表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/157

33.正直に魚の名前を教えるとドン引きされそう

 スピナさんにリーダー認定された俺は、上機嫌でスキップしながら海へ向かった。

 ちなみに俺は、スキップは得意だ。ドンタコスのようなスキップはしない。ダンスは苦手だがな!


「リーダー、海で何をするんですか?」


「釣りだ、釣りは俺の本業と言ってもいい。今からしばらく釣りをするから、スピナさんはまず、流木拾いをお願いするよ。多分大きな流木は落ちてないから、流木の欠片で大丈夫だ拾ってちょうだい。それが終わったら魔力循環の訓練ね」


 そういって俺は、大豆が入っていた袋をスピナさんに手渡した。


「……わかりました。いってきますね」


「いってらっしゃい、終わったら少し離れたところから声をかけてね。釣り人の近くは危険がいっぱいだから」


 はい……と元気よくない返事をし、スピナさんは下を見ながら浜辺を歩いて行った。なんか落ち込んでいる人みたいだな。街の人に心配されないといいけど。



 よし、気合を入れて釣りをしよ! 海の濁りも収まり、なんだか今日は釣れそうな気がする!

 マジックバックからジギングロッドを取り出し波打ち際に立つ。


 おや……なんか波打ち際に30㎝くらいの魚影が見える。あれはまさか……


 ジギングロッドをしまいアジングロッドに変更する。

 オモリ付きサルカンを取り付け、一本針のハリスをセット。強そうな名前のイソメ型ワームを取り付ける。もちろん、短く切ってだ。こんなに長い状態で使うなんてもったいない。このワームすっごい匂いするんだよな。甘い匂いだけど、魚は甘いものが好きなのかな? あれが俺の思っている魚なら、女王って呼ばれてるくらいだから、甘いものは別腹なのかもしれない。


 ひとまずフルキャスト! オモリ付きのサルカンだがそんなに重くはない。

 ただ、浮かないようにしたくて付けているだけだから、フルキャストで10mちょっとってところか?

 あとは竿先を下げてゆーっくりと巻く。すると、ココココン!と言うアタリが伝わってくる。そうそう、夏と言えばこれだよね。コイツはすぐに合わせていけない。なかなか針を食わないのだ。ワームの端っこをつつくので、できるだけワームは短い方がいい。短すぎるのも良くなさそうだが……試したことがない。


 しばらくアタリを楽しんでいると、竿がグーっと引っ張られる。今だ!

 空アタリが多い釣り方だが、運よく針が掛かったらしい。上がってきたのは綺麗なシロギス……なんだけど、でかい! 異世界仕様なのか30㎝はある。でも見た感じキスなんだよなぁ。この世界ではたくさんいる魚や、小さい魚に名前がついてない。だから、これにも名前がなさそうなんだよな。でも正直に『キス』っていうのも恥ずかしい。普通に考えたらキスが食べたいとか言ったら引くだろう?


 桶に海水をすくい、釣れたキスを入れておく。キスは血抜きしなくてもおいしく食べられる。

 マジックバックに入れたいんだけど、生きたまま入れれないのが難点だな。かといって、毎回頭を切り落とすのもめんどくさいからなぁ。まぁ、まず釣ろう!


 この釣りのいいところは、毎投のようにアタリがあることだ。キスは群れで泳ぐ。

 一匹釣れれば、そこにはたくさんのキスがいる可能性が高い。本来なら複数着いた針仕掛けを、大遠投してサビいてきて食わせる。合わせたりはしない。合わせない代わりに天秤というのを付けて、金属の弾力で合わせて釣る魚だ。しかし、俺はアジングロッドでキスをするのにハマっていたのだ。遠投する竿だとパワーがあり過ぎて、キスのアタリはわかるが引きを感じられないのだ。その点アジングロッドは、軽い仕掛けをキャストできるように設計されているので、ダイナミックな引きを感じる。しかも30㎝となれば、糸が切れるんじゃないかというくらいライトなセッティングにしている。スリルと引きが抜群だ。


 夢中になって釣りをしているとスピナさんが返ってきました。


「すみません、ほとんど見つけられませんでした」


 そうだろうね。この時間だと流木は狩りつくされているだろう……


「タイミングが悪かったですね。それでは次は魔力循環の練習です。魔力循環はわかりますか?」


「わかりません、どういった訓練ですか?」


 そうだろうね、俺もわかんない。魔力循環なんて俺が勝手に決めた名前だからな!

 でも、古龍様が魔法を使うときは魔力を廻すって言ってたから、まず初めにすることが魔力の巡らすことなのだろう。いうなれば基礎だ、野球でいう素振りやキャッチボール。


「魔力をね、身体の中を循環させるんだよ。出来るだけ早く、できるだけ大きく。そうすると魔力が膨張して魔法に使うエネルギーが蓄積される」


「そんな方法があるんですね! それができれば私も聖魔法が使えるようになるのかな……」


「それは約束できないけど、可能性はある。ちなみにコツはグルグル廻してギュッとしてドンだ!」


「わかりました! 魔力を動かすことはできるけど、そこまで考えたことはありませんでした。頑張ります!」


 え? 魔力動かせるの? 俺より先進んでるじゃん!

 スピナさんはそういうと、少し離れたところで集中し始めた。


「あ、スピナさん。この魚が鳥に取られないように見張りながら訓練してね。戦闘では周りの把握しながら魔法を使わないといけないからね! これも訓練だよ!」


 それっぽく、まったくの出まかせを頼んで俺はキス釣りを楽しんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