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51.王様の名前は……

 俺は今、城へ向かっている。

 俺が泊っている宿には、それはそれは立派な馬車が来た。こんなに立派な馬車では極秘の謁見にならないのではないかと、不安になってきた。しかし、その不安以上にこの馬車は揺れる、がったんがったん跳ねるのでお尻が不安だ。

 この世界に車の運転中に産み出されて、危うくお尻が削れる危険があったこと以来の、お尻がピンチだ。


 今日はカイリさんには護衛ではなく、ご飯に行ってもらった。誰かが行かなければポッパーさんのご飯もピンチなのだ。特にポッパーさんの子供には、ぜひお腹いっぱい食べて欲しい。お腹が空いていると悪いこと考えちゃうからね。


 1時間ほどものすごく跳ねる馬車に乗り続け、ようやく城門まで来た。ようやく到着か! と思ったらそこから更に道は続くらしい。

 みんなはお尻が痛くないのかな? と思ったら、スピナさんが若干光っていた。あれは身体強化で耐えてるな? まさかこんな時まで訓練しているわけはないだろう?


 結局、城門からぐるっと回りこんだ入り口からお城に入れた。ここは多分、正規の入り口ではないのだろう。


 なんやかんやで、ようやく部屋に通してもらいゆっくりできることになった。

 お尻と腰が痛い、たぶんお尻のお肉がペッタンコになっているだろう。これは欠損も治すと言われるポカリエスの出番かなと思ったが、金貨10枚稼ぎ損ねると思うと、お尻より痛いのでグッと我慢した。

 ちなみにスピナさんはもう光っていない。馬車から解放されて光ってないのか、人目に付くから訓練を辞めたのか全然わからない。




「そういえば、礼儀とかわかんないんですけど大丈夫ですか?」


 今さらだけど、礼儀作法なんてさっぱりわからないことに気が付いた。今までずっと、どれだけ売りつけてやろうとしか考えてなかったからだ。礼儀がなってないと、ポカリエスを買い取ってもらえないかもしれない。そうなるとポッパーさん家族と、シャッドくんを迎える資金が不足する。やばい、ピンチだ!


「大丈夫です、非公式ですし、いつも通りで問題ありません」


 クランクさんが、安心する一言を言ってくれた。よし、いっぱい売ろう。


「あ、スピナさんは聖女として顔バレとかしちゃったりします?」


「私のことは多分気が付かれると思います」


 あぁ、スピナさんもお食事会へ行ってもらえばよかったのか? でも、ブレイドさんという追っかけもいるからな。どっちにしても心配していたか。


 そんなことを考えていると、一人の男性がやってきた。


「やぁやぁ、よく来てくれた、私はシーチ・グ・ルテン。ルテンの王だ」


 クソ! 情報が多すぎるぞ! この国の名前はルテンと言ったのか、今まで気にしたこともなかった。っていうか、グルテンなのか? 釣り人はグルテンって聞くと真っ先に『へらぶな釣り』を思い出しちゃうんだぞ! バナナだったりチョコだったり、様々なレパートリーが発売され、消えていくグルテン。この国は大丈夫か? 消えていったりしないか?


 いや、まて! シーチ王か……シーチキング……大丈夫かもしれない。


「……すみません、突然王様がいらっしゃったので、戸惑ってしまいました。私はアタル・ウミカワと申します。偶然にもポカリエスを作り出すことに成功しました。是非、病などで苦しむ方々に使っていただけるよう、登城いたしました」


 よし、グルテンだとか、シーチキンだとか考えていたのは誤魔化せただろう。

 そんなことを考えている間に、スピナさんとクランクさんも挨拶を終えていた。スピナさんを王様がガン見しているので、多分気づかれただろう。スピナさんは優秀な人材だからな! ヘッドハンティングはさせないからな!


「今回は非公式だ、堅苦しい挨拶はやめて本題に入ろう。ポカリエスはどれくらい準備できる?」


「今回はポーション瓶、百を献上したいと思います。あと、一応王様にも作り方を見てもらおうと思います。この作り方でポカリエスとして問題がないのでしたら、定期的にベイツの街から王城へ届けるように手配します」


 俺の作り方はイレギュラーだからな。こんなのポカリエスじゃないって言われると困るし……

 あと、ベイツに帰してもらえないと困るから、定期的にベイツから送るよってもアピールしておいた。そもそも、ミドリ草がはえてるの、大きな木があるところしか知らないし。


「おぉ、製法を教えてくれるのか! 是非見せてくれ」


「では……」


 そう言って、俺はクランクさんからミドリ草一束と、あらかじめ用意しておいた精製水が入ったポーション瓶を受け取り、クラフトのスキルを使った。


「まさか、ポカリエスはスキルで作ったポーションなのか……」


 あぁ、道具無しで作るとスキルってわかるのね? 話が早くていいけど。


「そのようです、スキルでたまたまミドリ草一束のポーションを作ったら、できちゃいました」


「貴重なミドリ草一束でポーションにしちゃおうと考える人は、たまたまでもいないですよ」


 と、後ろからクランクさんのつぶやきが聞こえた。

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