65.天敵再び
毎日恒例の冒険者ギルドに行ったスピナさんが、三人のお客さんを連れてきた。
スピナさんは今も毎日冒険者ギルドに通っている。これは今のところスピナさん専業だ。なんてったって、他のクランメンバーは脳筋だったり、女性だったり、未成年だったりとお願いしにくい。スピナさんも女性なのだが、毎日ポッパーさん、カイリさんと訓練をし、体力が付いてきたのか苦にならないらしい。
スピナさんもムキムキになってしまわないか、若干不安だ……
さて、スピナさんが連れてきたお客さんだが、若干一名見た目が良くない。いや、見た目はいいんだが、目元を覆う仮面を付けているし、スピナさんの顔色も良くない。
「スピナさんお疲れさまでした。お客様ですか?」
「はい、冒険者ギルドで会いまして……パーティーに加入したいそうなので、こちらへ連れてきました。食堂で面接をお願いします」
「……わかりました」
俺たちは今、クランハウスの食堂に居る。
俺とスピナさんが並んで座り、目の前には二人の男性と、一人の女性がいる。
そして俺の目の前には三名の冒険者ギルドカードが並んでいる。ちなみに全員Eランク冒険者だった。
「ブレードさん、グスカートさん、トレーラさんですね。職種は、聖騎士に重騎士に火魔法使いと……」
そこの仮面の男! やっぱりお前か! 目元を隠さなくてもそのイケメンオーラは隠せてないからな!
「ブレイドさん、Dランクのカードを持ってましたよね?」
「登録を解除して新たに作り直した……俺はブレードだ」
隠す気あんの? ないの?
「ブレードさん、パーティー加入の動機は?」
「スピナさんと共に生きていきたいと考えた……」
なんか告白みたいなことを言い出したぞ? チラッとスピナさんを見たけど全然赤面してない。脈無しと見るのか、共に生きたいっていうのはよく使われる言葉なのか?
ほかの二人とも話してみたが、クランの決まりは把握しているらしい。
冒険者ギルドから普通に歩くと結構時間がかかるからな、スピナさんにも説明受けたのかな?
スピナさんからも話を聞いてみると、この三人は小さい頃からの知り合いらしい。
幼かったころ教会に居たときに、聖騎士見習いとしてブレイドさん? いや、めんどくさいからブレードさんでいいや! ブレードさんを紹介されたそうだ。
そして、ブレードさんの知り合いである、グスカートさんと、トレーラさんと知り合ったらしい。聖騎士として厳しい訓練を受けているブレードさんを見て、自分たちも共に聖女を護りたいと思い、訓練してきたようだ。
出目までは聞いてないが、全員Eランクのギルドカードになっているということは、そういうことなのだろう……ギルドカードって簡単に作り直せるの? 俺の管理職も作り直せるのかな?
王都で一度パーティー加入を断ったのだが、名前もギルドカードも一新して来るし、クランの決まり事もしっかり守るというので、やる気は十分と判断し問題はないなと思ったので、最終判断はスピナさんにお任せした。
スピナさんの決断は、全員加入オッケーという返事だった。なんだかんだで三人とは仲が良かったようだ。前回は王都で教会にバレるのではないかという不安が大きかったようだが、ここはベイツの街。ブレードさん達もスピナさんのことは内密にし、家出同然でここまで来たらしい。
それにしても、トレーラさんは魔法使いか。ルイーダさんに止められなかったら、俺の職種は大魔法使いだったわけだが、魔法使いの魔法を見たことがない。トラに言えば何かしら見せてくれそうだが、猫は気まぐれだからなぁ。
「それでは、ブレードさん、グスカートさん、トレーラさん、これからよろしくお願いします。三人はEランクの冒険者ですからね、まずは自分の身を護るために特訓です。聖騎士がスピナさんに守られていたら笑われちゃいますよ。そろそろクランのメンバーが集まっている頃でしょう、訓練場に行きましょう」
「……僕は弱くない!」
パーティー加入が決まったからなのか、さっそく隠すつもりはなくなってしまったのだろうか? 僕って言うようになっている。
そういって俺たちは訓練場に向かった。
最近の訓練場はやたら湿度が高い。おかげで冬なのに熱く感じるくらいだ。
原因はポッパーさんと、カイリさん。カイリさんの宿は朝飯が終わると、夕飯までは食堂はやってないらしく、昼は訓練場でポッパーさんと訓練をしている、そこでスピナさん達が合間合間にCランク冒険者達からアドバイスを受けている。多分うちのクランの若手はかなり高い水準にいると思う。
「「「……」」」
三人が固まっている、ポッパーさんとカイリさんの動きに驚いているのだろうか?
いや、視線はランドくんに向かっている。もしや、ランドくんにも勝てないような感じなのか?




