77.芋汁を作ろう!
「ただいま戻りましたー!」
俺は今、クランハウスに帰ってきた。
今回のダンジョン攻略で、ブルーブルの肉が手に入った! さっそく芋汁にチャレンジしなければいけない。
「シャッドさん、芋汁を作りましょう! グランディール特製芋汁です!」
俺は興奮気味にシャッドさんへ声掛けをした。
「マスターおかえりなさい。牛肉が手に入ったんですか?」
「なんと、ブルーブルの肉が手に入ったのです」
マジックバックからブルーブルの肉を取り出し、シャッドさんに見せる。
「……高級食材で芋汁なんて贅沢ですね」
「ダンジョンのドロップ品です。ここでは安価で食べれるようになりますよ! シャッドさんと一緒に作りたくて、ダンジョン内では作らなかったんです。カイリさんもお手伝いお願いしますね!」
俺とカイリさん、シャッドさんの三人は厨房へ向かった。
「まずは材料を切りましょう。カイリさん、ブルーブルの肉を薄くスライスしてもらえますか? できるだけ薄くしてください。シャッドさんは野菜をお願いします。芋・まるネギ・キャロの皮を剥いて、こんな感じにザクザクと切ってください」
じいちゃんの芋汁の再現だ。じいちゃんの料理は結構ワイルドだった気がする。野菜はゴロゴロ、肉もいっぱいだった。
野菜が切り終わったら、鍋に水を入れて野菜を全投入だ! そしてしばらく煮る。
「思い出の味の芋は、少し溶けるくらい煮られていた気がします。しばらく煮て様子をみましょう」
「それにしても、簡単な調理法ですね」
たしかに今のところ、野菜の皮を剥き、ざく切りにして鍋に入れただけ、簡単だ。
「肉はこんな感じでいいか?」
カイリさんが肉をスライスしてくれた。さすが料理人、上手にスライスされている。
「ありがとうございます。あとは一口大のサイズにカットしていきます。肉は最後に入れますね!」
「わかった。今のうちに切っておく」
「お願いします! いやー、楽しみですね。上手にできると嬉しいなぁ。ちなみに! 俺の故郷では、この具材にスパイスを調合したものをいれるとカレーになり、肉を豚にして味噌汁を作ると豚汁になります。カレーの場合はもっと水を控えめにしてたかなぁ」
「アタルさん、俺はあんたの故郷について興味があるんだが、教えてくれないか?」
カイリさんが俺の故郷について興味があるようだ。さすが元冒険者、いや、冒険者に復帰したから現役の冒険者なのだが……
「そうですね、煮えるまで時間がありますし、ちょっとお話ししましょうか……」
「俺の故郷は、まほろば王国と昔は呼ばれていました。でも、まほろば王国には王様が居たことがないんですよ。だから、最近はまほろばの里と呼ばれてましたね。ちなみにこの大陸ではありません」
「マホロバか、聞いたことないな」
そうだろうね、だってこの大陸どころかこの世界でもないからね。
「まほろばはですね、『素晴らしいところ』とか『丘や山に囲まれた住みよいところ』の意味が俺の国ではあるんです」
そういえば、ドラッシェン様が住んでいた島は山に囲まれたきれいなところだった。この世界でのまほろばは、あの島のことを言うのかもしれない。
でも、湖の中にシーサーペントがうじゃうじゃ居るんだよな。危険が危ない島は住みよいとか素晴らしい部類に入るのだろうか? でも、龍が住む湖ってちょっと思い出しちゃうよなぁ。
「そんなに住みよいところだったのか?」
「んー、夏は暑いし、冬は雪が多く降るので何とも言えないですね。ただ暑くて寒いわりに、自然災害はすくないところでしたね」
「アタルさんの住んでいたところは料理が発達していますよね? 料理がおいしいから住みよいって言われていたのではないですか?」
シャッドさん、流石です。どう言い訳したらいいかわからなかったのでそれに乗っかっちゃおう!
「そうかもしれませんね。調理方法もたくさんありましたし、おいしいものがたくさんありました。美味しいものがあるところは確実に住みよいところですね! じゃあ、ここもおいしいものであふれさせて住みよいところにしちゃいましょう」
そういって俺は立ち上がって鍋を見る。いい感じに煮えていそうだ。
「芋もいい感じに荷崩れしてきました、仕上げをしましょう。カイリさん、肉を入れてください!」
「おうよ!」
投入した赤身の肉は、徐々に白くなっていった。お肉から脂も出て生きて汁がテカテカしてきた。
「お肉に火が通ったら火を止めて味噌を入れて完成です。お肉は煮すぎると硬くなるので最後にしています」
ようやく芋汁が出来上がった。じいちゃんの味を再現できているのか非常に楽しみだ。




