69.ブルーブルの肉は赤かった
ブルーブルの肉は赤かった、青い肉なんて食欲減退するに決まっている。
息子はASMRにハマって、青いお菓子だったりカラフルな食べ物を見て楽しんでいたが、あれのどこがいいのか俺にはさっぱり理解できなかった。音がいいなら、あんな派手な色をした食べ物をわざわざ選ばなくてもいいと思うのだが……
ダンジョンと言うだけあって、倒した魔物はキリとなって消え、肉と魔石が残った。稀に革のようなものもあるので、あれはレアドロップ扱いなのだろう。
肉は地面に落ちているのだが、不思議と砂やゴミはついていない。
「あ、落ちちゃった」
わざとらしく見えないように、一回拾った肉を落としてみたら土がついた。
『何やってるニャ、拾ったら地面においてダメニャ』
トラに注意されてしまった。どうやらドロップしたアイテムは、謎バリアによって汚れがつかないらしい。ダンジョン七不思議のひとつだ。まだ一個目の発見だが……
皆がドロップアイテムを拾い、俺のところに持ってきてくれる。俺はドロップアイテムをマジックバックに詰めていく。みんな誇らしげにドロップアイテムを持ってきている気がする。ブルーブルはなかなかの魔物だったりするのか?
「ポッパーさん、ブルーブルってランクはどのくらいの強さなんですか?」
「こいつは単体だとBランク、群になるとAランクだったはずだ。昔の俺達なら絶対に勝てなかったはずだが余裕だったな」
俺が大技を出しすぎてAランクまで上がってしまったようだが、問題なくて良かったと思っておこう。
「群れを呼んでしまってすみません。まさかあんなに集まってくるとは思わなくて……」
「アタルさんの攻撃は過剰すぎるからな、ピンチになるまでは様子見をしていてもいいと思うぞ」
ポッパーさんから、遠回しに何もするなと言われてしまった気がする。
いや、最終兵器なんだから余裕の笑みを持って皆を見守れと言われたのかもしれない。きっとそうだ!
「ブルーブルの肉と言えば高級品だろ? 晩飯が楽しみだな」
カイリさんは調理することに頭がいっぱいのようだ。
俺も芋汁に合う肉だといいなとひそかに思っている。この短時間に、しかも余裕をもって大量の肉を得ることができるのだ、いろんな意味でおいしい。
しばらく俺達はブルーブル狩りをした。連携を確かめたり、2手に分かれても問題ないのかの確認だ。
まぁ2手に分かれるのはちょっと微妙だったのだが……
スピナさんを護りたい人たちが3人もいるので、スピナさんプラス3名とポッパーさん・カイリさん・クランクさんに分けるとバランスが悪すぎるのだ。主にポッパーさん達の方が脳筋過ぎる、スピナさん達の方はバランスは良さそうだが実力が不安だ。
ちなみに俺はどちらにも入れてもらえなかった。
まぁ、俺とトラならこの中では最強かもしれないが、俺の攻撃が派手すぎて災厄をもたらすかもしれない、おとなしくしているのが一番だろう。
「結構時間が経っちゃいましたし、今日は地上で野宿しましょう。明日はもう少し先に行ってみましょうか」
無理はいけない、余裕をもって行こう。
肉が大量に手に入ったので、晩御飯は肉三昧だった。
ブルーブルの肉はとてもおいしかった。食用として育ててないせいか、脂身が少ない赤身のお肉だったが、十分なおいしさだ。薄くスライスすれば芋汁の肉としても十分の味だと思う。
俺はカイリさんに頼んで、薄切りにしてもらいしゃぶしゃぶにしてみたり、厚めのステーキにしてみたりといろいろ楽しんだ。どれもおいしくて大満足だ。
カイリさんも食堂のメニューに加えたいと喜んでいた。高級食材の肉だが自分で調達できるうえ、大量に得ることができるので、かなりリーズナブルに提供できることだろう。
悲しいことは、ダンジョン産なので骨が手に入らなかったことだ。骨があればスープが作れるのでさらに嬉しかったのだが、そこまでうまいことはいかない。
食後、俺はブルーブルの魔石を使いトレーラさんの杖を作り直した。
革もかなり丈夫だというので、ブルーブルの革を利用してみんなの防具を作り直した。
スピナさんのガントレットや、グスカートさんの盾などは革製にはできなかったが、防具はほとんど一新された。
これで明日以降のダンジョン探索にも余裕ができることだろう。もちろん俺の防具も更新した、後ろから見ているだけでも万が一があるかもしれない。出来ることはやっておくのだ。
防具を作り終え、みんなが試着し訓練を始めたので俺は焚火を見ながらゆっくりした。
焚火を見ていると心が落ち着くというが、俺の場合は光っている人たちが高速で視界の外辺りを高速で動き回っているので全然落ち着かない。みんな魔力循環しないで訓練してくれないかな?




