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79.シャッドさんの決意表明

 俺とシャッドくんは今、サーフに居る。


「結構採れましたね。この中にコンブはありますか?」


 シャッドくんは昆布が待ち遠しいようだ。


「見た感じ、似ているのがこの分厚いやつですね。こっちの細いもじゃもじゃしているのはワカメっぽいです。ちなみに海藻って食べてました?」


「いえ……」


 やっぱり食べてないかー。ベイツにきてから海藻を取りに来ている人なんて見たことがなかったからな。まぁ、採集するライバルがいないのはいいことか。


「昆布は乾燥してから使うのですが、今日は時間がないのでクラフトしますね」


 そう言って俺は昆布っぽい海藻をクラフトした。

 問題なく干した昆布にクラフトできたこということは、これは昆布なのだろう。または昆布に似た成分のなにかだ。まぁ、名前もないし、昆布でいいだろう。


「結構カチカチになるんですね」


「そうなんです、これを水に入れて戻して使います」


 干したのを水に入れてまた戻すなんて、普通思いつかないだろう。昔の日本人はすごいなと思う、どうやったらそういう発想になるんだ?


「せっかく干したのにまた戻すんですね」


「シャッドさんもそう思います? 俺もそう思います。本当ならこのまま一晩くらい時間をかけるのですけど……スキルで時間進めますね」


 そういって俺は出汁が出た昆布汁をクラフトした。


「マスターのスキルって何でもできるんですね」


「そうでもないですよ……そもそも、こういう使い方が正しいのすら謎です。これ、昆布汁っていうんですけど、試しに一口どうですか?」


 そういって俺は少量の昆布汁をシャッドさんに勧めた。


「なんか不思議な味です。これが芋汁をおいしくするんですか?」


「そう思いますよね? これ、昨日の芋汁なんですけど今すぐ口に含んでみてください」


 そう言って俺は昨日作った芋汁の余りをシャッドさんに勧めた。


「え……どういうことですか?」


 ですよねー? ビックリしますよねー?


「ビックリしたでしょ? これ、うまみ成分が相乗効果を出しているらしいんです。本当なら野菜とお肉の出汁でも相乗効果はあるんです。でも、ブルーブルのうまみ成分が強すぎたか、野菜のうまみ成分が少なすぎたかが原因で実感できなかったんですね。昆布には野菜の数倍の旨味成分があるので、昆布汁を足してようやくブルーブルの旨味成分に追いついたんだと思います」


 俺も昆布汁を昨日の芋汁に少し加えて、味見をしながら答えた。これはじいちゃんの芋汁にかなり近い気がする。

 昆布汁を温めながら、シャッドさんに旨味成分のことをわかる範囲で説明した。たしか、シイタケにも別の旨味成分があった気がするが、この世界のキノコは全くの未知だ。キノコは見ただけでは食用か判断できないので諦めている。


「昆布汁も温まりました。昨日の芋汁に加えて、薄まった分を味噌で調整しましょう」


 しっかりと味を調えた芋汁をシャッドさんと堪能した。


「おいしいです。僕はこの味を世界に広げたいです」


「それはいい考えですね。具体的にはどうするんですか?」


 これが最善の味かと言われるとわからないが、俺はこれで満足だし、シャッドさんも満足したなら先に進んでも大丈夫だろう。


「まずはギルドで、この味の芋汁を提供してもらえるように掛け合います」


「そうですか、それで?」


 こういう時はオウム返しで話を聞くのがいい。悩み相談でも、改善策を部下から聞き出すときでも下手に自分の意見を途中に挟んでしまうと、部下の意見が自分の意見に上書きされてしまう。そうなると、部下の能力以上のものを要求することになってしまったり、部下が成長しない。『それで? それで?』を繰り返すことで本人の目的を絞ったり原因の真因を探れる。なんちゃってなぜなぜ分析だな。あんまりやりすぎると、しつこいと嫌われるんだよな。塩梅が難しい……


「問題は調理法です。昨晩マスターと作ってみましたが、肉・味噌・コンブ汁の問題が解消されればどこでも作れるでしょう」


「なるほど、その三つは今のところグランディールが持っている情報ですもんね。それで?」


「旨味成分の話を聞いて、肉は他の肉でも代用可能かもしれません」


「そうですね、肉に含まれている成分の相乗効果ですから、風味は違えど旨味を上げる効果は期待できますね」


 なぜなぜ分析で必要なこと、それは否定しないことだ。途中で否定を挟んでくる管理職はまだ教育が足りてないとおもっている。否定するなら最後にアドバイスという形が良いと俺は思う。


「コンブは乾燥させて使います。乾燥させるということは保存食と変わりないでしょう? ベイツで作成し、それを各ギルドに売却します。味噌は今ギルドで使われている物でも代用可能か帰ったら試作してみます」


「それはいいですね、昆布があればおいしい芋汁が格安で食べれますね」


「いえ、多分味噌はマスターが作った味噌の方が格段においしいです。味噌については僕が生涯を掛けてでも、マスターと同レベルの物を作れるように研究します」


「俺もスキルで作っている物なので製法までわかりませんが、頑張ってください。ひとまず、大豆と塩を使うのは間違いないですよ」


「ありがとうございます。コンブもできるだけ安く提供できるように工夫します。ギルドで食べる芋汁の価格が上がってしまっては芋汁の意味がなくなりますからね」


「それはいいですね! じいちゃんも喜ぶと思います」


「え?」


 ん? なんか俺まずいこと言ったか?

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