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74.トラとスピナさんの帰還

アタル視点に戻ります

 俺は今、肉を焼いている。


「ブレードさん、そんなに扉を見つめても扉に穴なんて開きませんよ? こっちきてお肉食べましょう!」


 ブレードさんはずっと扉を見つめ続けている。

 ちなみに俺はこの待機中、ハンバーグに挑戦してみた。スピナさんが帰ってきたらご馳走してあげるのだ!


「ブレードさんよ、このハンバーグってやつかなりうまいぞ! 今度うちの食堂で出そう!」


 カイリさんはさっそくハンバーグの商品化を考えているらしい。たしかにブルーブルの肉で作ったハンバーグはうまい。ただ、手間がかかるのが難点か? カイリさんはどうやってひき肉にするつもりなんだろう? クラフトでミンサーでも作るべきだろうか? 機械の原理は知らないけど、スキルでならできそうな気もする。


「僕はスピナさんをまた守れなかったのです、食欲なんか湧きませんよ」


 ブレードさんは、今回も何もできなく落ち込んでいたらしい。

 今回は、俺も何もできなかった。っていうか、まさかいきなりいなくなるなんて考えられないじゃん。


「俺もスピナさんのことは心配です。でも、お腹が空いていては、いざ動かないといけない時に力が発揮できません。いつでも動ける準備をして待ちましょう」


 ブレードさんはしばらくうつむいた後、俺の前まで歩いてきてゆっくりと座り、ハンバーグを食べた。


「悔しいが、おいしい。こんなに落ち込んでいるのにおいしい……」




 体感だが、二日ぐらい経った。俺達はまだ扉の前で待機中だ。

 ダンジョンの中だと時間がわかりにくいな。腹時計が正確に機能していれば二日だと思うのだが……


 ダン!



 ダン!



 突如ダンジョンが鳴った。


「皆さん、何かが起こりそうです。戦闘準備お願いします!」


 ダン! ダン! ダンダンダンダン!


「まさかスタンピードか!」


 ポッパーさんが叫んだ。


 このダンジョンは今までスタンピードが起こったことないって言ってなかった? 高難易度ダンジョンのスタンピードなんてやべーやつじゃん!!



 どごぉぉっぉぉぉん!!


 爆音とともにダンジョンが揺れた。


「……静かになりましたね。スタンピードの可能性が有るなら、一旦ダンジョンから離れたほうがいいのでしょうか?」


「僕はスピナさんを待つ!」


 ですよねー、スピナさんを置いて離れるなんて、ブレードさんにはできないですよねー。知ってた!


『主ー。1階層にスピナが寝てるよ』


 後ろを振り向くと、トラがチョコンとお座りしていた。


「皆さん! トラが帰ってきました。これよりダンジョンを引き返します」


「ちょ、待てよ!」


 ブレードさんめ、またしても俺の足を止める気か! でも今回は待てない。

 いくらこのダンジョンの1階に魔物が居ないとしても、スピナさんを一人で寝かせておくわけにはいかない。


「ブレードさん、スピナさんは1階層に居るようです。全速力で行きます、ここで待ちたいならスピナさんと合流後迎えに来ますので、おとなしく待っていてください」


 そう言って俺は走り出した。




 俺達は今、ダンジョンを爆進中だ。

 結局、みんな付いてきてくれた。俺以外にトラの言葉が聞こえた人はいないはずだが、信じてくれたらしい。カイリさんとポッパーさんが前の魔物をバッタバッタ倒し、俺の両サイドをブレードさんとグスカートさん、すぐ後ろにトレーラさんとクランクさんがいる。


「アタルさんよ。なんかキラキラしているが身体強化できるようになったのか?」


 あ、ポッパーさん気になります? 気になっちゃいます?


 実はみんなが速すぎて、ポッコリお腹の俺が一番遅いという緊急事態になってしまった。全速力で戻るなんて言った本人が一番足を引っ張るなんてヤバい。最悪ダンジョン内を、ギュッとした魔力で突き進もうかと思った時に、トラが助けてくれたのだ。

 こんな便利魔法が使えるなら、もっと早く使ってくれればよかったのに!


「そんなところです。スピナさんを守る想いが力になっているのかもしれません」


 俺の返答が聞こえていたのかは知らないが、みんな無言で突き進んだ。なんかちょっと恥ずかしい。




 1階層に着いた。

 この広いダンジョンで寝ているスピナさんを探すのは大変かと思っていたのだが、問題なかった。

 前方に光の柱が見える。来るときはなかったことを考えれば、きっとスピナさんに関係があるのだろう。


「あの光の柱に向かいます!」


「なんだありゃあ!」


 カイリさんがビックリしているが、ここはダンジョンなんだ、今更だろう。

 前の世界では、虹や光の柱はどこまで追いかけても辿り着くことができなかったが、この世界の光の柱にはちゃんと根元があるようだ。


 俺達は今、光の柱にたどり着いた。

 そこにはスピナさんが仰向けで寝ていた。

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