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78.昆布探索

「できました! さっそく食べましょう!」


 俺達は器に芋汁を盛り付け、クランハウスに居るメンバーに声掛けをした。

 今いるメンバーはエメさん、ナミさん、ナギちゃん以外のメンバーがいる。ランドくんはクランハウスでシャッドさんと一緒にいたみたいだ。


「これがアタルさんの思い出の味か?」


 ポッパーさんが興味深そうに眺めている。


「まだ食べてないのでわかりませんが、食材は限りなく近づいています。それでは……いただきます」


 俺は芋汁の汁をすすった。

 結果は……かなりおいしくなったが何かが物足りない。いや、すごくおいしいんだけど……芋汁としては進化してるんだけど、まだ改良の余地がある。そんな感じの味だった。


「おいしい! 芋汁がこんなにおいしくなるなんて!」


 シャッドさんは感激しているが、どうしたものだろう? この感激している人に、今一つ足りないと言っていい物だろうか?


「確かにうまいな。作るのもそんなに手が掛からないし、これも食堂で出そうか。いや、芋の問題がある、どうしたものか……」


 カイリさんは商品化を検討し始めた……あんまりメニュー増やしすぎると大変になると思うよ?

 他のメンバーにも好評だった。この世界のスープは具材が少ない、味噌汁もそんなに具沢山ではなかったから、野菜と肉がゴロゴロ入った汁ものは斬新だったのだろう。


「カイリさん、商品化は待ってくださいね。俺の思い出の味はもっとおいしかった記憶があるのです。皆さんが喜んで食べてくれるのはすごく嬉しいのですが、せっかくなので完璧を目指しましょう! 完璧な芋汁の再現です」


「なにかあてがあるのか?」


 カイリさんの質問だ、料理の話となるとこの人はすごく真剣だ。どうして冒険者をしていたかが不思議なくらい料理に向き合っている。


「……実はあります。昆布という海藻で、出汁が取れるんですが、この近辺に生息しているかどうかですね。明日探しに行ってみます」


「僕も行きます。芋汁のダシに使えるものは、僕ができるだけ採取したいです」


 シャッドさんは芋汁のことになると、ものすごく積極的だ。いいことなんだけど、俺がこれが完璧な芋汁宣言をしちゃったら次の目標が心配だ。燃え尽き症候群にだけはならないように気を配っておかなければいけない。


「それでは明日、昆布を探しに行きましょう。ついでに俺はイカと、他の釣れる魚も探します。他のメンバーは冒険者ギルドにダンジョンについての報告を頼んでもいいですか? ドロップ品も結構ありますので、持てるだけ持って行って納品してきてください」




 俺は今、イカが釣れた磯場にシャッドさんと居る。

 この海に昆布は生息しているのか非常に楽しみだ。


「シャッドさん、昆布は海底に生えている海藻です。泳ぎは得意ですか?」


「あまり泳いだことはありませんが、潜る程度なら大丈夫なはずです」


 シャッドさんは非常に乗り気である。ちなみに俺はあまり乗り気ではない。今は春、海水浴シーズンはまだ始まっていないだろう。そこに潜るなんて……


「とりあえず準備運動が必要です。これからシャッドさんは海に潜ることが多くなるかもしれません、準備運動をせずに海に入ると非常に危険です。かならず準備運動はしてくださいね!」


 そういって、俺はシャッドさんと準備運動を始めた。

 といっても、準備運動をどうするかはわからないのでラジオ体操をしておいた。何もしないで海に入るよりはマシだろう。


「それでは行きましょう。ナイフは持ちましたか? 海中でケガしないように注意してくださいね」


 そういって俺は磯場からゆっくりと海に降りて行った。



 わかっていたけど冷たい……春の海は予想通り冷たい。しばらくすると慣れてくるのだろうか?

 異世界の海は非常にきれいだ、潜らなくても結構な水深まで見えるのだ。ついでに大きな魚とかイカとかも見えるので襲ってこられたらどうしようと若干不安ではあるが、今のところ近づいてこない。そこだけは安心した。


 海底には岩場の他に緑の草が見える。あれが昆布やワカメならラッキーだ。


「シャッドさん、海底に生えている緑の草を採取しましょう。その中に昆布があるかもしれません」


 俺達は海底に潜っていった。


 海底は海面から見る以上にすごかった。なにがって、海藻がでかいのだ。1m以上は長いんじゃないかな? もしかして、海藻ってこのくらいの長さが普通なのだろうか? それにしても、この階層の中にタケダとか隠れていたら怖いな。


 ひとまず俺は海藻を片っ端からナイフで刈り取り、磯の方へ運んだ。

 海藻を刈り取り途中に思わぬ収穫があった、それはエビだ、異世界サイズででかかったがエビも有り難く回収した。ただ、ザリガニもそうだが海老は掴むのが怖い。怖いのでナイフを頭に突き刺してそのまま浮上した、1尾目のエビはエビが後退する方向と逆に刃があった為にスパッと切れてすっぽ抜けたが、2尾目からは刃の向きも工夫して順調に摂れた。刃物が切れすぎるのも困ったものかもしれない。


 1時間ほど海藻と海老を回収し、俺達は陸に上がった。

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