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36.なつかしのポカリエス

 一か月が過ぎた、この世界もやっぱり夏はあるらしく暑い。ただ、海辺のせいかアスファルトが無いせいかわからないが、日中は暑いが朝夕は涼しくて過ごしやすい。


 スピナさんの魔力循環も順調のようだ、最近スピナさんの訓練を見ていると、うっすらと光出すのでちょっと怖い。夜、訓練する場合は他の人に見られないように注意した。あの光が聖魔法のきっかけになれば嬉しいのだが、今のところ聖魔法のスキルは使えていない。ただ、身体強化が今までよりも強力になったと報告を受けた。どうやらギュっとしなくても強化されるようだ。


 シロギスフライの人気は健在で、食堂は大繁盛している。

 俺もキス釣りを満喫していたのだが、さすがに毎日キスばかり釣っていると飽きてくる。なんか作業っぽく感じてきたのだ。でも、仕事だ、仕事だと言い聞かせて釣りまくった。海が荒れればお休みできるのに、そう考えているときに限ってなんで荒れない?


 そんなある日、クランクさんが訪ねてきた。



「ア、ア、アタルさん。ちょ、ちょ、ちょっと、そ、そ、相談したいことがあります」


 最初っから全力投球の焦りっぷりだ。

 シロギスフライの禁断症状とかじゃないだろうな? あ、でもクランクさんを食堂で見たことがない、自炊派なのか?


「なにかの病気ですか? ポーション飲み過ぎました?」


 実は先週あまりにもキス釣りしたくなくて、さぼったのだ。スピナさんに「今日はお休みにします。休息も訓練です!」と告げ、俺はイワナかヤマメを釣りに行った。ついでに久々だしなと思い、ミドリ草を採集してきたのだ。

 しばらく見ない間にめちゃくちゃ増えてきたので、前回より多めに採取し、前回より多めに納品した。だから、ミドリ草不足はないはずなのだ。ということは、ポーションを作り過ぎて、水代わりに飲んでいたに違いないと思ったのだが……


「ち、ち、ち、違いますよ。こここここここでは何なのでお部屋でお話しさせてくだしゃい」


 どもって、ニワトリみたいになって、最後かむなんて器用だな。重要な話なのかな?


 朝食後だったので、スピナさんには毎日恒例ギルドへのお使いをお願いし、終わったらいったん宿にもどって報告するよう伝えた。スピナさんは優秀だった、大体一回説明すると身に付く。元から頭がいいのだろう。優秀な人材は大歓迎だ! とてもよい拾いものだった。


 部屋に入ると、トラはベッドに上って丸くなった。耳がコチラを向いているので、聞き耳を立てているのだろう。


「それで、どうしたんですか? ずいぶんと動揺してますが……」


 部屋に戻るときにナミさんからもらった果実水をクランクさんに渡し、話しかける。

 クランクさんは果実水を一気飲みした。口からあふれてるぞ! 俺の部屋が汚れるじゃないか。


「実は昨晩、王都へ送ったカイリさんが作成したポーションの鑑定結果が返ってきました」


 そういえばそんなこともあったな。ミドリ草が原料だし、毒ではないと思うんだけど。


「あぁ、ありましたね。毒でもありましたか?」


「い、いえ、鑑定結果はポカリエスでした!」


「……」


 嫌な予感しかしない、ちなみに俺はポカリエスに聞き覚えがある。

 じいちゃんは昔からスポーツ飲料をポカリエスと呼んでいたのだ。明らかに、二大筆頭のスポーツ飲料が融合している。じいちゃんは昔からこんな感じなのだ。本屋さんの店名だってブックユニホンだし、微妙に違うけど何となく通じるからだれも指摘しなかった。


「すみません、多分それ俺作ったやつじゃありません」


「嘘ですよね?」


「嘘じゃありません」


「ポカリエスの作成者は、ポカリエスの原料はミドリ草一束と精製水だと記録に残しているそうです」


「……」


 なんてこったい!

 クランクさんの話だと記録は残っているが、作成者は不明なのだそうだ。俺知ってるよ、じいちゃんだ。ポカリエスはある獣人から購入していたそうだ。その獣人からレシピを聞けたが、誰も制作することができず幻の秘薬扱いだったそうだ。

 効能は人体の欠損を治し、毒を中和する。そりゃあ幻の秘薬だ!

 俺はチラッとトラを見る。あいつ……人化出来るな……ちなみにトラは寝たふりを続けている。耳が後ろを向いているから聞きたくないのだろう。


「えっと、どうしたらいいですかね?」


「王家がポカリエスを売って欲しいそうです。私も一緒に行きますので、すみませんが協力してもらえませんか?」


 ちなみにポカリエスは金貨10枚で売って欲しいと連絡があったそうだ。高いんだか安いんだかわかんねーな、と思っていたら安いらしい。が、王家が管理しないと価格が青天井で釣りあがって、本当に必要な人に回らなくなるらしい。本当に必要な人に使ってもらえるなら文句はないけど、めんどくさいな。もう身バレしたっぽいし行くけど……まぁ、ミドリ草分だけ作ればいいでしょ。


 なんて思っていたら「ミドリ草はたくさんあるんで安心してください!」と、クランクさんは自信一杯に言った。

 そりゃあこないだ俺が大量に採取したからあるだろうよ! でも全然安心できねー!

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