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68.ブルーな牛

「それではそろそろ、出発しましょう! まずはミドリ草を採取します」


 ダンジョン攻略において、回復手段のミドリ草確保は必須だろう。

 マジックバックに在庫があるとしても、何があるかわからないのがダンジョンだ。準備不足で後悔したくはない。


 大きな木近くのミドリ草群生地で、俺達はミドリ草を採取した。皆はクランクさんに採取方法を再確認しながら丁寧に採取した。人数が多いのであっという間に集まったので、大きな木に巻きついているツルで10株毎束にして収納した。


「それでは、ダンジョンに向かいましょう。ここから奥は初めてなのでカイリさん道案内お願いしますね」


 そうお願いし、カイリさんを先頭に歩いた。



 ダンジョンは思ったよりも近くにあった。

 柵も門もなく、ただ地面に穴が開いて階段が下に続いているだけだった。俺がコチラに来た世界の洞窟の出口もこんな感じだったな、なんだか懐かしい。

 階段を下りると、そこは平原が広がっていた。地下にも地上があるなんてとっても不思議だ。この平原に魔物が出ないのなら、馬や牛を買うことができるんじゃないだろうか? ここまで連れてくるのが大変だけど……


「この層には魔物はいないって言われている。次の層からは魔物が出るから気を付けろよ」


 カイリさんは一回来たことがあるのだろうか? 迷いなく草原の奥の方へ歩いていく。

 1時間ほど歩くと、ようやく階段が見えた。そこで俺達は休憩を取った。


「次の層からは魔物が出るんですね。どんな魔物がいるのか楽しみです」


「これより先は行ったことがないんだよな。かなり強いって言われているから気を抜くなよ」


 カイリさんもさすがに心配そうだ。逆にポッパーさんは楽しみなのか、休憩だって言っているのに素振りをしている。スピナさんも身体を動かしている。ちなみにスビナさんは剣を使わないことにしたらしい、なんと彼女は格闘を選んだ。やはり剣で切り付けて回復させるのは、聖女ではないと感じたのだろう……まだ武器に魔力を纏わせられないので回復するかわからないが。


 彼女にはガントレットをプレゼントした。あと、足にも靴の上に装着できる金属の武器を作った。これの名前を俺は知らない。

 グスカートさんには盾と剣、トレーラさんには杖を用意したが、魔力媒体がないのでただの殴れる杖だ。ダンジョンでは魔石と言うのが魔物から獲れるそうなので、それが手に入ったら改良しようと考えている。




 休憩も終わり、俺達は階段を下りた。

 そこにも草原が広がり、奥の方に大きな生物が見える。

 ずいぶんと距離があるように見えるのだが、それでも大きい、目の錯覚か?

 隊列を組んで俺達は少しづつ草原を進んだ。


「あれは……ブルーブルか?」


 ポッパーさんは知っているらしい。

 ちょい先に居るのは角が生えた青っぽく、でかい牛だ。背のでかさが俺の身長の2倍くらいある……3.5mくらいはあるのだろうか? それにしても、赤い牛じゃなくてよかった。赤い牛は世界的にも、東北地方的にも倒すのは躊躇する。青なら聞いたこともないし、首も振っていない、全然オッケーだろう。


 かなり大きいし、肉が取れるなら大歓迎だ。ぜひ欲しい、いや絶対欲しい!


「肉が欲しいです、俺が最初にどれくらい強いか確認します。ピンチになったら助けてください」


 そういって俺はジャンプした。このでかすぎるブルーブルに有効打を与えるなら上空から頭を狙うのが一番だろう。足元なんて、足しか届かないし、牛の角と足は危ない。危険がないのは上だ! 俺の漫画で覚えた戦闘知識がそう言っている!


 上空へ飛び、ブルーブルの頭上へ降りる……計画だったがちょっと飛びすぎたようだ。運が良いことにブルーブルは全長もでかかったのでなんとか腰辺りに着陸できそうだ。

 着地付近にギュッとした魔力をクラフトし、足を突き出す。


『ズドーン』という音と共にブルーブルの下半身が吹き飛んだ。ちょっと過剰攻撃だったか?


