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48.自信満々の勘違いは超絶恥ずかしい

 俺は今、王都の冒険者ギルドを目指している。


「ブレイドさんを置いてきてよかったのですか?」


 スピナさんがブレイドさんを心配している。もしかして、パーティーメンバーになって欲しかったのかな?

 ちなみにブレイドさんはパーティーに入る気満々だったのか、もう入れると思い込んでいたのかわからないが、固まっていた。その隙に俺たちは会計を済ませ、冒険者ギルドに向かっているのだ。


「彼はエスポワールの鉄の掟『さん』付けができなかったのです。残念です……しかし、俺はチャンスを彼に与えましたよ? ベイツの街で活動してるって伝えてるし、本当にパーティーに入りたいなら、彼からアクションを起こすでしょう」


「そうですね、彼は小さいころから一緒に育ってきたのです。私がいなくなって、ずっと探していたかと思うと、ちょっと胸が痛くなりました」


「スピナさんは好きで王都から出て行ったわけではありませんし、気にしなくていいと思いますよ」


 新情報! ブレイドさんはスピナさんの幼馴染かもしれない! 昔からスピナさんを護れと言われ続け訓練していたのかな? この世界の聖女の役割がよくわからないけど……


「お! ようやくギルドが見えて来たぞ!」


 カイリさんにも聞こえていたと思うけど、カイリさんは気にしてなさそうだ。しんみりした雰囲気だと思っていたのは俺だけなのかな?




 王都の冒険者ギルドは大きかった。語彙力がなくて申し訳ない、大きかったのだ。

 頬にキズがある。閃きが必殺技の剣士が主人公の映画ロケ地になった、山形市の建物みたいな感じだ。

 あっちは木造ではなかったかもしれない、王都の冒険者ギルドは木造だ。


「カイリさん、ありがとうございます。無事、るろうせずに辿り着けました」


「そうか、役に立てて良かった」


 俺とスピナさんで冒険者ギルドに入ったら、確実にテンプレに巻き込まれるだろう。

 しかし、今回はカイリさんが護衛でいる、カイリさんは今までずっと努力してきたブレイドさんを、余裕でねじ伏せるつわものだ! 絶対にトラブルには巻き込まれないだろう。


 トラブルを否定しておきながら、俺は何か起きないかなとワクワクしながらギルドに入った。

 王都のギルドには食堂はないらしい、王都の人は一体どこで芋汁食べるの? とカイリさんに聞いてみたら、近くにギルドが運営している食堂があるらしい。良かった、ギルドの用事が終わったら是非行ってみよう。


 さて、ひとまず受付が必要だろう。さすが王都だけあって人も多いし窓口も多い。

 俺は一番空いているカウンターに向かった。


「すみません、パーティーメンバーを募集したいのですが」


 受付嬢は俺よりもちょっと若そうだが、おじさん呼びはしないだろう。ただ、どうしてかここだけ誰も並んでいない。問題がある職員さんなのだろうか?


「こちらは買い取り専用ですので、あちらに並んでください」


 しまった! 窓口を間違ってしまったか!

 後ろを見ると、スピナさんとカイリさんが下を向いている。きっと知っていたのだろう、知っていたけど止めなかったのだろう。そういうことはしっかり教えて欲しい。

 自慢ではないが、俺はベイツの冒険者ギルドしか知らないんだからな! 専用窓口があるなんて初めて知ったよ。

 まったく……銀行ATMでカードが認識してくれなくて、プンプンしながら窓口のお姉さんに「ATMでこれ使えないんですけど!」ってクレームしたら、「こちらは郵便局さんのカードなので……」って気まずそうに説明されたときと同じ気分だ! うぅ、はずかしー!


「すみません、初めてだったんで間違えました」


 俺は受付のお姉さんに挨拶をして、他の列に並んだ。

 並んだ列は適当だ、先のお姉さんが確認できなので、若いのか若くないのかの判断は無理だ。


 それにしても、王都の冒険者ギルドはにぎやかだ。時々、怒鳴り声も聞こえるし、なんだかリーマンショック時の職業安定所を思い出すな。あの時は仕事もなくて、生活が困窮している人がたくさんいた。特に四十代以降は求人もないし、家族も養わなきゃいけないし大変だったと思う。


「俺にもできる仕事は何かないのか! もう今日生きる金もないんだ! 何とかしてくれよ!」


 昔を思い出していたせいか、職業安定所で聞こえてきたような怒鳴り声が聞こえてきたぞ?

 幻聴かと思っていたが、奥の受付でやいのやいのやっているようだ。この世界では失業手当的なものはないのだろうか? 働く意欲はあるのに、今日生きるお金が無くなってしまうなんて、よっぽどだろう。


「もういい! 今までギルドに貢献したのに、こんなあっさり裏切られるなんて思わなかった!」


 ちょっと興味が出てきたのでどんな人か見たいが、奥が詰まっていて見えない。


「奥で怒鳴ってる人に興味があるので、せっかく並んだけど入り口に戻りますね」


「え……」


「なんとなくそうなる気がしたぞ」


 スピナさんは想定外でカイリさんは想定内だったらしい。経験の差かな?


『ヤレヤレだぜ!』


 え、トラはそこで反応するの? 今までずっと空気だったじゃん。

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