56.第三回パーティー会議を始めます
「それでは、第三回パーティー会議を始めます。皆さん拍手!」
パチパチパチとみなさんからの拍手を貰った。みんなのやる気がすごい。
現在、宿の食堂にはサーフに集まった全員が揃っている。ナミさんやエメさんの他、ナギちゃんとランドくんまでいる。ちなみに食堂は今日までお休みということになった。なぜか? それはさっき俺が見せた魔力循環を使った身体強化が原因らしい。
あれを見たナミさんは、食堂どころじゃない! ということで、急きょパーティー会議の開催を申請してきた。ナミさんはパーティーメンバーじゃないんだけど……
「質問なんですけど、みなさんエスポワールに入りたいって聞きましたが、本気ですか?」
皆さん、刻々とうなづく。
皆さんの中には、クランクさんをはじめ、ランドくん、ナギちゃんも含まれる。なんか知らないが、みんなパーティーに加わりたいという報告を受け、現在のパーティー会議に至っている。
「俺としては反対はないんですけど、決まりごとの『さん』付けだけは守って欲しいんですけど、大丈夫です?」
俺はみんなに『さん』付けについて改めて確認した。『さん』付けはパーティー内の決まり事であること、パーティーのお仕事の範囲内の決まりごとの為、プライベートの家族間での呼び方は自由だが、お仕事中の時はお仕事相手にも『さん』で呼んで欲しいことを伝えた。
『さん』をつけることで、私はあなたを成人として対応してますよ。私はあなたを私と同列としてみてるんですから頑張ってくださいね。という思いが込められていることを説明した。
それを聞いても皆の意見は変わらない。
「じゃあ、明日に皆さん一緒に冒険者ギルドに行ってパーティー登録しちゃいましょう。カイリさんは食堂続けてくれるんですよね? 冒険者に戻られると、シャッドくんの師匠が居なくなっちゃいます」
「大丈夫だ! 両方やる!」
全然大丈夫じゃない返事が返ってきたが、大丈夫なのか? シャッドくんも頷いているし、本当に戦う料理人になってしまうのかもしれない。
「あ、あとクランハウスの件ですが……」
「それは家を使えばいいわ! 一階の食堂は今まで通り経営すればいいし、部屋はパーティーのメンバーで使うといいわ」
ナミさんが乗り気だった。まぁ、今まで宿泊客はいなかったし、お客さんが増えたと思えばいいのかな?
「じゃあ、お言葉に甘えますね。あとは、皆さんの訓練場所ですね。さすがに魔力循環の訓練は目立つんですよ。どっか訓練場を作るか、山の方で訓練するしかないと思うのですが……」
「村長と商人ギルドにあたってみましょう。アタルさんは芋も育てたいんですよね? 畑も合わせて、いいところがないかあたりましょう」
クランクさんも乗り気だった。クランクさんは薬師の仕事はどうするんだろう? 副業かな? いや、冒険者の方が副業になるのか?
「明日パーティー登録が終わったら、土地がないか確認しに行ってみましょうか。クランクさん付き合ってもらっていいですか?」
「わかりました。私は自分の家がありますのでクランハウスには泊りませんが、仲間として皆さんよろしくお願いします」
クランクさんの了承も得たし、明日はやることいっぱいだなぁ。秋にどんな魚が釣れるのか気になるけど、やることやってからになりそうだなぁ。
「他になにか話し合うことありますか?」
「魔力循環についてはどこまで秘密にするんだ?」
カイリさんの質問だ。
「目立ちたくないだけで、秘密ってわけではないのですが……魔力循環の訓練方法はパーティー内での秘術としましょう。訓練方法を秘匿とするだけで、命の危険を感じたり危ないと思ったら、使ってもらって大丈夫ですよ」
「わかった」
カイリさんの他に、ポッパーさんやスピナさんも頷いている。他のみんなはそんなに危ない目にあった経験がないのだろう、ポカーンとしていた。
「あ、そうそう。訓練場ができたら是非皆さんの戦闘技術をメンバーにも教えてください。できれば自分の得意なことを教えあえれば最高ですね。または、自分に向いていると感じたものに特化していくのも素敵かもしれません。身体強化だけでも、突き詰めればあんな感じになるんです。なんでも極限まで極めれば考えられなかったことができるようになるかもしれません」
俺もみんなの訓練に興味があるので参加したいと思っているし、いろいろ学びたい。クラフトのスキルだけではみんなを守れない時が来るかもしれない。そんな時に皆を守れる程度の力は欲しい。なんてったって、こんなにたくさんのパーティーメンバーが集まったのだ。俺はみんなを家族の様に大事にしていきたいと思っていた。




