50.馬車が目立つんじゃなくて、俺の馬車が目立つのか
キリが良くないので少し短いです。
「それはありがたいが、本当にいいのか? 俺はこの身体だぞ?」
「問題ない」
カイリさんがどや顔で答えている。何が問題ないの? 部屋がうまって宿の経営に問題がなくなる『問題ない』かな?
「クランハウスでもベイツに建てようかな……」
「おいおい、何言ってんだよ。だったら宿をクランハウスにしたらいいじゃねーかよ。アタルが建て直したようなもんだろ?」
もうすでにカイリさんの頭の中は、宿の経営というもの無くなっているのかもしれない。
「あの~? アタルさんの管理職というのは……」
シャッドくんが、恐る恐る聞いてくる。
「管理職は人を管理する仕事です」
「「「「……」」」」
みんな一斉に黙った。
「ニャー」
と、今まで空気通り越して真空になっていたトラが、意味なく鳴いた。
ポッパーさんと、シャッドくんは管理職の怪しさにだまったのだろう。
カイリさんと、スピナさんは、そんなこと以外のこと色々やってるだろ? の無言だと思う。
トラは暇だったから泣いてみたのかな?
「あれ? ベイツの冒険者ギルドの受付嬢にも言われたけど、怪しいですか? 大丈夫ですよ、こう見えても多種多様な収入源を持っています。今回だって、王都へ珍しい商品を売りに来たんです。もうガッポガッポ稼いで帰るんで、しばらく安泰ですよ!」
と、更に怪しさ満点な発言をしておいた。
ポカリエスのことはベイツに帰ってからでいいだろう。ポカリエスでポッパーさんを治すのは間違いなくやる。完治したポッパーさんを王都で見られたらちょっとめんどくさそうだし、それに今の王都は聖女関係でもゴタゴタしている。リスクは避けるべきだ!
「というわけで、しばらくは王都にいますので、皆さんは家族と相談し準備をお願いします。いい返事をお待ちしてますね! あ、みなさん毎日ここでお昼を食べましょう。ポッパーさんの家族にも会いたいですね。商談が重なっちゃったらスピナさんか、カイリさんが来ると思うので食事していってください」
ポッパーさんはギルドで今日食うのも困ってるって叫んでいたから、お食事のお誘いをしておいた。みんなで食べる芋汁はおいしいだろう。あ、遠慮しないで好きなのを食べるがよろしい。
俺は今、貴族街の宿に戻ってきている。
本日のパーティーメンバー勧誘は大歓迎だったと思う。お湯魔法使いには会えなかったが、料理人見習いが仲間になってくれそうなのだ。期待しかない。
それに、Cランクの冒険者のポッパーさんも乗り気だった、冒険者ギルドで怒鳴っていたポッパーさんだが、カイリさんも乗り気だったしいい人なんだと思う。
しかし、さっそくここで問題が起こった。
「明日、登城が決まりました。お昼前に馬車が来るので一緒に行きましょう」
クランクさんが爆弾発言をした、寄りにもよって明日? さっそく明日のお食事会が……
王様って暇なのかな?
「王様って暇なんですか?」
「そんなわけないじゃないですか! 極秘で謁見し、貴族の目に触れないように配慮してくださったんですよ!」
極秘にしてくれるのはいいけど、馬車だと目立たない? 俺の馬車じゃないから問題ないのか?
「実は明日のお昼に、お食事会を計画していたのですが……」
「それはカイリさんに行ってもらって事情を……ごまかしてくれますか?」
クランクさんがカイリさんになにか誤魔化せと強要している。
お食事会を、ものすごく楽しみにしていたからすごく残念、王様との謁見は全然楽しみじゃないからな。ポカリエスなんて問題だらけの飲み物、たくさん買ってもらってパーティーの資金にしちゃおう!
カイリさんはポカリエスの存在を知っているけど、うまくポッパーさんと、シャッドくんにごまかして伝えてくれるのだろうか?
「まかせとけ! ポッパーにはスピナの身体強化の練度を、シャッドにはシロギスフライとか王都にも負けない料理を伝えておく」
ごまかさないで、話をすり替える作戦に出るようだ。それならボロが出なくていいと思う。
ちなみにだが、カイリさんはパーティーメンバーじゃないので呼び方は自由だ。さすがの俺でも、世界中のみんなが『さん』付けしたらいいなんて思っていない。俺のパーティー内でやってくれたらそれでいい、管理している人たちが決まりを守ってくれたらそれだけで満足だ。
「じゃあ、カイリさんよろしくお願いしますね。わかってると思いますが、スピナさんが光るとか言っちゃダメですからね!」
カイリさんは口が軽そうだから釘を刺しておいた。




