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52.お城のかしこまった会話はつまらない

「スキルで作成できるので安定供給は可能です。しかし私はベイツの街が気に入っているので、あちらで活動したいのです。王都に残ってポカリエスを作るのは遠慮したいです」


「……わかっておる。そこの少女もベイツが気に入っているのだろう? ポカリエスがあれば、国民をたくさん救うことができる、定期的に譲って欲しい。薬師クランクには伝えてあるが、ポカリエス一つ金貨10枚で不満はないか?」


「必要な方に必要な分だけ届けていただけるなら問題はありません。裁量は王様にお任せします」


 といい、マジックバックからポカリエスを99本取り出しテーブルに置いた。


「あ、このマジックバックは祖父の形見なんですよ。背負える形で機能的ですよねー」


「……とりあえず、ポカリエスの代金を用意しよう」


 背負えるタイプのマジックバックってやっぱり珍しいのかな? じいちゃんが作ったって言ってたし、多分一点物なんだろうな。


「あ、スピナさんのことは内緒にしてくださいね。王都にきてトラブルに巻き込まれましたし、ベイツに居るっていうのもできるだけ内緒に。あ、ポカリエスも出所はできるだけ内緒に……そもそも、スピナさんとポカリエスの出どころが一緒ってやばくね?」


 俺は今、重大なことに気が付いてしまった!


 まさか聖女のいる場所で、伝説級ポーションのポカリエスが作られているなんてことがバレたら、えらいこっちゃになるのではないのかと……。作っているのは俺だとしても、王都に付くまでにどんな風に伝わっているか容易に想像できる。


「シーチキング様! 絶対に内緒で頼みますよ!」


「ワシの名はシーチだが……できるだけ内密にしたほうが良いのは確かだな。できるだけ配慮する、ポカリエスの受け取りも信頼できる騎士に任せよう」


 ちょっとパニくって、王様の名前を脳内変換したまま呼んでしまった。今代の王様が寛大な人で非常に良かった。


「スピナさん、王様が約束してくれました。これで安心ですね!」


「私はアタルさんの王様への発言に安心できてません!」


 スピナさんの不安の解消まではいかなかったようだ。


「あ! せっかくなのでもう一つお願いがあります」


「なんだ? これ以上の隠し事か?」


 隠し事なんて失礼だな、あらかじめ問題になりそうなことを考えて、対策を取ってもらおうとしているだけじゃないか。


「隠し事じゃありません。実は、さっきまでマジックバックの上に居た、この猫なんですけど。珍しい種族らしいんです。街の人達に魔物と勘違いされないか不安なんですけ、なにかこの猫は大丈夫ですよ的な証はないですかね?」


 俺は、トラをグイっと抱っこして王様に尋ねた。


『自分の身は自分で守れるニャ』


 と、トラは言ってるが俺は心配なのだ。きっとトラはやり過ぎてしまう、じいちゃんが被害にあった、血の早朝事件の二の舞になっては困るのだ。

 いや、そう考えるとトラは大丈夫じゃないから、大丈夫な証はもらえないことになってしまうのだが……


「それは、考えておく。ベイツでは特に問題なく生活しているのだろう?」


 そうだった! ベイツでは、トラはおやつを貰えるくらいに馴染んでいたんだった! だったら、今のところ証はいらないのか!


「そうでした! ベイツに居ればすべて解決するんでした。さすが王様!」


 やはり俺にはベイツが一番向いているのかもしれない。

 よし、お金ももらったしさっさと帰ろう。ダンジョンや、王都の釣りができないのは残念だが、スピナさんのことも心配だ。ベイツで気分新たに冒険をしよう。


「それでは王様、これで失礼しますね。なにか困ったことがあれば、ベイツ筆頭冒険者のアタル・ウミカワを頼ってくださいね!」


 そう言って俺は城を後にした。

 帰り道もやっぱりすごく跳ねる馬車に揺られながら……ケツがもげそうだ。

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