラーかもしれない。というか、魔力循環は普通に使われている物なのか? 隠す必要がない技だったら、わざわざ離れた所に訓練場を作った意味が……いや、あの土地は必要だったのだ!


 そしてポッパーさんの剣が炎を纏った。ポッパーさん頑張って!


「え……ちょっと待て! その炎は熱いのか?」


「偽物にみえるか?」


 ポッパーさんがにやりと笑いながら、ベティさんに答える。


「いったん休止だ、ちょっとその炎を見せてみろ」


 そういってベティさんはポッパーさんの剣の周りをうろうろしながら観察している。

 そして、顎に手を添えながら『うーむ』と唸っている。


「その炎は魔法か? 近づいても熱が感じられない……特性は魔法だな……」


「わからない、アタルさんの訓練法をしていたら出てきた。方法はクランの秘匿技術だ」


 そう、ギュッとするのは秘密なのだ。循環はメジャーでもギュッとするのはまだマイナーなのだろう。よかった、離れた場所で訓練していて本当によかった。これでみんなできるって言われたら立ち直れない。


「そうか……突然上がった戦力強化がわかった気がする。その技がみんな使えるのか?」


「全員ではないが、数人使えるぞ」


 ニヤリとしながらポッパーさんが答えた。

 え、何人使えるかは内緒にしつつの、謎の笑み……俺より使い方上手じゃん!


「わかった、合格だ」


 ポッパーさんは戦わずしてベティさんの推薦を貰ってしまった。すごいねポッパーさん!


「ちなみにだがミノタウロスを倒したスピナの技はどんな感じなのだ?」


「……すみません、ここでは見せられません。ダンジョン内なら見せれます」


 スピナさんが申し訳なさそうに答えた。たしかにスピナさんは技を出す前に地震を起こす。ここでやったらえらいこっちゃになるだろう。


「じゃあ、アタルだ。アタルはブルーブルを倒せたのだろう? どこまでできる?」


「そうですねぇ、ギルドとベイツの街がなくなっていいならここで見せてもいいですよ」


 そう言って俺はニヤリと笑みを作りながら、ベティさんに答えた。


「あぁ、アタルはブルーブル1体しか倒せなかったんだったな。無理はしなくていい、メンバーの能力を底上げできるのも優秀なマスターの証拠だ。安心しろ!」


「ブハァ! クククク」


 ポッパーさんのツボに入ったのか、腹を抱えて笑っている。くそ、解せない……


 よくわからないが、明日ベティさんを連れてもう一回ダンジョンに行くことになってしまった。

 ところでドロップアイテムの買い取り金額はどうなったんだろう? とにかくベティさんから解放された俺達は宿の食堂へ向かった。




「カイリさーん、シャッドさん来てますか?」


「アタルさんよ! あのコンブ汁ってのはどうなっているんだ? スキルか? 魔法か? 魚のダシに混ぜたら旨さが数倍に変わったぞ!」


「あぁ、いろいろ試したんですね。昆布や野菜のダシは肉や魚のダシと合わさると相乗効果で数倍の味に感じるんです。今まで野菜で代用していたのですが、野菜だと旨味成分が足りなかったようで、うまみ成分が濃い昆布を今日シャッドさんと採取したんです。すごく変わるでしょ?」


「変わるなんてもんじゃねーぞ、魔法を使ったとしか思えねぇ!」


 カイリさんはめちゃくちゃ興奮していた。


「芋汁も食べてみました? あっちもすごくおいしくなったでしょ?」


「あぁ、芋汁はもはやあの値段で食べれる食べ物じゃねぇ。でも、値段を変えずにうちのクランの名物として売るんだろ?」


「値段は変えたくないですね。うちのクランの名物の話はシャッドさんの意見です。皆と話し合ってどうするか決めましょうか?」


 芋汁関係はシャッドさんが率先してやるだろうけど、新しい事業になるのは間違いない。みんなと話し合ってから決めたほうがいいだろう。


「クラン会議を開催したいのですが、今からは食堂。明日はちょっと冒険者のギルドマスターとダンジョンに行く約束をしてるんですよ。明後日の昼にクラン会議をしましょう。皆さん予定を開けといてくださいね」


 クラン会議の日程を決め、新しいダシを使った料理をあれこれ試しながらお腹一杯ご飯を食べて、俺達はクランハウスに帰った。

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