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31.男が女性より買い物を長くしてはいけないのだ

 ダイズを手に入れた俺は上機嫌で歩いている、もうニッコニコだ。

 まさかダイズが飼料扱いだとは思ってもいなかった。ギルドは飼料を大豆を使って味噌を作り、芋汁を提供しているのだろうか? それとも味噌用に育てているのか、きっと飼料の大豆を買い取っているから値段が抑えられるんだろうな。それにしても、大豆に味噌と日本語か。もしかして大豆はじいちゃんが作ったのか? クラフト使ったとして材料は? 試しにジャガイモをクラフトしてみたが、必要材料は種芋。ざっくりしすぎている、味噌ができてから考えよう……


「スピナさん、なんだか元気ないんじゃない?」


「いえ、アタルさんお金持ちだなと思って……昨日会議でお金が必要だって言っていたので、余裕がないのだと思ってました」


 あぁ、昨日の話を覚えていたのね。


「今のところは心配いらないよ。今の仕事がそのうちなくなるのがわかっているから、対策を考えなければいけないって話しただけだよ。仕事がなくなってから慌ててもいいことがないからね。先を考えて行動が大事なんだよ」


「わかりました」


 なんか難しく考えている顔のような気がする。問題はできるだけ簡単に考えないと大変よ。なぜなぜ分析とか異世界でも役立つかな? 機会があれば試してみよう。


「この大豆はね、味噌の原料なんだよ。今は評価が低いけど、将来世界中の人がおいしいって食べてくれるようになると思ってるんだ。だから今回ありったけ買ったし、それでもうまくいかなかったらハスンの村に買いに行こうと思ってる。うまくいっても当然買いに行くんだけどね」


 にやりを悪い笑みを浮かべながらスピナさんに説明した。スピナさんも味噌をおいしく食べてくれるといいな。

 それにしても5袋は買いすぎたかもしれない。めちゃくちゃ重い、どうしよ。マジックバックに入れたい……重いと思ったら、急に重く感じてきた、スピナさんに、ちょっとそこの知り合いの家に大豆預けてくるって言い路地裏へ。マジックバックに大豆を収納し、スピナさんのところへ戻った。



 今俺は服を探している、しかし探し物がみつからない。

 服はあるのだ、しかしサイズがない。この世界は古着が一般的らしい。既製品というかお古ばかりだ。しかも伸縮しないらしく、どの服でもお腹が引っ掛かる。

 そうか、皆は服を勧めたいけどお腹が邪魔することを知っていたから、教えてくれなかったんだな。そういう優しさは時に傷つけることを知ったほうがいいと思う。


 しかし俺は閃いた! 服がなければクラフトすればいいじゃない。

 古着でも生地でもクラフトすればいいのだ。俺のイメージ力さえあれば現代風のカジュアルな服だって思いのままだ。イメージ力があればだが……ちなみに俺は絵のセンスはない。きっと園児並みの画力だろう。だからちょっとイメージ力とセンスには自信がない。


 だから、気に入った服と生地を買おう! その服を身ながら新しい服をクラフトする。クローン生産みたいにすれば大丈夫だろう。移植ベラもあんなにオシャレになったんだ。だいじょうぶ、俺ならできる。やればできる子だから!


「スピナさん、今思いついたんだが、俺は裁縫ができるはずだ。欲しい服がなければ生地でもいいぞ。ただし見本は欲しい、作れるのと上手にできるのは違う。特に女性物はわからん」


「わかりました!」


 そういってスピナさんは男物の古着を数着持ってきて「これをお願いします」と手渡してきた。

 え? これスピナさん用? 男物でもいいの?

 冒険者になるから動きやすさ重視にしたらしい。なんだか気を遣わせてしまったようだ。

 ちょっとあそこの生地屋さんで白っぽい生地を買っていこう。聖魔法が使えるようになったら、聖女っぽいローブを作ってプレゼントするんだ……それまでは聖女っぽいローブの案を練っておこう。聖女物のマンガをもっと読み込んでおけばよかった。


 後悔しながら俺はささっと自分用の服を選んだ。デザインもサイズもどうでもいい、生地と形状があればスキルの力で何とか出来る!

 問題なのは女性の買い物より男の買い物が長いのはいけない。妻の買い物に付き合っても全然楽しくなかったからな。きっと女性も男の買い物なんて、楽しいもんじゃないだろう。だから同じ苦痛は味あわせない。


 そうだそうだ、スピナさん買い物した服は俺が持つよ。

 いくら服でも数着もあれば重いだろう? 遠慮はいらない。さぁ渡してくれ。

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