「よし、なんとか退治できました。なにがドロップするか楽しみですね!」


「あぁ、そうだな。でも、ブルーブルは群れで動くから、あまり目立つと危ないんだぞ!」


 ポッパーさんが、なにかうろたえて居る。なにかまずいことをしてしまったのだろうか。

 そんなことを思っていると、地響きが鳴り響き、奥の方から大量の牛たちが駆けてきた。やばい! 牛たちはブルーブルの赤い血に興奮しているのか、めっちゃ興奮しているようだ。


「来てしまったか、でも訓練の成果を試すチャンスだ! やってやるぞ!」


「おう! 楽しみだぜ! もし牛が後ろに抜けたらグスカートさんがしっかりみんなを守ってくれよ。俺達はまずは足狙う。転んだところで総攻撃だ!」


 ポッパーさんとカイリさんがとっても張り切っている、二人ともすでに光っている。

 スピナさんとクランクさん周りにはブレードさんはじめ、スピナさん親衛隊が周りを囲んでいる。ちなみに俺はポツンと取り残された。リュックの上にはトラがいるからきっとトラが守ってくれるだろう。ただし、この状態になってもトラは丸くなったままだ。


 ポッパーさんとカイリさんは、牛の群れに足を切りつけながら突き進んでいる。

 前の牛が転んだこともあり、後続の牛も転び、大混乱になってきた。


 転んで動けなくなった牛を見て飛び出していった少女がいる、そう! 我らが聖女、スピナさんだ。

 親衛隊を置き去りにして、スピナさんはブルーブルに突進し、頭を思いっきりぶん殴った。

 スピナさんのパンチはかなりの威力があるらしく、ブルーブルは泡を吹いて動かなくなった。そこから一歩遅れた感じでブレードさん、グスカートさんが突撃していった。彼らも剣でブルーブルの頭を狙っているようだ。首の方が良さそうだが、首は太くて切れないのだろう。


 さらに遅れてクランクさんだ。クランクさんは昔のぽっちゃりクランクさんではない。今のクランクさんはなかなかのムキムキマンだ。昔、ボディービルダーをしていた友人が、一回脂肪を付けてから筋肉を付けないと筋肉が大きくならないと言っていたように、彼の身体はポッパーさんにも負けないような身体になっているのだ。そして、彼の武器は斧。かなりの大き目の、重量がある斧なのだがクランクさんは軽く振り回す。

 クランクさんは、ブルーブルの首を確実に刈っていった。動きこそ他のメンバーよりもちょっと遅いのだが威力でいえば一番かもしれない。


 最後はトレーラさん、彼女の炎魔法だが、俺の「火って高温になると赤じゃなくて、青とか白になるんですよねー」と言った一言に火がつき、彼女は燃えた。もう、魔力循環中はメラメラと赤いオーラが彼女を覆い、近寄りがたい雰囲気だった。

 そしてようやく青いファイアーボールを編み出したのだが、そこでも「ファイアーボールって球が大きくて仲間の邪魔になりそうですね。もっとシュッとならないですか? 矢のように尖っていれば空気抵抗もなくなって、スピードが出るかもですね」との一言で、さらにずっとうんうん唸っていた。

 多分この数か月で一番悩んでいたのがトレーラさんだったかもしれない、魔法使いが居ないので相談もできない。相談はできないけど、いちいちチャチャ入れてくる上司がいるからきっとやりにくかっただろう。

 しかし彼女はやり切った、スピナさんがいろいろと相談に乗り、魔力循環とギュッとする方法を練習しまくり、青い炎の矢を作るのに成功した。


 この魔法、準備に時間がかかるのだが威力はなかなかだ。そして遠距離攻撃。


「貫け、ブルーアロー!」


 トレーラさんから発せられた炎魔法がブルーブルの眉間を貫いた、もしかしたら後続の牛たちにも刺さっていったかもしれない。


 結果的には圧勝だった。 これだけ牛肉があればいっぱいお肉食べれるな。

 あれ? 青い牛だけど肉まで青とかないよね? それだったら怖いんだけど……

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