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57.暴走してしまったかもしれない

「エリーさん、おはようございます!」


 俺は今、ベイツの冒険者ギルドにきている。


「アタルさん、おはようございます。ミドリ草の納品ですか?」


 エリーさんも冗談が上手になったものだ。昨日帰ってきたばかりでミドリ草が納品されるわけないだろう? もしかして本当に『ミドリ草の人』になっちゃってるわけ? まぢで?


「はっはっはー、エリーさんも冗談が上手になりましたね! 今日はパーティーメンバーを連れてきました。パーティー登録お願いします!」


 そういって、みんなを紹介した。

 今回新たにエスポワールには8名が追加になる、さすがにエリーさんではキャパオーバーしたらしく、ルイーダさんのサポートも借りてみんなの登録を完了した。ちなみにFランクは未成年ということもあり、職種は未記入でも問題ないそうだ。逆に職種が決まっているシャッドくんは珍しいタイプらしい。


「まだ一つのパーティーで活動しますがクランを結成します、クラン名は『グランディール』で登録したいと思います。クランハウスはカイリさんの宿を借りました」


「……わかりました。登録しておきます」


 クランについてはエリーさんではなく、ルイーダさんが対応してくれた。

 ちなみにクラン名については、みんな俺に一任してくれたので勝手につけた。別に変な名前にしたわけでもないから大丈夫だろう。これで『釣り三昧』とかって名前にしちゃったら、非難ボーボー大炎上だったかもしれないが……




 パーティー登録とクラン登録はサクッと終わった。

 本日はこれから自由行動だ、といってもみんなやることを決めていたらしい。


 スピナさん・ナギちゃん・ランドくんはサーフへ流木集め。


 カイリさん・ポッパーさん・シャッドくんは訓練。シャッドくんは一体どこを目指しているのか不明だ、もしかしたら戦い方の師匠もカイリさんになってしまうのかもしれない。


 エメさん・ナミさんは食堂の為の食材の買い出し。

 クランハウスの食堂は夜だけの営業になった。もう、食堂じゃなくて酒場に変わる感じだけど、元からそんな感じだから問題ないらしい。


 そして俺とクランクさんは、土地探しだ。まずは村長さんのところに行く、ついでに村長さんの家周辺の修理依頼をクランクさんに集めてもらい、依頼をこなす予定だ。街の中を良く知らないからクランクさんが居てくれて大助かりだ、効率が違う。


 四件の依頼をこなし、村長さんの家に着いた。村長さんの名前は、確かゴンさんだったと思う。

 ゴンさんに聞いてみると、結構な数の空き家はあるらしい。最近は落ち着いたが、一時期人口の流出が続いて空き家と休耕畑が結構あるようだ。

 街の外れの方にはそういった集落も存在するので、商業ギルドでまとめて買い取ってみてはどうかと教えてもらった。

 今から商業ギルドにも行ってみると話をしたら、ゴンさんもついてきてくれるということで、一緒に商業ギルドに向かった。




 俺は今、商業ギルドにきている。

 商業ギルドの受付はみんな男性だった。商人は男性が多いのだろうか? それとも女性が多いから男性の受付が多いのだろうか?

 ゴンさんがギルドマスターを呼んでくれたので、受付の人とほとんど会話することなく、二階の応接室に向かうことになった。


「実は、ベイツの街にクランを作ることになりまして、畑や訓練場が欲しくて広い土地を探しているんです」


 商業ギルドのギルドマスター、名前がちょっと長くて覚えきれなかったけど……ギルドマスターがニコニコと俺の話を聞いている。


「治安が悪くなければ、中心街から離れていても大丈夫です」


 ギルドマスターのニコニコが止まらない。そんなに売りたい土地がいっぱいあるのか?


「それは素晴らしいですね! ベイツの街にクランができることは大賛成です! いい土地があるんです。今から行ってみましょうか?」


 と誘われ、俺は郊外の集落へと足を延ばした。

 っていうか、値段が聞きたい、聞きたいがなんか聞ける雰囲気ではなかった。




 上客と思われたのか、馬車で移動することになった。

 俺はこの世界の馬車は苦手だ。とにかく跳ねるからだ、王都の高級馬車があれなのだから、ベイツの馬車もすごい、とにかくすごいのだ! トラが内なるものを抑えているから、馬はゆっくり進むが道が良くないのかとにかく跳ねる。

 馬車で三十分くらい経っただろうか? ようやく馬車から解放された。


「ここの集落は数年前まで大工さん達が暮らしていましたが、仕事がなく引っ越していってしまったのです。少し奥には東門があり、門を抜けると森があるので木材を取りやすい場所なんです」


 なるほどなるほど、門があるなら門番さんもいると思うし、治安はそれほど悪くないのかな? というか、ベイツ自体が平和だからな、そもそもが安全な街なのかもしれない。


「ちなみにどっからどこまで、買い取れるんですか?」


「そうですね、この柵の内側でどうでしょう? 白金貨五十枚でお売りできます」


 白金貨は金貨五百枚ってことなんだろうか? 知らない貨幣が出てきた。王様は金貨で千枚用意してくれたのに……

 というか、この柵どこまで続いてるんだ?結構広いぞ?


「クランクさん、白金貨一枚は金貨何枚ですか?」


「十枚ですね」


 なるほど、普通に十枚づつ上がるので、わかりやすくてよろしい。


「ずいぶん広いみたいですけど、これはお買い得なんですかね?」


「かなり広い土地ですが、アタルさんのクランはもっと大きくなるじゃろ? これくらいないと足りないんじゃないか?」


 お、ゴンさんいいこと言うじゃないか。そうだ、俺のクランはもっともっともっと大きくなるのだ。だから広い土地が必要だ。なら仕方がない……


「買います!」


 俺は即決した。

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