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55.筆頭冒険者が帰ってきたぞー!

「エリーさん、ただいま戻りました!」


 俺は今、ベイツ冒険者ギルドに居る。帰還したことを受付嬢のエリーさんに報告しているところだ。

 ベイツを離れて約二か月、冒険者が居なくなったベイツの受付嬢は、さぞ暇を持て余していただろう。


「アタルさん、おかえりなさい。家の修繕の依頼が溜まってきているので、明日からお願いしますね」


 早速指名依頼が溜まっているとの報告を受けた。さすがベイツ筆頭冒険者、人気者だな。明日から頑張ろう!

 現在、夕方に近い時刻なので今から依頼を受けるよりは、まずは宿だろう。実は宿に回るよりも先に冒険者ギルドに立ち寄ったのだ。理由は簡単、約二か月も経ったのに依頼が無かったら、凹んで寝れなくなっちゃうからだ。でもよかった、依頼はあった。安心して寝れる。


「了解です。あと、カイリさんが護衛を完璧にこなしてくれました。これ、報酬の金貨三十枚です。カイリさんに渡してくださいね」


「……」


 カイリさんは、あまりうれしそうじゃない。ちゃんとした報酬だ、受け取って欲しい。行きと帰り共に野盗には襲われることはなかったが、そういう契約なのだ。もしかしたら次回はじゃじゃ馬が居ない野盗集団に襲われるかもしれないじゃないか。遠慮なく受け取るが良い、今の俺は金持ちなのだ!




 冒険者ギルドを後にし、カイリさんの宿に向かった。


「トラちゃん、おかえりー!」


 ナギちゃんが元気いっぱいに迎えてくれた。ナミさんも元気そうだ。よかったよかった。


「はい、これナギちゃんにお土産」


 スピナさんがナギちゃんにお土産を渡している。

 そこで俺は気が付いた! あれだけ出発時にお土産を買おうと決意していたのに、帰るのに頭がいっぱいでお土産を用意していなかったことに今気が付いたのだ。やばい、えらいこっちゃだ!


「ナミさん、ナギちゃん、俺からはお土産話で……」


 申し訳なさそうに話していたが、俺の言葉は届かなかった。


「ポッパーさんに、エメさん、お元気そうね。アタルさんにパーティーにでも誘われました?」


 ナミさんが後から入ってきたポッパーさん一家に声をかけていた。このままお土産の話はなかったことになってくれるかな?


「あぁ、アタルさんのパーティーにお世話になることになった。これからこの宿でお世話になると思うのでよろしく頼む」


「ナミさん、お久しぶりね! 旦那がアタルさんに目をかけてもらってホント感謝しているの! これからよろしくね」


「初めまして、ランドと言います。これからよろしくお願いします」


 ポッパーさん一家が挨拶をしている。ポッパーさんとエメさんは、ナミさんと認識があるらしい。ランドくんは初めましてなのね。挨拶できてえらいぞ!


「初めまして、料理人見習いのシャッドと申します。この宿の食堂でカイリさんに弟子入りしたいと考えています。どうかよろしくお願いします」


 シャッドくんも挨拶をしている。食堂のお手伝いじゃなくて、カイリさんの弟子入りの形になったのね。俺知らなかったけど、今聞いたからいいよ。うん、大丈夫、気にしなくてイイヨ……




 皆が挨拶を終え、各々毎に部屋を割り振った。ポッパーさん一家は大部屋に、シャッドくんは一人部屋だ。ちなみに宿代はリーダーの俺が一括して払うことにした。うちのパーティーが出来高制ではなく月給制なのだ。パーティーの総収入は増えれば皆の給料が増えるし、減れば収入が減る。ただし、住む場所に関しては俺が保証する形にした。

 クランハウスについては夜、ナミさんを交えて話すことにしている。夜までに、カイリさんがナミさんに概要を説明してくれていることだろう。




 みんなの荷物を部屋に分配し、旅に出たメンバーは全員サーフに集合している。一旦自宅に戻ったクランクさんもサーフに居る。

 なぜこのような状態になっているのか、それは、先日スピナさんが「アタルさんの身体強化はすごいはずです、私に的確な指導をしてくれたのですから!」と力説したからだ。ちなみに俺は身体強化が得意ではない。でも、できないとは言いたくない。


「俺は身体強化の加減ができないのです。ベイツに帰ったら、海に向かって身体強化の一撃をお見せしましょう!」


 と、見栄を張ったのだ。それを皆覚えていたのか、ポッパーさんとカイリさんに引きずられるようにサーフまで連れてこられた。カイリさんはクランハウスについて話し合わなくていいのか? と思ったのだが、ナミさんとナギちゃんも居た。みんなのワクワクが俺を攻撃する。胃が痛い……


「じゃあ、海に向かってパンチしますね。そんなに期待しなくてもいいですよ」


 といって、腰を落として正


 トラがなぜか方向を買えるように言うので、右足を少し引いて向きを変える。

 あとは、グルグル廻してギュッとしてドンの魔力をクラフトし、突きが当たる位置に置けば完了だ。


「せい!」


 シュッと拳を突き出したら、ドゴォッォォッォォォンという音と共に海が割れた。

 あぁ、完璧にやりすぎた感がある。でも、これで俺がパニックになってしまったらみんなが不安がるだろう……


 だから俺はニヤリと皆に振り返り


「こんな感じですかね?」


 と言った……



 ……



 結構長い時間の沈黙があった、海は元に戻り、反動で波がザッパンザッパンしている。


「よし、俺は魔力循環を極めるぞ!」


 ポッパーさんが回復した様だ。


 そこからは、俺も俺も、私も私もと、なぜかみんなで盛り上がった。

 なぜか冒険者ではない、クランクさんやエメさんまで盛り上がっているけど大丈夫なのだろうか?

 もしかしてみんな戦闘集団になってしまうのか?


 そう思いながら、俺は笑みを続けていた。

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